表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麗人賢者の薬草箱  作者: 江本マシメサ
第十章 『メディチナ』、やっと再開!
142/173

百四十話

 穴の中を高速で下ること数分。リンゼイ達は地下深い坑道に到着をした。

 上の層よりもさらに空気が悪かったので、怪植物モンス・フィトが空気浄化能力を発揮し続ける。


「あんまり無理しないでね」

『大丈夫、ダイジョウブ~』


 初めこそ邪悪なる魔物の気質をしていた怪植物モンス・フィトであったが、クレメンテが捕獲し、リンゼイが魔力の素を与え、さんさんと照り付ける太陽の下、竜達に見守られながら育ったので、すっかり精霊寄りの善き生き物になっていた。


 そして、内に秘める魔力も、日々増大している。

 リリットは本日、そのことについて気付いた。


『うわ、しばらく視てなかったら、とんでもない存在に……』


 植物系魔物の成長速度は他よりも早い。そして、限りがないのだ。

 世界最大の魔物に『天空フィルママン・バウム』というものが存在する。

 天にも届くような高さを持つ魔物であるが、大きすぎるが故に、動くことが出来ない。

 樹の中は迷宮となっており、様々な魔物の生息地となっている。が、中の居心地が良すぎて、魔物は外に出て来られなくなる。

 魔物収集箱として、密かに人々より感謝をされる存在であった。


 一方で、怪植物モンス・フィトは他の植物系魔物より恵まれた場所に身を置いている。

 成長していないはずがないのだと、リリットは観察していた。

 怪植物ほんにんの言葉の通り、空気の浄化をしても、魔力はほとんど消費していない。

 このまま任せておいても大丈夫だと、リンゼイに伝えた。


 地下坑道内は酷い粉塵まみれであった。

 怪植物モンス・フィトのサポートがなかったら、大変なことになっていたと、身震いをさせるリンゼイ。


 相変わらず、魔物の気配は多くあった。

 だが、リンゼイに挑む力量がない魔物なのだろう。一切近づいて来る様子はなかった。


『そういえば、鉱物ってどうやって採るの?』

「爆破」

『え?』

「坑道の岩壁を火力で壊すの」

『それ、正規の方法? 本当に大丈夫なの?』

「ええ。採掘方法、きちんと読んで来たし」

『……そう。ほどほどにね』


 絹雲母セーダ・マイカはうっすら白く輝く岩の中にある。

 鉱物自体が光っているのだ。


「この辺は採掘跡もないし、きっと奥に採れる場所があると思うんだけど」

『なるほどねえ~~』


 探索から数時間。

 時刻はお昼を過ぎていた。


『お腹空いたけど、流石にここじゃ食欲も湧かないわ』

「さっさと採掘して、出ましょう」

『オ食事ノ場所、作ロウカ?』

「え?」


 そんな風に言えば、怪植物モンス・フィトはリンゼイ達の周りをスキップしだす。

 一体何が始まるのかと眺めていたら、魔法陣が浮かび上がり、地面から草木が生えてきた。

 蔓が伸びて岩壁を覆い、豊かな葉が芽吹く。

 周囲はあっという間に緑に包まれた。


『コレデ、オベント、食ベラレル?』

「あ、うん。ありがと……」


 長時間の探索で、リンゼイは精神的に疲れていた。

 怪植物モンス・フィトの作ってくれた小さな森を、心からありがたいと思う。

 さっそく、草の地面に座り込んだ。

 生えたばかりの草は柔らかく、清涼ないい匂いがしていた。


 道具箱の中の食事を広げる。


『おおっ、これは素晴らしい』

「また、手の込んだ物を作ってくれたのね」


 手掴みで食べられる魚のクリームパイに、揚げ鳥、野菜の煮物、肉の串焼き、肉団子など、色とりどりの食事が詰められていた。

 怪植物モンス・フィトには、ウィオレケレシピの特製はちみつ水が用意されていた。


 皆、時間を掛けてじっくり味わう。


 食後、お腹を休ませてから、探索を再開させた。


「……坑道探索って、キツイ」

『だねえ』


 管理が面倒だが、一度採掘場まで行ったら、転送陣を敷こうとリンゼイは心に決める。


『あれ、転移陣ってそんなに管理が面倒なの?』

「ええ、まあ。数時間なら平気なんだけどね」

『へえ~。ま、そっか。商品化したら、素材もそれだけ必要になるからねえ』

「ええ、そうね。ここ、何度も挑みたくなるような場所でもないし」

『ですな』


 しばらく歩けば、最深部のような広場に辿り着く。

 そこは地面も壁も天井も真っ白という、最高の採掘場であった。


 だが、ここで問題が生じる。

 リンゼイはがっくりと肩を落とし、リリットは同情する。怪植物モンス・フィトは悲鳴をあげていた。


「やっぱり、こういうことになるのね」

『お気の毒に……』

『ヒヤアアア!』


 地下深くには、巨大な蠍がうごめいていた。

 普通の蠍ではない。

 周囲の鉱物を摂取していた為か、白い体をしていた。

 見上げるほどの大きな体に、後方からは解く長い尾が反り返っている。先端には鋭い針があり、そこから銀色の毒が滴っていた。

 触肢ははさみ状になっている。赤く発光する六つの目が、リンゼイを獲物として捉えていた。

 前に突き出されたはさみを、リンゼイは杖で弾き返す。

 カン! と小気味のいい音がした。


『ヒィ、リンゼイさん、魔術を使ってえええええ!!』


 早速の脳筋対応に、リリットは戦慄を覚えながら叫ぶ。


 涙をこらえて『鑑定』で魔物についての情報を得る。


 毒大蠍ギフト・アラクラン

 毒を被れば、即死する。はさみにも弱い毒があるので注意。


『――という訳だから、リンゼイ、気を付けてね!!』

「分かった!」


 リリットは防御の呪文を可能な限り唱え、リンゼイの身を守る。

 毒大蠍ギフト・アラクランは巨体に似合わず、素早い動きを見せていた。


『メルヴモオ手伝イ、スル~』


 手先に大きな葉を生やし、鋭くする。

 てぽてぽと走りながら魔物に近づいたかと思えば、毒大蠍ギフト・アラクランの脚をスッパリと切り裂いた。

 毒大蠍ギフト・アラクランは素早く動くことを可能とするが、案外足の付け根が弱い。

 怪植物モンス・フィトの一撃は、大打撃を与えていた。


 動きが遅くなったので、やっとのことでリンゼイは詠唱の機会を得る。


『お~い、メルヴ、リンゼイが今からやばいの放つからね!』

『ハ~イ!』


 左右の脚を計三本、切り裂いた怪植物モンス・フィトは、リンゼイの近くに隠れることにする。術者の周囲には、魔術に巻き込まれないような強力な結界が築かれるのだ。


 詠唱を終えたリンゼイは、杖を揮って呪文を叫ぶ。


 ――大爆発エクリスソス!!


 巨大な爆炎が上がり、毒大蠍ギフト・アラクランの大きな体は一瞬にして砕かれる。

 リリットは想像以上のえげつない一撃に、悲鳴を上げていた。

 怪植物モンス・フィトは『炎、綺麗ダネ~』と言って嬉しそうにしている。


 だが、リンゼイの脳筋魔術は魔物を倒すだけではなく、硬い岩壁をも抉っていた。

 おかげで、目的の鉱物が大量に手に入ることに。


『リンゼイ、これ、狙ってた?』

「いいえ」

『だよねえ……』


 それから、三人で絹雲母セーダ・マイカを拾い集める。

 品質を守るために、絹雲母セーダ・マイカは薬草箱の中に保管された。

 粉塵で薄汚れていた外套は、今度は絹雲母セーダ・マイカの輝く白色まみれになっていた。


「……早く帰って、お風呂に入りたい」

『わたしも』

『メルヴも水浴びしたいよ~~』


 薄汚れた一同は、早く地上に出たいと願っていた。

 地味な収集作業は、一時間後に終わる。


『なんとか採取でしたね。おしろいの他の素材は?』

「他にも顔料につかう鉱物がいくつか。それと『アレクシスの花』を入れようと思って」

大霊薬マグヌス・エリキサの材料の?』

「そう。鉱物の悪い物質を肌に取り込まないようにするためにね」

『なるほどね~』


 転移陣を使って、一瞬で地上に戻る。

 アレクシスの花は以前穴場ポイントを見つけていたので、帰りがけに寄って摘んで帰った。

 翌日も鉱物採取に出掛け、おしろいの材料はあっという間に集まった。


 翌日から、試作品作りに移行する。


アイテム図鑑


絹雲母セーダ・マイカ


肌の輝くを際立たせるのに役立つ成分。

とにかくきらきらしている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ