三話 入談 Ⅱ
放課後に保健室に向かった。放課後まで保健室に行けないなんて授業のスケージュールを見直してほしいものだが、それは置いといて、生きているのが不思議なほど異常な冷たさの身体の書記さんが心配だ。
保健室の前につくと、あのとき無力感が襲い無理やり保健室から出させた気配もうはなかった。扉を開けると――
「いない!?」
いなかった。もちろん回復して自分で帰ったかもしれない。でも俺はその可能性を切り離した。なぜなら生徒会にはうわさが大好物の生徒会長の妹、ミーア・リインがいるからだ。彼女は親友の秘密でさえばらまき、肉親でさえその対象なのだから恐ろしい。
もうここにいてもしかたがないので、俺は保健室をあとにした。
それにしてもわからない。書記さんのこともあの気配のこともよくわからない。空からよく美少女が降ってくることはあったけどただ単に自殺を助けただけだった。特に命の恩人だと言われることもなく惚れられることもなかった。逆に怒られることもあったなぁ。と考えながら下駄箱に向かって実に超スローペースで歩いていた。誰かに見られたら完全に痛い子間違いなしだ。と頬をかいた。
ほとんどの生徒は部活に勤しみ青春の汗を流している。俺も部活をやりたいがアソコはなかなか入部を認めてくれないから今まで部活経験はなしだ。入部条件が全テスト平均点以上と難しく、さらに難しい副部長の理解不能な質問があるためきわめて困難だ。そろそろ違う部活に入ろうかと思い、また頬をかく。
渡り廊下を渡りきり下駄箱の方向へ曲がった。そのとき――
「今日は倒れた少女に会う日なのか?」
また、こんどは小柄な少女が倒れていた。俺は両手のひらを上に向け苦笑しながら言った。
「わかってると思うけど脈とかみるだけだから」
と、またその場でいいわけをしてその少女にかけよった。すると、少女は少し意識があり、
「なんの……いいわけ……だ」
と、少女はとぎれながらもツッコミを入れてきた。俺は意識があったことに驚いて後ろにのけぞった。
「い、意識あるのか……だ、大丈夫かっ」
「……は?何緊張して……んの」
「れ、冷静だなお前」
身動きがとれない少女に対して緊張しまくる俺だが、少女はその体格に合わずずっと冷静だった。
「確かに俺は目の前に倒れいている少女を助けようとしただけであってやましいことは何もない。つまり、俺は無実だ!」
「何わけのわからないこと……言ってんの」
緊張をほぐすための自己暗示にツッコミをうけて驚きまたのけぞる俺。ほんとなにやってんだかわからねぇ。
「それよりな、お前なんで倒れてんだ?」
とりあえず俺は質問をすることにした。少女を保健室に運びたい気持ちはあるが気が強そうでやろうにもできなかった。俺はヘタレだな。
「あなたは……関わらない方がいいわ」
「え?」
思わず間の抜けた声を出してしまった。身動きがまともにとれない少女がなに言っているんだ。とあきれた顔をした。
「あなたには……何もできないわ」
――俺には何もできない。
あのときの言葉が浮かんだ。今朝保健室で思った言葉を思い出し、また無力感が襲う。そんな俺に少女は忘れろと淡々と言い放った。
だが、だが俺は考えた。ここで帰れば俺はいつも通りの生活で、押し切れば俺はわけのわからん問題の関係者になれる。主人公にはなれないかもしれないが、これで俺は主人公に近づけるかもしれないと。
選択肢が浮かんだ瞬間俺は後者を選んだ。でも、どうすれば少女に関係者として迎え入れてくれるかわからない。
少女は起き上がるのを諦めたのか天を仰いだまま黙っている。
「なぁ、いったい何が起きてんだこの学校で。それが俺の手に余るなら関わらないからさ」
「……確かに。私一人では……この問題は解決できないかもしれない。けど……一般人を巻き込むわけにはいかない……わ。でも、少しだけ教えてあげるわ。もちろんこの件から引いてもらうためにね」
そういって少女は今起きている問題について少し教えてくれた。
今起きている問題は簡潔にいうと幽霊が学校中に跋扈して……って難しい言葉だな。簡単に言うと集まってきているから、その幽霊の退治と呼び寄せている原因の調査および解決を少女はしているらしい。
それは俺ならできることだった。だから俺は切り出した。
「――ということ。だから一般人……には何もできないし、邪魔になるだけよ」
「じゃぁ、俺にもできるな。一応幽霊に関しては知識がある」
「知識だけじゃ……無理よ」
「それは一般的な知識だろ?知ってるぜ俺は。お前が言ってる幽霊は『幽霊』じゃなくて『霊族』だってな」
――言い切った。少女は俺の言った言葉に驚いて起き上がる。
あいかわらず天を仰いだまま淡々と否定し俺を説得しようとした少女の鉄壁にひびを入れることができた。
「あなた……なぜそれを――」
「俺には秘密がある。それを話すからその件につき合わせてくれ」
ひびが入ればそこ突けば簡単に壊すことができる。俺の秘密――今では忘れたい過去を切り札にしてその鉄壁を崩す。
そして俺は少女に秘密を話した。
「……いいでしょう。あなたを私のパートナーにしてあげるわ。
私は……んーそうね、ローサ。ローサと呼んで」
「ありがとうな。俺はセード・ブローズンだ。よろしく」
「セード……そう。ウェルカム、セード」




