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VSナニカ


 『死門』の一つ、<破滅されし世界>。


 『魔力操作の極致』を得るために、通らなければならない試練であり、訪れた者に〝死〟を与える世界。


「急いで、魔力操作をしろっ!」


 微妙に違うが、<破滅されし世界>に似ている場所だ。常人ならまず動けない。

 身体能力を強化させるよう促す。


「し、したぞ。サクヤたちは?」

「しましたわ」

「はい、しました」


 よし、三人全員無事だな。


 目の前に立つ異質なナニカ。見た目は人の形をしているが、人ではない。

 これが、俺の予想通りなら、少しばかりまずい状況だ。


「三人は遠くで待機。早くっ!」

「は、はいっ!」


 そして、三人が離れていく。


 それをアイツが見逃すはずもなく──


「逃ガサナイ」


 クソ、めっちゃはえぇ。


「させるかっ!」

「危ナイ」


 セカンドを解放している俺の一撃を難なく避けるのか。


「ルーロ様ッ!」

「ばっか、早く逃げろっ!」


 どうも長くは持たない。


「魔王因子術式──《金縛り》」

「グッ」


 俺の行動を不能にした!?


 チッ、恐怖とやらを集めに行くつもりなのかッ!


「させ、るかぁぁぁあああッ!!!」


 力で強引に金縛りをぶち壊す。


「<銀滅の拳>ッ!」


 集約された魔力は確かに、アイツに当たった。が──


「ナンダ? コバエカ?」


 効かねぇのかよッ!


「本当にヤバいな。師匠の言ってた通りだ」


 確かにヤバいが、<破滅されし世界>に似ている場所が顕現されており、決して<破滅されし世界>ではない。


 つまりは、完全に<()()>では無いということだ。


「なら、まだ勝ち目はある」


 三人を一瞥する。


 結構な距離を離れたな。これなら、解放出来るか。


「チッ、これだから現実は·····」


 物語の主人公は力を覚醒して、アイツをぶっ飛ばすのだろうか。


 勇者って奴は、無傷でアイツを殺せるのだろうか。


 異世界主人公最強ってやつは、アイツを一発で倒すんだろうな。


 ──なんの代償もなしに。


「覚悟を決めるか。今のアイツなら、俺でも倒せる」


 大きく深呼吸をする。


 長くはダメだ。三分、三分でケリを付ける。


「ふぅ·····──<三段階・解放(サードリリース)>」


 呟きにも似た言葉がトリガーとなり、俺の魔力が吹き出る。


「てめぇの溢れんばかりの魔力。頂くぜ」


 じゃねぇと、俺が本当にヤバいからな。


 右手を空で切り、魔力を奪取する。多分、ナラミとアクツの魔力だろう。


 コイツの力の源は違うからな。

 詳しくは知らないが、大方、人間の恐怖ってとこか。


 まぁ、今はそんな事どうでもいい。


「ささっと終わらす」


 荒ぶる紅き魔力。黒きスパークが俺の身体中を迸る。


 それらを余すことなく制御し、身体能力に全て費やす。


「行くぞッ!」


 大地が爆ぜた。いや、俺が蹴っ飛ばしたんだ。


「オ?」

「最初の一発目ッ!」


 踏み込んで、右ストレートをコイツの顔面に。そのまま、顔を掴んで地面にたたき落とす。


 ビキッと亀裂が走るが、関係ない。


「このまま終わら──」

「痛イ、許サナイ」


 ノーモーションからの腹パンッ!


 そのまま、流れるように掌打。


「ヤラレタラ、ヤリ返ス、倍返シダ」


 そのまま、掌打の連撃。


 顔に、腹に、脚に、腕に。勢いが一向に削れそうにない怒涛の連続攻撃が、俺の体力を減らしていく。


「ふざけ、るなっ!」


 目を見開き、連撃の穴をくぐって、パンチを打ち込む。


「グアッ!」


 狼狽えた。

 一瞬、攻撃の嵐が止んだ。


「オラッ」


 殴る。顔を、腹を、そした腕を。


「お返しだッ! <連撃>」


 拳舞。止むことのない拳の嵐。


 打ち込む度、血が舞う。


 連続で殴り続け、俺の手はボロボロだ。


 だが、それでも。

 それでも、俺はコイツを倒さなきゃならない。


「グガッ」

「逃がすかよ」


 翼を生やし、逃げようとするのを俺が見逃すはずがないだろう。


「翼」


 設定していたコマンド。それが、四枚の翼に変化させるトリガーである。


 黒き四つの翼がはためく、そして、黒き閃光を地面に置き去りにしたまま、俺は飛翔した。


「グギャギャッ!」


 後ろを確認し、更にスピードを上げてくる。


「鴉の王に勝てると思うなよ」


 俺の八咫烏はそれを超える。

 それは、ゴミを食い散らかす鴉のように、俺は技名を叫ぶ。


「喰い散らかせ──『八咫烏の一撃』」


 手を鴉の腕のように、標的に向け、突き出す。


「グアッ!!!!」


 体から取り出したのは心臓。


 未だに脈打つ、それを俺は一片の躊躇もなく、握り締めた。


「アァァァァァアアッ!!!!」


 断末魔の叫び。

 それが聞こえてきたと思ったら、俺は降下していた。


 見ると、サードの解放が切れていた。

 丁度、三分ってとこか。


 空を見上げると、世界が変わっていっていた。それは見慣れた星空。


 かつて、師匠が美しいと評した夜空に負けず劣らずの綺麗な星空だった。

 俺の体が地面に打ち付けられる。不思議と痛くないのは、『八咫烏の翼』のお陰だろう。

 

「──か!」


 誰かの声がする。


「──じゃないっ! ──かっ!」


 視界が霞んでいく··········。


 ·····瞼が重い。


 ──ドカァーンッ!


 大きな破裂音。

 そして綺麗な星空を、まるで化粧するかのように美しい火の花が、空に咲く、花火が見えた。


 それを最後に、俺は意識を失った。

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