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イルカさんのエイプリルフール

エイプリルフールにぎりぎり間に合ったと思いたい……

 

「エイプリルフールだぁ!」


 元気に叫んだ僕は、コバくんを引き連れ街に出た。

 コバくんはエイプリルフールを春の自然感謝祭だと思っているので、道すがら花を植えたり掃除をしたり環境保全活動みたいなことをしている。


 平和すぎる嘘をついたなと後悔したので、途中から別のイタズラ仲間たちにインクをばらまき合う日だと言ってみた。


 え? 

 エイプリルフールは嘘を1回だけつける日だって?

 僕は午前中は嘘つき放題の方のルールを適用しているので、昼まで大騒ぎする気だ。


 そしてコバくんに対する言い訳と後々やらされるであろう片付けのために、インクは環境に良い着色料ゼロ%のほぼ水。

 水じゃあそれはもはやインクとは呼べないのではないかと思うかもしれないが、そこは心配ない。


 魔法で色をつけてある。

 魔法を使うエネルギー源である魔素を分解すればただの水に戻る。片付けが楽になる良い案。

 魔素の分解は僕みたいな中途半端な魔法使いではうまくできない高度な技術が必要だ。


 いくら魔道具で魔素量を底上げされているとはいえ、扱う能力は以前のままの僕は、魔族な上に魔王の幹部のエリートな仲間たちには到底及ばないのだ。


 だがしかし、これでは僕が片付けができない。

 他の人に頼るだけなどとクジラにバレたらモップ渡されて1人でやってねと言われる。

 僕でも魔素分解ができるような道具を探してこよう。

 今から作るには時間と材料と僕の才能が足りない。


 ブツは意外と近くにあった。

 かなり前に、ダンジョンで魔物たちからもらった貢物の中にちょうど良い布があった。

 擦った場所の魔素分解ができるよくわからない布だったので、宝物庫にも入れずにタンスに仕舞い込んであった。


 切って使えば平凡な魔物たるイタズラ仲間にも魔素分解で掃除を手伝ってもらえる。これは頼りきりじゃないし、そもそも仲間たちもイタズラをしているからクジラには怒られない筈だ。



 準備万端で、インクの叩きつけ合い合戦が始まった。

 赤色(目玉焼き醤油派閥)チームと青色(塩派閥)チームと黄色(その他派閥)チームに分かれた。

 僕は言わずもがな赤。醤油が好き。塩でもいいけど、どちらかというと醤油。


 ちなみに目玉焼きって言ったら、卵の方を想像していたのだけど、ここは魔王様のお膝元なので、モノホンの目玉を炙った目玉焼きと勘違いされた。そしてグリルされた目玉はポピュラーな食べ物だったようで、付け合わせや調味料に差が出たようだった。

 目玉に醤油とか、塩とか、調味料をかけて食べるのもどうかと思うが、……魔族や魔物だから仕方ないのかもしれない。


 過激派たちは、開戦当初から(理解)(でき)(ない者)同士で戦争している。

 水鉄砲はガトリングに改造され、大きなバケツを五つ抱えた巨人が全力でインクをばら撒いている。

 前線ではもはやインクが凶器のような鋭さで、凍らせて殺傷能力を付けるものまで出ているので、穏健派は、隅っこで子供のようにぱちゃぱちゃ掛け合いして遊んでいる。


 前線で巻き込まれても自業自得にされてしまうので、自己防衛しながら楽しみたい子達には穏健派をお勧めする。


 コバくんは塩過激派だったので、前線で啖呵切って攻撃を仕掛けているのが遠目に見えた。

 僕は醤油穏健派なのでコウモリの魔物や魔族の子供たちと安全地帯でインクの掛けっこをしている。たまに、前線にちょっかいをかけている。


 大騒ぎになって早々にクジラたちが捕縛道具持って駆けてきたのだけど、内容を聞いて、参加した。

 幹部が揃って仲間割れ(派閥割れ)して、大騒ぎが激化する。


 幹部の内訳は、醤油2、塩3、その他3であった。


 タチウオ(脳筋)タツノオトシゴ(軟派野郎)こちらの味方(醤油派閥)だった。タチウオはともかくタツノ君は戦力になるのか不安だ。

 案の定、醤油穏健派だったタツノくんは、敵派閥の美女を避けながら水鉄砲で狙撃している。



 塩派閥はカルガモちゃんとクラゲ。後から聞いたが、カメも塩派閥。ただし、研究で忙しいカメは魔王城内に引きこもっている。何もしない(その他)派閥のウニも同じくだった。


 割とガチめの喧嘩をクラゲと繰り広げている我が養父(クジラ)は、ケチャップ(その他)過激派。


 アシカもソース派閥だ。彼自身は穏健派だったのだが、ソース過激派の魔王(ボス)がいたので、前線で過激派とともに戦っている。


「王道は醤油だろ!」「いや、塩だ!」「魔王様がついているソースが一番!」「何言ってるんだ、ケチャップだ!」


 魔王軍が、目玉焼きで仲間割れって、すごいパワーワードだなと思いながら、穏健派たちとぼんやり遊ぶ。


 たまに過激派の流れ弾が子供にも飛んでくるので、そういう時は、死人を出す気かと怒鳴り込みに行く。

 水鉄砲を改良した狂気の銃火器だけでなく、スプリンクラー型の水撒き機(地面が抉れる威力)や、インクと火薬が絶妙なコラボレーションを果たした爆弾が爆発する戦争地帯に、これは片付けが出来ないだろうなと、呆れた目になる。


 事の発端は僕だけども、僕は片付けができる範囲で加減していた。ここまで大騒ぎになってしまったら、片付けは他のみんなもやるしか無くなるだろう。


 僕はある程度の人数の幹部や大人が止めに入ってくると思っていたので、もはやこれは午前中どころか今日中に決着が着くかどうか怪しい。せめて明日には落ち着いていて欲しい。


 魔王が参加してきた時点で僕はもう諦めている。仕事のストレス発散に繋がっているのだろうと、前向きに捉えたい。


 ストッパーがいない無法地帯。


 今日はもう、国全体で休日だろうな……。



「エイプリルフールって何だっけ……」



 後日、僕は怒られた。拳骨で済んだのは、ストレス発散になったからだろうか。

 国を挙げて魔素分解でインクの片付けをしたり壊れたものの片付けをして、5日間程、国は休日になった。後々の皺寄せでかなり酷い目にあった。


 来年のエイプリルフールは、もっとどんちゃん騒ぎな宴とか肉祭りみたいな美味しいものパラダイスとかにしたい。

 こんな血湧き肉躍る戦闘合戦はもう懲り懲りだ。


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