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9-2 魔王城の秘密

 アウスレンダーの元にハンターギルドから連絡があったのは出発寸前だった。

 セイントナイトが魔王のダンジョン100層を無事突破。十分休養を取った後、封印を解除して魔王に挑むと連絡があったのだ。

 セイントナイトが見つけた魔王城の位置は聞いてある。アウスレンダーもそこを拠点に調べるつもりだった。

 魔王城までは、コリベール魔境山脈を抜けて約2日かかる。途中に現れる魔物の情報は手に入れてあるので、対処に手間取ることはないだろう。


 魔王城に到着した時、全てが終わっている可能性もゼロではなかったが、セイントナイトへの不信感と、スカルブラッドの対応力を考えるとその可能性は低い。

 今からでは間に合わないかも知れないが、出来るだけ速くそこへ行く必要があった。

 ハンターギルドに何か連絡があったら、すぐ知らせて欲しいと伝え、そして出発した。




 コリベール魔境山脈で現れる魔物はそれなりに強く、油断は出来なかった。

 夜も交代で休憩することで過ごしたが、ユックリ休むことは出来ない。セイントナイトはこの行程を楽に突破したと聞いていたが、流石の戦闘力だと感心した。

 もうすぐ予定の地点になる。アウスレンダーは最後の休憩を取ることにした。

 休憩に入るとすぐ、貴音はギターの調整を始める。まだ納得いかない部分があるようだ。出来れば大きな音を立てて欲しくないが、このギターで戦況が大きく変わるのも確かなので誰も文句は言わない。

 貴音の表情もいつになく真剣だ。



[新しい武器の使い勝手はどうですか?]


 キリマンがあっきーに聞いた。キリマン印の大ハンマーは、柄の長さ2.5m。先端に50cm直径の球体、そこから小さめのスパイクが無数に飛び出している。一般的にはモーニングスターと呼ばれる形状をしていた。


「始め見た時は不格好な気がしましたが、エノクサウルスも気に入っているようです。

 ミスリル銀の特徴を活かして、エノクサウルスのパワーを加えると、威力も増大します」


 あっきーが答えた。


「確かにあれは凄いな。ミスリルゴーレムが相手でも、あれがあれば良い勝負が出来たような気がする」


 エビスも、その強さを見て資金を投下しだだけの価値があったと思った。


[柄の部分は強度よりも魔力伝導率を高め、球体部分は強度と重量を増してあります。

 パワーを素早く球体部分に送り込んで、威力を溜めることが出来ます]


 あっきーはスマホの中で武器を振り回すエノクサウルスを見ながらニコニコしていた。




「そう言えば、セイントナイトからその後の連絡はないのですか?」


 風巻がエビスに確認する。


「今のところない。魔王に挑むと連絡があってからもう2日。勝ったとも負けたとも連絡はないそうだ。

 さすがにハンターギルドでも心配している」


「勝てなかったにしても、誰か一人ぐらい逃げてきそうですよね」


 あっきーが心配そうに言った。やっぱり無理にでも一緒に行くべきだったと少し後悔もある。


「魔王との戦いが始まると、結界か何かが発生して逃げられないとか」


 風巻が予想を言った。エビスがそれに答えた。


「それを言うなら、そういう場所に閉じ込められた可能性もあるな。無理に戦う必要はない。

 どっちにしてももうすぐ判るはずだ。下手な予想をするより、現実を確認しよう」


 エビスはそう言って立ち上がった。休憩は終わり。キリマンや風巻の魔法探査可能距離ギリギリまで近づいてそれによる簡易探査。

 その結果次第で、現場へおもむき詳しく調べることにしよう。




 魔王城はすぐに判った。如何にもそれらしい古城だ。壁面には蔦が絡み合い、ずいぶんと放置されていたことも判る。

 魔王城からは邪悪な気配が漂い、近づくものを恐れさせた。

 魔法探査によって魔王城周辺に敵がいないと判ると、魔王城の正門近くまで近づいた。流石に正面に起つ気にはなれない。


 そこからさらに魔法による探査を行う。下手に魔王城に侵入して、セイントナイトと同じように掴まってしまっては全く意味がない。

 魔法の射程距離200mだと、一度に全てを探査することは出来なかった。何度か位置を変え、侵入経路を変えることで内部構造を把握していく。

 半日ほどたった頃。ついに玉座の間を発見する。

 セイントナイトの言っていた通り玉座があり、そこにダンジョンの入口らしきものもあった。

 その玉座の後ろ壁面。それが派手に崩れていてその奥に小さな部屋があった。

 部屋の中央には祭壇のようなものが置いてある。が、祭壇のみで他には何もない。

 いや、ロッドが1つ落ちていた。見覚えのあるそれはミンウが持っていたヤツに違いない。


 エビスは思いだしたように独白する。


「一つは瞳。海の向こう。誰も近づけないところへ。


 二つ目は心臓。勇者のみが知る場所へ。


 最後のパーツは背骨。これはもっとも魔力が高く、動かすことが出来なかった。その為、魔王の間ごと、その場に封印する」


「それって王城で調べた勇者伝承の一節でしたよね。それが何か?」


 あっきーが聞き返した。エビスがそれに答える。


「私たちは勘違いをしていた。魔王のダンジョンは転移者が作ったもの。だから今回召喚された勇者の誰かが作ったものだと思っていた。けれどそれは間違いだった」


[もう一人別の転移者が居たとということ?]


 キリマンが確認する。


「居るでしょう。もう一人転移者が。それもこの手のダンジョンを作るのが好きそうな人物。最初の勇者ですよ」


「なんで最初の勇者がダンジョンを? そうか、そう言うことか」


 エビスの言葉で風巻も気付いたようだ。


「そうです。魔王の間は確かに封印されていた。前回の勇者が魔王の一部を魔王の間に封印したと、伝承にもそう書いてあります」


[つまりセイントナイトは、勇者が作った魔王への封印を、一生懸命解いていた。でもそれだと何かおかしくないですか?]


 エビスが出した結論に、キリマンが疑問を唱える


[今の話しが正解だとすると、魔王はまだ甦っていなかったことになりますよね]


 確かにそれは言えた。魔王が復活したから私たちが呼び出されたはず。順番がおかしい。


「クラーケンは僕たちが来てから、あるいはほぼ同時に現れた。と言うことは神の眼はその前後に封印が解けている。

 そう考えたら全パーツの封印が解けなくても魔王は復活出来るということです。

 そしてここの骨はつい先程まで封印されていた。

 だったら残るパーツは心臓となる。最初に封印が解かれたのは、心臓だったのでは?」


 風巻が答えにたどり着く。


「伝承によると、心臓は勇者だけが知る場所にあるんですよね。それってどこだったんでしょう?」


 あっきーが当たり前の疑問を言った。

 それにも風巻が答えた。


「勇者だけが知っている。これを言い換えると勇者の血を引く者に知らされていると、言えないですかね?」


[イスメアルダ王女? 違うな。となると…。!! ソーンダイク王子!!]


 キリマンが思いついたことをカンペに書く。


「じゃぁ、ソーンダイク王子は途中で裏切ったのではなくて、最初から魔王についていたと言うこと?」


 あっきーはもう何が何だか判らなくなってきていた。

 その思考を破ったのは、藪の中から現れた大きな生き物。一瞬ミスリルゴーレムかと見間違う、水銀色の体。大きさは2mを越える。四本の腕にそれぞれ刀を持っていた。

 その刀で草木を切り裂きながら一直線に、近づいてきた。


「やっと到着した。待たせたな、アウスレンダー。

 隠れていたようだが、こちらからは丸見えだったぞ」


 そう言うと、近くの木に止まっていたコガネムシのような甲虫が、その男に戻っていった。眷属召喚か何かで操っていたのだろう。

 この男が妖蟲王で間違いなかった。


「あの恐竜を出せよ。ミスリルゴーレムを上回るパワーをもつアイツと戦ってみたかったんだ。

 どうした、タイマン勝負は出来ないのか」


 あっきーが憤然と前に出た。他の誰かが止める暇もない。


「そう言われたら、やるしかない。

 出てこいエノクサウルス。お前のパワーを見せてやれ」


 颯爽と現れるエノクサウルス。その手にはモーニングスターを持っている。


「おっ、いつの間にそんな武器を手に入れたんだ。まぁいいか。

 俺は他の奴らみたいに考えるのは苦手だからな。近づいてぶった切る。それだけだぜ」


「GuGyaaaa---!」


 エノクサウルスも叫んで構えた。

 真っ正面から走って突っ込むエノクサウルス。それに対して妖蟲王は間合いの外から剣を振るう。そして剣先から出た衝撃波がエノクサウルスを襲った。

 モーニングスターを盾にして威力を殺す。エノクサウルスには殆どダメージがない。

 間合いに入ったエノクサウルスはパワーを伝達しながらモーニングスターを叩き付ける。

 四本の腕を器用に動かしてクロスブロック。そこから無理に耐えるのではなくて、スルリと受け流す。勢い余って体勢を崩すエノクサウルスの背中を剣が切りつけた。

 その一撃から身を守ったのは、背中から生えている骨板。その外郭にミスリルを追加して置いたのだ。


 予想以上に堅かった骨板に舌打ちをしながら間合いを取る妖蟲王。

 今度は妖蟲王が仕掛ける。四本の剣を振り回し、連続攻撃でエノクサウルスを追い詰めていった。手数で押し切るつもりなのか。少しずつ体に傷が増えていくエノクサウルス。

 エノクサウルスは眼から冷凍光線を放つ。威力は低くダメージは少ないが牽制にはなった。

 妖蟲王に出来た隙を逃さずにモーニングスターを叩き付けた。


 ズゴン!


 鈍い音がして妖蟲王が吹き飛んだ。木々をなぎ倒しながらやがて止まった。

 なんとか立ち上がった妖蟲王の体は大きく凹んでいた。関節のあちこちから体液を吹きながら立ち上がる。


「やってくれるじゃねぇか。だがまだこれからよ」


 見るとエノクサウルスも顔から体に掛けて切り裂かれていた。避けられないと判った妖蟲王は、守りを捨てて攻撃したのだ。

 エノクサウルスの傷も決して浅くはない。


 妖蟲王の背中が割れた。羽を広げたのだ。そこから小さな虫が大量に現れ、四方八方からエノクサウルスに襲いかかる。

 必死にモーニングスターを振り回すが、相手が小さすぎて効果が少ない。体中に小さな切り傷が増えていく。

 そこへ妖蟲王が突っ込んで来た。


「くらぇい。毒針殺法」


 ただでさえ虫の対処で気を取られていたのに、同時に四つの突きがそれぞれ別の急所を狙う。その全てを防ぐのは難しい。

 咄嗟に後ろに飛んで、さらに尻尾を使ってそれを加速する。そのお陰で致命傷は避けれたが、かなりの深手を負った。切り口は毒々しい青い液体が染みついている。何系の毒かは見ているだけでは判らない。四つの刀でそれぞれ違い種類の毒を使って言うかも知れない。

 虫たちがその深手を抉るように攻撃してくる。みるみるうちにHPが減っていくエノクサウルス。


「テラノスクランダー!」


 あっきーが叫んだ。それによっていったん空中へと飛び上がり、速度で虫を振り切った。

 そこから旋回して戻ってくると、今度は口から炎のブレスを吐く。広範囲に広がるブレスによって、虫たちが概ね焼け落ちた。


「よし。空中戦ならこっちの方が速い! そのまま撹乱しながら戦うんだ」


 あっきーは指示を飛ばす。

 下から見上げる妖蟲王。羽があるのだから飛べるのだろうが、速度で勝てるとは思えない。だが妖蟲王の口らしきものがニヤリと笑った。

 次の瞬間、銃声のような音がして、テラノスクランダーに命中。狙撃を受けてバランスを崩したエノクサウルスは、地上に落ちてきた。

 なんとか着地したものの、狙撃先が判らないと空にあがるのは危険だった。


「今のはバッタキャノン。射程距離はそんなに長くないが、威力は今見た通り。それをあちこちに放ってある。迂闊に飛べばやられるぞ。

 だいたいそっちが飛べるのは判っているんだぜ。なんの対策もしていないと思ったのかよ」


 エビスは予想通りの展開だと感じていた。

 スカルブラッドはこちらの戦力を明確に知っている。今までアウスレンダーなどが戦ってきた内容を知っているからだろう。

 対してこちらは相手の能力を知らない。不利なのは当然だ。

 エノクサウルスがゴールドモードを使えないのも、力を溜める隙がないからだ。それを警戒して妖蟲王は威力よりもスピード重視の攻撃を繰り出している。


 もっとも、今回は相手のそれを知るために来た。どうにか上手いところで戦闘を終了させることが出来ないものか。

 相手が一人ならこのまま勝つのは造作もない。残るメンバーが支援すればそれだけで勝てる。

 それでも向こうが仕掛けているのは、この場が有利な状況にあることを知っているからだろう。

 下手に行動すれば、逆に痛い目に遭う可能性もあり、今はエノクサウルスに頑張って貰うしか無い。なんとか耐えて欲しい。

 貴音はタイマンと言われている戦いに口を出すつもりは無いようだ。キリマンと風巻はあらかじめ話をしてあったので、ジッと戦いを見守っている。

 だがいよいよやばくなったらそうも言っていられない。ここでエノクサウルスを失うわけにはいかないからな。


 戦いは改めて地上戦になり、激しい攻防を展開していた。

 手数で押してくる妖蟲王の攻撃を耐えながら、単発で手を出すエノクサウルス。時折特殊能力を使い、戦況を変えていく。

 妖蟲王の戦い方が少しずつ判ってきた。しかしとうとう均衡が崩れた。深手を負い手をついたエノクサウルス。

 ここが限界だ。もう手を出さざるを得ない。風巻が召喚を行うべく前に出る。


 だが、こちらが動くのを察したのか、スカルブラッドも行動を起こした。


 この作品はPBM-RPGです。

 リプレイでも通常の小説でもありません。

 物語はプレイヤーの手にゆだねられており、

 プレイヤーの意思決定により変化し進められていきます。


 参加プレイヤーは「あっきー」「風巻豹」「キリマン」「エビストウスケ」「貴音大雅」以上5名となります。

 その他の人物や事象はマスターである私が一元的に管理しています。

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