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魔物達の蹂躙祭 〜運命の鎖 前編〜


「アァァアアアッ!」


 体が燃えるように熱い。何かが俺の体から飛び出るような痛みが襲う。

 深呼吸を繰り返す。目の前に敵が立っている。痛みが何だ。熱さがなんだ。それが俺の歩みを止める理由になるわけない。


「さぁ、やろうぜ。アルカよぉ」

「フフっ、良いよ。やろうか」


 重心を落とす。俺が構えている前で、アルカはただただ立っている。

 一見、隙しか見えない行動だが、さてアルカはここからどうやって繋げるか。


「見せてみろッ!」


 最初に仕掛けたのは俺。相手の力量が分からない今、ファーストで様子見だ。


「<連撃>」

「《連撃》」


 両者の怒涛の拳は、お互いがお互いの拳同士に当たり、相殺されていく。

 まるで鏡写しかのように、俺の出す先にアルカの拳がある。


「流石の速さだね。目が回りそうだよ」

「ハッ、抜かせ。全然余裕だろ」

「まぁね」


 次に仕掛けてきたのはアルカ。

 素早い踏み込みから、神速の蹴りが俺の顎を狙った。


 それを上体を逸らし避けると、そのままの勢いでアルカの顔面に蹴りを繰り出す。


「《滑る地面》」

「ッ!?」


 突如として地面が不安定になり、全体重を支えていた手が滑る。


 当然の如く転んでしまった俺の目の前には既に構えたアルカの姿が。


「《憎悪の一撃》」


 赤黒く光り輝く拳が俺の腹部を狙って真っ直ぐに繰り出された。


 それは一発だけに終わらず、二発、三発と続いていく。


「グッ·····<障壁>」


 なんとか衝撃を抑えると、そのまま障壁でアルカの体を押し出す。


「<銀滅の拳>」


 体勢が崩れかけたアルカに倍返しと言わんばかりに右ストレート。

 それは深々とアルカの頬に突き刺さり、遥か後方へ吹き飛ばした。


「はぁ、はぁ」

「はぁ·····フフっ、アハハハッ。やっぱり一筋縄じゃいかないか」


 突然笑いだしたアルカに疑問符を浮かべる。


「やっぱりこうでなくちゃ面白くない。·····だって、あの時受けた屈辱は、憎悪はこんなもんじゃ終わられない。終わらせられないからね」


 瞬間、アルカの放つオーラが変わった。

 今までは安定した感じだったのが、突如として荒々しく、まるで制御が外れたように高まっていた。


「さぁ、どこまで耐えられるかな」


 そんなセリフが聞こえてきたかと思えば、刹那のうちに目の前に移動していたアルカが拳を突き出す。


 突然のことに為す術もなくそれを喰らうと、流れが完全にアルカの方へ傾き怒涛の攻撃の雨が俺を襲った。


「ほら、避けないと──《憎悪の槍》」


 先程のような赤黒い不気味な光が、槍を形成しアルカの頭の上に顕現する。


「いけ」


 指をクイッと俺の方へ向けると、真っ直ぐと槍たちが飛来してきた。


 縮地でそれらを全てかわすと、流れを掴むためにもアルカの方へ急接近する。


「<銀滅の拳>」


 至近距離からの高火力の一撃。それは見事にクリーンヒットしたが、吹き飛ばされず、踏みとどまったアルカのカウンター。


 なんとか避けるものの、連撃にも似た怒涛の連続攻撃が俺を襲う。


「<障壁>」


 瞬時に障壁を展開し、受け止める。

 しかし、その圧倒的な攻撃力の高さに障壁はガラスのように割れてしまった。


「ほらっ、もう一度ッ!」

「──<銀滅の拳>ッ」


 再度繰り出されようとした連続攻撃を、拳を思いっきり地面に叩きつけ回避する。

 宙に舞う砂埃。その粉塵の中から、アルカは余裕の笑みを浮かべ現れた。


「ふふっ、こんなもんなのかい? 僕の本気を出す前に終わってしまうんじゃないかな」

「はっ、ほざけ。次はセカンドだ」


 そんな強がった言葉を発するものの、セカンドでも正直不安だ。

 ここは、やるしかないよな。


 宣言通り、セカンドを発動すると、猛特訓したあの技を使用するため集中する。


「<瞬間的な解放(モーメントリリース)>」

「ッ!?」


 どうやら初見でその異質さに気づいたようだが、時すでに遅し。


「ほら、避けないと死ぬぞ」


 最初は足の魔力をサードに変え、一瞬で間を詰めると、瞬時に拳にへと切り替え突き出す。


「《入れ替わり》ッ!!」


 俺の位置が先程のアルカの位置と入れ替わっていることから、ナラミたちが使用していたあの術式を使ったのだろう。

 が、入れ替わってもその距離は間近。勢いそのままに回し蹴りを繰り出す。もちろん、サードの魔力を纏っているためその威力は折り紙付きだ。


「《守りの壁》」


 地面から壁が盛り上がるかのように出現した。

 だが、お構い無しにとそのまま足を突き出した。


「マジかよ·····っ!」

「次、行くぞ」


 壁を破壊したことにより飛び散った破片の中から縮地で姿を消すと、回り込んで連続攻撃を放つ。


「<連撃>」


 背中、腰、腕、足と次々と打ち付け蹴り飛ばす。


「立てよ。本気とやらはまだか?」

「は、ハハハッ·····はぁ、いつも君はそうだ」

「何を·····?」

「僕の力を超えて、そしていつの間にか前に立っている。あの時だってそうだ。いつだって、僕は負けてきた·····」


 突然のアルカの豹変に、戸惑いが隠せない。


「でも、今度は勝つ。勝つんだ。ルーロを殺して、僕が強いのだと。僕こそが最強の冒険者に近しい存在だと知らしめるッ」

「最強の、冒険者·····?」


 それは俺の夢。いや、俺たちの夢。


「何を言ってるんだ。お前は一体·····」

「僕はアルカさ。前の名前は知らないし、覚えてない。ただ脳裏に焼き付いているのは君に敗北した時の苦い記憶と絶望·····」


 段々とその言葉に熱が乗る。隠されていた感情が顕になっていく。


「君は殺す。絶対、ゼッタイッ、ゼッ、タイッ!!!!!」


 その時、破滅されし世界にも似た魔界が揺れ始める。

 まるでアルカの感情の昂りに呼応しているように、そしてまた俺の体にある熱さも再熱し始める。


 そんな視界の中、確かに見た。アルカの体に鎖が巻きついていることを。それはハッキリとは見えず、実態的なものではないにしろ、確かにアルカを束縛するナニカであると。

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