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二話 入談 Ⅰ

 三話はセード主観になります。

 遅刻だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!と心の中で叫び、校舎に入った。今まで無遅刻無欠席無早退の俺が遅刻という失敗をしてしまった。


「っと、まず生徒指導室にいかねぇと」


 学校に遅刻をしたらまず生徒指導室略して生指へ行き、遅刻時刻となぜ遅刻したかを書類に書かなければいけないのだが、考えてみると今まで学園生活してきた中で生徒指導室に行ったことがなかったため、場所がわからない。やばいなと頬をかいた。

 だが、職員室の場所はわかるからそこで聞けばいい。そうだそうだ。と納得してみる。


「えっと、職員室はB棟二階の端だったな」


 この高校もとい学園はA、Bの高等部の棟とC、Dの中等部の棟とEの資料棟があるため、迷いやすい。

 職員室へ向かい、B棟二階に行くと職員室の二つとなりに生指があった。なんだ近くにあるじゃないかと苦笑した。

 そういえば生指って精子と読みが同じだよなぁとよけいな事を考えながら、生指の扉の前に立った。が、初めて生指に入るので緊張がハンパない。扉に張ってある紙に書かれた『生指に入るときのマナー』を何度も読み返し、扉を叩いて失礼しますとやや震えた声を出して入った。

 

「二年D組二十八席セード・ブローズンです。えぇーっと、遅刻したので……えーっと」

「遅刻ねぇ。えぇーじゃぁそこのプリントに遅刻時刻と遅刻理由をライトしなさい」


 緊張しすぎて言葉が出てこない俺に先生がかったるそうに指示してくれた。『ライト』って英語で『書く』って意味だっけ?あってんのか使い方。後で調べてみたが『ライトトゥザプリント』で『このプリントに書きなさい』っていう意味だから最初に『ライト』を置くのが正解。だが、友人に聞くとあれであっているらしい。日本語はよくわからない。

 遅刻時間八時五十分と書き次の項目『遅刻理由』を書こうとしたとき、そのまま書いてはいけない気がした。遅刻した理由……それは、『一目惚れ?をした片思いの少女に会いに行ったが、まだ起きていないらしいのでしばらく待っていたから』。

―――――――――――――――っ!!

 しばらく悶絶したのち、『寝坊しました』と書いておいた。


 遅刻書を書き終え、教室へ向かう途中。なぜか倒れてていて、なぜかスカートがめくれてモロ見えで、なぜか靴下が左右別々の少女に遭遇した。が、どうもずっこけた様子ではなく気を失っているので早足でかけよってみると、生徒会書記のイォフィ・コートさんだった。


「脈があるか確認するだけだ……」


 と、誰もいないところで下心まるだしのいいわけをして、手首にふれた。すると肌は異常に冷たく体温が感じられなかった。

 とりあえず保健室に運ぼうとしたが、どうやって運べばいいかわからなかったのであれこれとさまざまな抱え方を試した結果、背負う抱え方が一番軽く感じた。かっこつけてお姫様抱っこに挑戦したがあれは相手が首に手を回してくれないと失礼だがかなり重い。

 はたから見れば不審者、性犯罪容疑で即刻停学を食らうだろう状況だ。今が授業中というのが救いだった。


 保健室につくと保健の先生は留守のようで、いわゆる少女と保健室で二人っきりな状況だが俺は絶賛片思い中の人がいるから手は出さない!……つもりだ。男としての本能を抑えきれるか心配なほど生徒会書記さんは美人だ。

 とりあえずベッドに寝かせて布団をかけ、湯たんぽを用意した。

――俺には何もできない。

 一瞬、確かに俺の脳裏にそれが浮かんだ。そのせいだろうか、急に保健室が寒くなったように感じた。まるでこの場から去れというようにだんだんと寒さが増してくる。

 俺は知っている。これが何なのか。でも、俺はそこから逃げ出してしまった。


 教室に行くと、幽霊のうわさでいっぱいだった。だが俺は詳しい内容は知らなかった。


「よぉ、セード。お前が遅刻なんてめずらしいな。デンジャラスなことが起こるかもな」


 すらっとした体つきに銀髪に青色の瞳のクールな印象があるとなりの席の少年、シュバン・エースラがチューイングキャンディを食べながら不吉なことを言ってきた。が、確かに引っかかるところがある。さっきの書記さんのことだ。もう不吉なことは始まっているのかもしれない。


「ま、確かに最近幽霊がどうとか言ってるしな。で、うわさってどういうのかわかんねぇだけど」

「ん、お前知らないのか?じゃ、詳しく説明するぞ。ほんとかどうかは知らないが――」


 シュアバンの話によると、幽霊に会うと魂(寿命)を喰われるらしい。喰われた人は一時的に倒れるか、そのまま行方不明になるという。最近貧血で倒れる生徒が多かったため誰かが面白がって広めたというのが真実だとされていたが、行方不明者が出たため本当の話だということになった。しかし、本当に行方不明者が出たかはわからない。俺の頭の中にも一人だけ存在のはっきりしない生徒がいたからだ。


 三限目の授業は数学。弧度法の授業だ。しっかり授業を受けている者もいれば投げ出し、諦めているものもいる。俺は諦めてはいなかったが、今朝の生徒会書記のイォフィ・コートさんのことで頭がいっぱいだった。もちろんいやらしい意味じゃない。


「なぁなぁ、135π(パイ)てひゃくさんじゅうごっぱい(・・・・)て読むとおっぱいに似てるよな」

「俺ひらめいたぜ!πとO2でパイオォツーでパイオツじゃね?」

「おまっ、天才じゃん」

「男子エローい。アホじゃない?」


 きゃっはっはと笑いながら下ネタにつなぐ男子生徒は哀れとしか見れない。それに女子生徒も笑ってるんだからどうしようもない。日本人女性は大和撫子というが、今は大してこちらと変わらないと聞いた。むしろ酷いとも。これでいいのかよ女子たち……。と嘆息するが、それよりもやっぱり書記さんのことが気になる。因みに書記さんとは同級生だ。


「インセンニャンテ――じゃなかった、先生。保健の先生って今日休みですか?」


 思い切って聞いてみた。なぜなら、書記さんが今朝倒れていたのにそれが幽霊のしわざだとかのうわさを聞かない。三年生の先輩が風邪で休んだだけでやれ幽霊だとかやれ呪いだとかいう女子の情報網に強さに引っかかってないのは不自然だと感じたからだ。因みにインセンニャンテとはイタリア語で先生。


「いや、休んでないぞ」

「そうですか」


 すると意外な答えが返ってきた。もし、保健の先生が休みなら書記さんは見つからずにそのままそこにいるはずだ。それに、この学校では生徒会は優秀な生徒のみがなれる仕組みのため、授業を受けずに生徒会の仕事をしていてもおとがめなしということになっている。むしろ生徒会の仕事の方が授業より難しいと聞く。いったい何をやっているのか、無理やりクラス委員に選ばれた俺にはわからない。

 保健の先生が休みでない以上、書記さんはどうしているのか気になった。


 三限目以降は移動授業で保健室に行くヒマがなく、結局放課後となった。

 

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