8話 亀にヤクザ
「元気でな」
キュロさんに送り出され俺はキュクロープス領の街を目指した。
何事もなく森を抜けると地平線が見えた。
200kmくらい歩くと大きな街があるらしい。
村長から貰った、保存食を食べながら、のんびり歩いていると、前の方に大きめの獣が歩いていた。
カメのような姿をしていて、甲羅は高級な鎧になるくらい硬く、手足も皮が硬すぎて逆に武器が壊れてしまう程だ。
ただ動きが遅いので、近づかなければ害はない。
ただ、俺は今無一文だし、素材を売れば1ヶ月分の生活費は賄えると思うので、倒せればかなりの収入が得られる。
今こそ、破壊不能を活かす時だ。
カメと正面から向き合い、自分の間合いに入った瞬間、顎に全力でキックをかます。
義足がミシッと音を立てる。
蹴り飛ばされたカメは、大きく仰け反り一番柔らかい首根っこの部分が狙いやすくなる。
そのまま首を短剣で切り、あっさりと討伐が完了した。
どれくらいの金になるか分からないが、一匹が大きく、かなり重いので遠くの方に数匹見えたが、討伐はせずにそいつだけ担いで街へ向かった。
義足は、まだなんとか耐えていてくれているようだ。
数キロ歩いているとスタスモと言う名の街と街の中継点に設置されている簡易的な村に着いた。
あんまりにも重いので、馬車に乗せて貰いたいが、あいにく無一文だ。
しかし、その場で素材を買い取ってくれる業者もいるらしいので、一応行ってみる。
「素材屋の人っていますか?」
怖そうな人が多く、あまり大きな声で聞けず殆どの人の耳に入っていない。
「おい。ちょっとこい」
「わ、分かりました」
見るからに、ヤクザな人に絡まれ、断れずに付いていく。
村の奥の方にある比較的しっかりとした家に連れ込まれ、席に座らされる。
「そいつを俺に売ってくれないか」
恐喝とかじゃなくて良かったと思いつつ、まだ安い値段で買い取られ、大損をしてしまうかもしれないので油断できない。
幸い村長から、魔物の相場などについて詳しくまとめられている本は袋に入れておいてくれたので、この場で確認出来れば大損は絶対に無い。
「相場はいくらくらいになりますか?」
一応信用してはならないが、聞いてみる。
「それは、そいつの体重を量ってからだな。奥の部屋に秤があるから、俺らでやっておいていいか?」
「お願いします」
「この部屋で待ってろ」
「分かりました」
意外と親切そうでほっとしたが、まだまだ油断はできない。
部屋には誰もいないので、本を見て確認してみる。
手帳くらいの大きさだが、明瞭のスキルが付与されているおかげで、点のような文字もよく見える。
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アミナ-チェロナ
・相場価格
甲羅→4万マーター/kg
皮→加工しにくいため値段が付かない場合が多い
肉→非常に硬く粗悪な干し肉にしかならないため値段はつかない
甲羅は体重の30%となる為、実質1.2万マーター/kgとなる
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大体1t無いくらいの感覚だったので、1200万マーターくらいが相場になる。
「1027kgだった」
感覚よりも少し多いくらいなので多分本当だと思う。
「値段は2億で買い取らせて貰う」
「2億⁉︎」
相場の10倍以上の値段がついて、困惑する。
「簡単に言うとこいつの眼は超強力な覚醒剤になるんだ。だからかなり薄めて売るんだが大体こいつの体重と同じくらいの量の覚醒剤になるから、安く売っても250兆にはなる。だから、今後この亀をうちに売ってくれれば、さらに儲けられるからな。それに比べたら2億出すくらい軽いもんよ。という事で、うちでは1kgあたり20万マーターになってる。それにうちは、お前らのような正常者に対しては、ちゃんとした商売をしているからな。むしろ商売になりそうなやつは、相当高い値段で買っているからな。俺らのターゲットは、薬物中毒者だ。あいつらは、一度中毒になってしまうと値段がどんなに高騰しても買ってくるからな。お前はそういう奴にはならないようにしろよ」
覚醒剤は、使い方さえ間違えなければ、回復力の強化と、身体強化を一時的に付与できるので、戦闘職についている人の間では普通に使われている。
しかし、中毒性のある成分も含まれている為、緊急時以外には使わない人が多い。
なので、覚醒剤の材料を売ることは違法では無い。
しかし、覚醒剤を戦闘職以外の人に売るのは違法なので、このヤクザの人は法外な事をしている。
しかし、俺もお金が欲しいのも確かだ。
買取の話は了承し、2億で売り払った。
かなりの量のお金を得られたので、馬車で移動する事にした。
馬車での移動途中にヤクザから貰った名刺は、一応見つかりにくい所に入れて置いた。
ガタガタと乗り心地が悪い道を通り、馬車は丸一日かけて街に到着した。
※主人公の元友達のタンタロスを、ベレトに変更しました。




