↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
50/50

50.【エピローグ】名前

 翠が目を覚ますと、そこは見慣れない天井。隣には、王が眠っている。


(夢じゃ――ないよな)


 自分の気持ちを王が受け止めてくれた。自分も同じ気持ちだ、と。

 まだ信じられない。


 王は目を閉じて眠っている。額に零れ落ちた髪、意外と長いまつ毛。彫りが深い顔は、芸術品のようだ。

 翠が先ほどまで枕にしていた腕は筋肉質で、自分の倍はある。


 その、たくましい腕の中で、昨日は。


(昨日は――わけがわからなかった)


 初めての体験を、どのような語彙で示したらいいのかわからない。王の――珀瑛の大きな手が、体のあらゆる場所を撫でていった。何度もささやかれる自分の名。自分の体が、自分のものではなくなる感覚。


(主上も、同じように思ったんだろうか)


 そうだったら嬉しい。


(さて、どうしよう)


 王はまだ眠っているようだ。


 こういう時、どうしたらいいのかまでは聞いていない。しかし、顔を合わせるのはひどく気恥ずかしい気がした。どんな顔をしたらいいのかわからない。


(起こすのも悪いし……。抜け出して、帰っちまえばいいのかな)


 布団から出て、自分が裸であることに気づく。


(服は、布団の中か)


 起こさないように探してみようと思ったとき、手首をつかまれた。


「帰らずともよい」


 顔がかあっと赤くなる。恥ずかしくて顔を見られない。とっさに後ろを向く。


「でも、もう朝ですし」

「もう少しいてくれ」

「……分かりました、主上」

「珀瑛だ」

「珀瑛、さま」


 王が後ろで起き上がる気配がした。まだ顔を見られない。


「その名、大切にしてくれよ。王族しか知らん名だ」


 驚きに目を見開く。


「そんな――そんな大切なお名前を、私に」

「お前だからだ。俺は――お前にあげられるものを、何も持っていない。小遣いすらないんだから」


 そういえば、夜市でそんなことを言っていた。


「それに俺の立場上、市井の男のように、お前だけ、というわけにもいかん。だから――あげられるのは、その名くらいだ」


 彼が後ろから抱きすくめてきた。触れる肌、温かい腕。


「十分でございます。大切にします」


 首に回された彼の腕をとり、そこに頬ずりをした。髪を撫でられる。緊張するのに安心する、不思議で幸福な時間。


「さて、政務までにはまだ時間があるな」


 そのささやきには、熱っぽさがあった。


「珀瑛さま……あの――もしかして、いまからエッチなことを?」

「ああ、する」

完結です。ここまで、ありがとうございました。

感想、ブクマ、リアクション、評価などとても励みになりますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。