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魔力操作の極致2


「···············知らない天井」


 俺は現状を理解するのに時間がかかった。


 あの化け物をサードで倒して、それで──


「そうだっ! サクヤたちはっ!」

「全員無事よ」


 声のする方向へ向けば、レーデが立っていた。


「ちなみにここはギルドの医務室。ハーラン様が貴方を担いで駆けつけたって、一時期パニックになってたみたいよ」

「·····そうか」


 安堵する。

 

「クナイは?」

「もうすぐ来るわ」


 アレ、なんか、いつも通りだな。

 こういった時、レーデは俺に向かって怒るとかすると思ってたんだが──


「失礼、します」

「失礼します。ルーロ様は·····起きてますねっ!」


 クナイとサクヤが俺の部屋を訪れた。


「よう、二人とも、久しぶり──」

「ルーロっ!」

「いってぇっ!」


 クナイの抱擁は嬉しいんだが、超いてぇ。

 全身が痛い。これだから、サードってのは困るんだよな。


「フフっ、レーデはしなくていいのですか?」

「えっ! な、何を言ってるのよ。私は別に·····」

「ルーロ様が倒れたと知った際の、貴方の号泣。私は忘れませんよ」

「──忘れてっ!」

「いやでーす」


 会話は聞こえてこなかったが、レーデとサクヤも楽しそうで何よりだ。


「ほら、クナイ。俺は大丈夫だから」

「ん」


 頭をポンポン叩いて、クナイを引き剥がす。が、どうしても離れたくないみたいで俺の腰から手を離さない。


「全く、この場を他の誰かにみられたら──」

「あっ、お邪魔だったわね」

「·····そうだな。元気そうだ」


 なんつー、タイミングで入ってきてんだ二人ともっ!


 エルサとクリクソンのニヤつきがうぜぇ。


「要件はなんすか?」

「貴方が目覚めたのを確認したから、早速で悪いのだけれど、説明をお願いしていいかしら?」


 俺の魔力が活発になったのを確認して、この場に来たってわけか。


「説明ってなんすか?」

「とぼけないで、貴方がそこまでに至った原因よ」


 とぼけようとも、エルサやクリクソンだけではなく、クナイもレーデもサクヤでさえも真剣な表情だったから、話すしかないか。


「俺の解放状態は四段階に分けられています。<一段階(ファースト)>、<二段階(セカンド)>、<三段階(サード)>、<最終段階(ファイナル)>の四つ」


 ここは前も説明したところだ。


「それらを会得するために必要な訓練場が『死門』と呼ばれる四つの世界です」


 説明したのはここまでだ。ここから先はあんまり説明したくないんだがな。

 余計に心配させそうだし、話しとくか。


「俺の解放状態には〝代償〟が存在します。ファーストとセカンドまでは何とか大丈夫なんすけど、サード以降になると代償があるんです」


 何故、ファーストとセカンドまで大丈夫かは、体の構造がしっかりとしているからだ。

 つまり、力によって肉体破壊されないのである。


 しかし、サード以降になると肉体破壊だけが代償ではなくなる。


「サード以降は魔力消費が激しくなります。師匠が言うには、『魔力奪取』は魔力消費をカバーするための技であるらしいです」


 だから、あの時、俺は魔力を奪取した。じゃないと三分以上維持することが難しかったからだ。


「んで、今回倒れたのは、急速に魔力が減った事による魔力欠乏症ですね。僅かに魔力が残っていたので事なきを得ましたが、あと少しで死んでました」


 最後の最後、あの化け物を殺して気が緩んだのがサードが解けた理由だ。

 それがなければ、魔力が完全になくなり死んでた。


「以上が説明ですね」


 俺の説明に全員が言葉を失った。


「·····つまり、サード以降の代償は〝命〟ってこと?」

「はい、その通りっす」


 おずおずとエルサが尋ねてきたので、ハッキリと言った。


 ここで誤魔化しても意味が無いと思ったからだ。

 サード以降は一歩間違えると命を落とす。加えて、肉体破壊による行動不能。

 これが師匠の言ってた『慢心するな』の理由だ。


「大体は分かったわ。·····後、もう一つだけいいかしら?」


 どうやら、こっちの方が本題らしい。


「サクヤ様の言っていた化け物。あれの正体知ってるわよね?」

「ナンノコトデスカ?」


 思わずカタコトになってしまった。


「この場にいるのは事情を知ってるメンバーだけだから話すけど、『王国の罪』は魔王にその魂を送る儀式。その際に、色々な未知の生物が出現したのは判明してるの」


 あの一件で、ギルドが地下を調べたのだろう。それと、俺が戦った場所も。


「地下で現れた化け物は、『魔王様の手足』と呼ばれていました。それと、もう一体の化け物は·····」


 俺は躊躇う。

 俺はあの正体を多分だが知っている。師匠から『死門』を譲り受けた時に説明されたからな。


 だが、これを言うのは、まだ早い。

 確証もない。だが、いつかは話さなければならない。難しいところだが──


「分かりません」

「本当に?」

「はい」

「··········分かったわ」


 エルサには隠していることがバレただろうか。だが、折れてくれたことは有難い。


「ごめん」

「別にいいわよ。本当は聞きたいのだけれど」


 俺のこの選択が間違っているかもしれない。だが、いつか壊れる平穏であろうとも、今、この瞬間だけは平穏でいて欲しいから。


 犠牲になるのは俺だけでいい。


「··········ルーロ」

「ん? どうした?」

「顔が怖いよ」


 あらま、俺としたことが顔に出てたか。

 クナイだけではなく、他の連中も訝しげにこちらを見てくる。


「大丈夫だよ」

「···············ん」


 さすが、俺のメインヒロインだな。

 主人公(オレ)の顔色一つ見逃さないとは。感心、感心。


「とりあえず、貴方は安静にしてなさい。··········あっ、それと、三日後に王城へ訪れて。ハーラン様が呼んでるから」

「うそーん」

「ホントよ」


 そう言ってエルサとクリクソンが去っていった。

 ブツブツと「俺のセリフなくね?」とクリクソンが言っていたが、そんなもんはスルーだ。


「つか、サクヤはこれからどうするんだ?」

「あっ、私ですか? 私は──」


 話を振られると思ってなかったサクヤは、穏やかな笑顔と共に、最大の爆弾を投下する。


「冒険者になりますっ!」


 平穏が崩れた瞬間だった。


 どうやら、俺の日常は落ち着きがないらしい。

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