プロローグ~所詮、師走咲良はそんなもんだ。~
2020年4月。
俺、師走咲良は東門台高校の入学式を迎えていた。
高校に対しての希望は無い。かといって、絶望もない。
中学のときと変わらない生活が送れればなと思っていた。
そんな高校生活の第一歩となる入学式を迎えていた。
入学式は意外と短かった。
それは、ほとんど寝ていたからだ。
校長先生や、なんたら会長の話などがやたらと長い。そんな面白くない話まともに聞いてられっか。
入学式が終わり、俺たち新入生は教室に戻った。
教室の中は入学式当日だとは思えないほど騒がしい。
「おい、あいつさっき寝てたよな?」「それな!まじウケるわぁ。」とか、
「あいつ、よくここの高校合格出来たな。」「ここ偏差値68だからな。」のような会話が聞こえて来る。
......あれ?俺の事だよね?なんか俺、皆にバカにされてね?見られてね?笑われてね?
なんで後ろの方に座っていたのに寝てたのバレてるんだ?
どうしても気になったので隣にいる俺と同じくぼっちぽい人に聞いてみることにした。
「なぁ、俺ってなんで笑われてんだ?」
「ああ、君は師走くんだよね?」
「おう。師走咲良だ。」
「僕は睦月遥希だ。」
睦月は右手を出して、握手を求めている。
正直言うと、握手する気もないし、初対面の人と友達になろうとも思わない。
だが、返さないと話が始まらない気がしたので睦月の右手を握った。
「睦月か、よろしくな。」
「うん、よろしく。ごめん。話が逸れたね。なんで君が笑われているかだったよね?」
んー......中々本題にいけない。なんかイライラしてきた。
「そうだ。」
イライラしているのが声に出てしまっていたのか、睦月は申し訳なさそうな顔をしてこちらを見てくる。
おい、まるで俺が悪いみたいだろ。やめてくれ、そういうの。
まあ、なにかあったら俺が悪人っつーのは昔からなので別にいっか。
俺、悪くないのに。1人でいただけなのに。
「君が笑われているのはね......」
覚えているのはそこまでだ。
悲しみのあまり呆然としてしまったらしい。
「大丈夫?意識が飛んでるよ?おーい!」
睦月の声でようやく意識が戻ってきた。(気絶してた訳じゃない。)
なぜ俺がボーッとするほどショックを受けたかというと、笑われていた理由が皆が起立しているのに1人だけ座っていたかららしい。
......恥ずかしい。もうこの出来事は3年間、いや生涯残る黒歴史になってしまうようだ。
俺の心を察したのか、睦月が優しい声で俺に言ってきた。
「あの、その、でも、きっとみんなもうすぐ忘れるよ。見て、もう皆静かになってるじゃん。」
言われた通り、周りを見てみると確かに静かになっている。
でも、この静寂は違う。俺は今までの経験で培った能力を研ぎ澄ます。すると、1つの記憶が結び付いた。
ハメられた。気付いたが、もう遅かった。
前には先生らしき大人が立っていた。
「おい、そこのお前!なぜ先生が来ているのに、後ろを向いているんだ!」
それを見て、周りはまた笑い始める。
睦月は少し離れたリア充っぽい奴にちいさくグッドサインを送る。
そしてその相手もグッドサイン。
あの、睦月の野郎......!
ぼっち仲間だと思ったのに、お前、上位グループのやつだったのか!
いや、待てよ、今日当日なのにいつ打合せしたんだ?
睦月の机の中にメールアプリが開いたままのスマホが置いてあった。
そこには、
「遥希、目の前の奴、助けるふりしてハメろ。」
「了解、雨水。」
とあった。
スマホか!
確かにすまは便利だけどねこういうのに使うものじゃねーと思うんだが。
……はぁ
なんで俺はいつもこうなる。
俺だけ……
俺は悪くないのに。
まいっか、所詮、俺はそんなもんだ。
「もう静かにしよ!」
どこからか知らないが女子が注意して声で周りも静かになる。
きっと、中学の時生徒会やってたとかそういう奴だろう。
その優しさはいいのだ。でも、今のそいつのアシストは何も感謝できない。
こうして、俺達の耐え難い3年間が始まろうとしていた。




