第1話 僕のたった1つの夢
前書き
初めまして!
この作品を開いていただきありがとうございます。
本作は、ある少年の新たな人生を描いた異世界ファンタジーです。
楽しんで読んでいただけるよう、少しずつ物語を紡いでいきたいと思います。
まだまだ未熟な部分もあると思いますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
それでは、『ユニークスキル:万物生命召喚』をお楽しみください!
僕は、生まれたときから身体が弱かった。
正確に言えば、生まれつき心臓に重い病気を抱えていた。
病名は、左心低形成症候群。
心臓の左側が十分に発達しておらず、全身に血液を送り出すために何度も治療や手術を受けなければならない病気だった。
僕の人生は、病院とともに始まった。
物心がついた頃には、病室の天井を見ることにも慣れていた。窓の外には青空が広がり、季節が変わるたびに景色も変わっていく。春には桜が咲き、夏には強い日差しが差し込み、秋には木々が赤や黄色に染まり、冬には冷たい風が窓を揺らした。
けれど、僕はその景色を窓越しに眺めることしかできなかった。
同じ年頃の子どもたちが外で走り回っている姿を見ると、少しだけ羨ましくなる。
「いいなぁ……」
そんな言葉が、自然と口からこぼれることもあった。
もちろん、僕だって最初から諦めていたわけじゃない。
いつか自分の足で歩いてみたい。
自分の好きな場所へ行ってみたい。
そんな夢を、ずっと心の中に持っていた。
ただ、現実は簡単じゃなかった。
長い入院生活の影響もあり、僕の足は思うように動かなかった。立ち上がることさえ難しく、誰かの助けなしに歩くことはできない。
それでも、僕には毎日の楽しみがあった。
それは、アニメとゲームだった。
病室で過ごす時間は長い。検査や治療が終われば、自由に使える時間も増える。そんな僕の時間を彩ってくれたのが、テレビやゲーム機だった。
最初は何となく見始めたアニメだった。
けれど、気がつけば夢中になっていた。
主人公が仲間と出会い、強敵に立ち向かい、知らない世界を冒険する。見たこともない景色を眺め、広い草原を駆け抜け、山や海を越えていく。
画面の向こうには、僕が知らない世界が広がっていた。
「いいなぁ……僕もあんなふうに走ってみたいな」
ゲームも同じだった。
自分でキャラクターを操作し、街を歩き、森を探索し、時には強敵と戦う。自分の手で冒険を進めていく感覚が、僕は大好きだった。
もちろん、画面の中のキャラクターと現実の僕は違う。
それでも、ゲームやアニメは僕に夢を見せてくれた。
いつか僕も、自分の足で歩いてみたい。
いつか僕も、あんな景色を自分の目で見てみたい。
その気持ちは、日を追うごとに強くなっていった。
「先生、今日のリハビリもお願いします!」
僕はリハビリの時間が好きだった。
思うように身体が動かず、悔しい思いをすることもあった。少し頑張っただけで疲れてしまう日もある。それでも、昨日できなかったことが今日できるようになると、それだけで嬉しかった。
「今日は調子がいいね」
「本当ですか? じゃあ、昨日より頑張れそうです!」
「無理は禁物だよ。少しずつ進めていこう」
「はい!」
僕はいつだって前向きだった。
いつか歩けるようになる。
そう信じていたかった。
そして、気がつけば18歳になっていた。
18年間、僕の生活の中心にはずっと病院があった。外の世界を知らないわけではない。検査や治療のために病院の外へ出たこともある。けれど、自分の意思で好きな場所へ歩いていった経験はなかった。
友達と遊びに行くことも、気軽に買い物へ出かけることも、当たり前のようにできることではなかった。
それでも、僕は自分の人生を不幸だとは思いたくなかった。
アニメを見て笑った日も、ゲームで難しいステージをクリアした日も、リハビリで少しだけ成長できた日も、全部僕にとって大切な思い出だったから。
ただ、1つだけ心残りがあった。
それは、まだ自分の足で自由に歩いたことがないということ。
「いつか退院できたら、まず何をしようかな……」
ベッドの上で、僕はそんなことを考えていた。
行ってみたい場所はたくさんある。
大きな公園にも行きたい。海も見てみたい。街を歩いて、好きなものを買ってみたい。何も考えず、ただ気の向くままに歩いてみたい。
そして、いつか自分の足で走ってみたい。
「……楽しみだな」
その日が来ることを、僕は本気で信じていた。
けれど、その願いが叶うことはなかった。
その日は、いつもと変わらない1日になるはずだった。
朝から検査を受け、昼食を食べ、午後はベッドの上でゲームをしていた。
画面の中では、主人公が広大な草原を走っている。
「おおっ、すごい! こんなところ歩いてみたいなぁ」
僕は画面を見ながら笑った。
そのときだった。
突然、胸のあたりに強い違和感を覚えた。
「あれ……?」
最初は少し調子が悪いだけだと思った。
けれど、すぐに息苦しさが強くなっていく。
身体が思うように動かない。
手に持っていたゲーム機が、ベッドの上に落ちた。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
何が起きているのか分からなかった。
怖い。
どうしよう。
誰かに知らせないと。
僕は震える手を伸ばし、ベッドの横にあるナースコールを探した。
指先がなかなか届かない。
「お願い……届いて……!」
何度か手を伸ばし、ようやくボタンに触れることができた。
僕は力を振り絞ってナースコールを押した。
『はい、どうしましたか?』
スピーカーから看護師さんの声が聞こえた。
「た、助けて……ください……!」
『どうしました? 苦しいですか?』
「息が……苦しくて……! 先生を……呼んでください……!」
『分かりました。すぐに行きますからね。大丈夫ですよ』
看護師さんの声を聞いて、少しだけ安心した。
けれど、身体の状態はどんどん悪くなっていくように感じた。
「嫌だ……」
僕は小さく呟いた。
怖かった。
今まで何度も治療を受けてきた。苦しい検査も、痛い治療も経験してきた。
それでも、今回は何かが違う。
自分でも分かってしまうほど、身体がおかしかった。
「嫌だよ……まだ……」
目から涙がこぼれた。
まだ死にたくない。
まだ何もできていない。
まだ自分の足で歩いていない。
まだ外の世界を自由に見ていない。
やりたいことが、たくさん残っている。
「僕……まだ生きたいよ……」
そのとき、病室の扉が勢いよく開いた。
「大丈夫ですか!」
看護師さんと医師が駆け込んでくる。
すぐに周囲が慌ただしくなった。
「状態を確認して!」
「先生、こちらです!」
医師たちが僕のそばに集まり、必死に対応してくれている。
僕は何とか声を出そうとした。
「先生……僕……」
「大丈夫です。今、処置していますからね」
「僕……まだ……死にたくない……」
言葉が途切れる。
意識が遠くなっていく。
嫌だ。
こんなところで終わりたくない。
せめて1度でいいから、自分の足で歩いてみたかった。
病院の外へ出て、青空の下を歩いてみたかった。
アニメの主人公みたいに、知らない世界を冒険してみたかった。
「お願い……神様……」
僕は心の中で願った。
「もう1度……チャンスをください……」
視界がぼやけていく。
医師や看護師の声が、遠くから聞こえるようになった。
18年間、ずっと夢見ていた。
ただ、自分の足で歩きたかった。
それだけだった。
そして――
僕の意識は、静かに途切れた。
享年、18歳。
僕の人生は、病室で幕を閉じた
あとがき
第1話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回は主人公の前世について描きました。
彼がどんな人生を送り、どんな夢を抱いていたのか、少しでも伝わっていれば嬉しいです。
これからも自分のペースで物語を書いていきますので、楽しんでいただけたら幸いです。
感想や応援もお待ちしています!
それでは、次のお話でお会いしましょう!




