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5 精霊?

「誰だ?お前は」


 目の前には中性的な顔立ちの半透明な女性が居る。

 うーん、大体18歳ぐらいか? 美少女って呼ばれるタイプのやつだな。彼女居ない暦=年齢だけど、別にほしいとも思ったことはない。色仕掛けとか美人局(つつもたせ)とかに引っかかって借金したおっさん達を見て育ってきたからな。


『私は人工精霊です。貴方は私と契約しに来たのではないのですか?』

「人工精霊……? あと、俺はここを調査しに来ただけだ。」

『予想外です。』


 ツッコミたいところが多いな...。そもそも、精霊自体初めて見た..。精霊は超希少で、自然の高濃度の魔力が集まって生まれる存在って本には書いてあった。それを人工で作るってどんな頭すれば出来るんだ…?


「まず、そもそも精霊ってのは自然から生まれるものじゃないのか?」

『はい。それを変えようと、研究者達は術式を作り出しました。』

「...なんで?」

『わたしも過去に質問してみたことがあります。しかし、研究者という生き物の習性。との不可解なことを返されました。』


 なんとなくわかる。好奇心が抑えられないんだろうな。でも、研究者になろうとは思ったことがないな。今は復讐の計画で頭がいっぱいなんだよ。


「しかし、なんでお前はここに居るんだ?」

『研究者達は、私を世に出すと混乱が起こる。そう思い、ここに残しました。』

「だとしても、俺がここに来た時、契約しに来たのかを聞いてきたのはおかしくないか?」

『前回の主は、最後に次にここに着た人を助けてあげて。と言い残し、もう一度、ここに置いていきました。』

「その話を聞いた俺が来た。そう解釈したんだな。」


 こいつの前の主が語り継いだ。そう予想していたみたいだが、そういった話は聞いたこともないな。前の主ってのはどんな人物だったんだろうか。


『なにがあろうと、私は貴方を補助します。それが前の主の最後の命令なので。』


 最後の命令、か。なんだか親近感が湧くな。相手は何も感じてなさそうだけど。


「わかった。しかし、本当に俺で大丈夫なのか?」

『どういう意味ですか?』

「いや、俺って前の主とやらと面識もなく、血族でもないだろうし。」

『えぇ。些細な問題です。』


 えぇ〜? 血族固定の精霊とか、魔剣とかがあるから、そこら辺重要なのかなって思ってたんだけど。こいつは興味なさそうにしているな。

 そうだ。


「俺は精霊術なんて持っていないぞ?」


 精霊術とは、契約するときに必要となるスキルだ。精霊と旅するおとぎ話には必ず出てくる。そもそも取得条件がわからず、スクロールさえ希少で、スキルの保持者が精霊と出会えず、契約出来ずに一章が終わるなんて話はざらにある。だが、精霊の能力はその分強力で、夢見る者も少なくない。


『問題有りません。私は精霊と言いながらも、魔道具に属します。』

「え、お前魔道具なのか…!?」

『生命創造には失敗しました。代わりに人工知能と術式を組み合わせ、私が作られました。』


 爆弾情報すぎる。精霊って生命に属すんだ。じゃあお前精霊って名乗っていいの? まぁどうでもいいか。


「へぇ。じゃあどうやってお前は俺をサポートしてくれるんだ?」

『こちらをどうぞ。』


 精霊に見たこともないデザインの腕輪を渡された。周りの幾何学(きかがく)的な模様が淡く光っている。寝る時枕元で光ってたら地味に眩しくてタンスの奥とかに入れたくなるぐらいの光量。


「なんだこれは?」

『そちらは私の本体です。そこから貴方をサポートすることが出来ます。』

「これを着けたら外れなくなるとか無いよな?」

『心配性ですね。そんな事はありませんよ。』


 裏社会では人を迂闊に信用するとすぐ死んでしまうからな。警戒心は嫌でも身につく。殺して借金踏み倒してやるって考えてるやつは少なくない。懐に入り込もうとしてくるやつとか、人が良さそうな顔をしている人は厳重警戒だ。借金しているやつはまともな人間じゃない。俺みたいな下っ端を殺しても意味ないってのに。

 今は関係ないけど。


『貴方は私の主になってくれますか?』

「あぁ。よろしく頼む。」


 手を差し出すと、エルが受け取り、握手をした。精霊って触れれるんだ。


 ぽわっと周囲が光る。



《契約貸借》

『人工精霊-06』との契約を確認。

契約を成立しました。



 …なんだこれ、文字?…【契約貸借】って俺のギフテッドだよな…?

 初めて発動した。契約が成立した…?発動条件は何だ…?


 ってかこいつの名前かなりシステムチックだな。人工精霊-06って。他に後5体似たようなのが居るってことか。


『…どうしたんですか?ぼーっとして。』

「……いや、なんか文字が見えて。」

『文字?』

「…もしかして、見えないのか?」

『えぇ。私の目にはなにも見えませんね。しかし、先程ちょっと違和感はありましたよ。』


 違和感があった…か。発動条件がいまいちわからないな。取り立てをするときや、金を貸す時にも契約をしたことがあるが、こんなことは1度も起こらなかった。

 …契約書を通したからか?いや、まだ成功例が少なすぎる。


「…まぁいい、後で検証するとしよう。」

『後回しですか。』

「あぁ。まだなにもわからない。」


 ――じゃあ早速腕輪をはめてみよう。…腕輪の光が収まったな。これで夜も安心して眠れる。

 …あれ、あいつどこ行った?


『(聞こえますか?私はこうやって貴方をサポートします。)』

「うおっ、頭の中に声が…!」

『(慣れてください。あと、貴方も同じ事ができますよ。)』

「(…こうか?うおっ、なんか新しい発声器官が出来た感覚。)」

『(そうですか。)』


 これなら考えたことがだだ漏れになることはないな。安心した。全部考えてることがバレるなら腕輪をここに永久封印することを考える。プライバシーは尊重せねばならん。


『こうやって実体化してサポートすることは出来ますが、戦闘に関してはあまり期待しないでください。』

「精霊なのに?」

『はい。補助特化で作られたので。そろそろ魔力の無駄なので腕輪に戻りますね。』

「…もしかして俺の魔力使ってる?」

『(えぇ。主なんですからそれぐらい我慢してください。)』


 実体化って魔力要るんだ。術式使ってるしそりゃそうか。魔法使わないからまぁいいけど。補助特化で戦闘面が強くなくて良かった。人生がヌルゲーだとつまらないからな。最低限のスリルは欲しい。

 まあ、それはそれとして。


「この遺跡ってどうなってるんだ?毎回構造が変わってるらしいんだが。」

『(はい。研究者は、この不思議な遺跡を都合がいいと思い、ここで研究を始めたそうです。)』

「へぇ。お前でも原理はわからないんだな。」

『(申し訳有りません。ここは私でも地図化出来ません)』


 研究者がここを作ったとばかり思っていたが、違うのか。


「地図は来るときに作ったし、そのとおりに帰っていくか。」

『(わかりました。)』


 正直、構造が変わってるならこの地図も意味ないんだよな…

 永遠にさまようことになったらどうしよう。


……

………


「そういやお前の名前って、人工精霊-06なんだろ?」

『(えぇ。名乗りましたっけ?)』

「…ナノッタヨ。」

『(…白々しいですね。)』


 説明するのも面倒だ。

 見えないものがあるってことを納得してもらうのも労力を使うしな。


「毎回そう呼ぶのも面倒だからな、他の名前とか無いのか?」

『(…前回の主は私のことを『エル』と呼んでいました)』

「そうか。ならそのままでいいか。」

『(横着者ですね。)』

「なんか言ったか?」

『(いえ。)』


……

………


 特に何事もなく扉の前についた。地図がなかったら迷っていただろうな。

 構造の変化は扉の開けしめごとに起こるのかもしれない。そのうちパターンとかも解明されるのかもしれないな。


「よし、出るか。」


 扉を開いた先に変な人達いるんだけど。見たところ冒険者か?あんまり強そうな雰囲気は感じないな。俺と同じギルドの調査依頼を受けた人達か?

 それにしては若干高圧的な感じがある。


「おい、ここで手に入れたものすべて渡しやがれ。」

『(盗賊でしょうか)』

「(見りゃわかる。)」


 …はぁ、面倒だ。

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