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その2「光代の呪い」

当時、「新世紀エヴァンゲリオン」が社会現象まで巻き起こしてた頃、実は私はそれを視ていなかった。と言うより視られなかった。私が住んでいたところでは放送局が受信できなかったのだ。今でこそネットで動画を見るのも当たり前になったが、あの頃は、アンテナを調整してでもテレビで視られるようにするか、ビデオを買うかレンタルするか、さもなくば誰かにビデオでも録ってもらって見せてもらうしかなかった時代である。


当時病んでいた私は正直言って毎日死なないようにするだけで手一杯で、そんなことをする余裕がなかった。だからあれほど人気を博していたエヴァンゲリオンを見ていなかったのだ。そこが、躓きのそもそもの始まりだったのかも知れない。


世の中の盛り上がりを知らぬまま、何となくその時の勢いだけで書き上げたオリジナルの官能小説、原題「しきたり」を某マイナー系出版社に投稿したところ、全く期待もしてなかったのが図らずも採用されてしまったのであった。だがそれが、躓きの大きな要因になるとは、当時の私には知る由もなかったのだった。


その「しきたり」のメインヒロインであるところの「光代(みつよ)」が、当時私が殆どタイトルしか知らなかったエヴァンゲリオンの某ヒロインのイメージに丸被りしていたのである。少なくともそれを読んだ編集の人や、挿絵を描いてくださった漫画家さんは完全にそれをイメージしてると受け取ってしまったのであった。こうなるともう、自我境界線も曖昧だったあの頃の私はそれを否定する気力もなく、それを既定路線として受け入れてしまったのだが、それこそが最大の過ちだったかも知れない。


かくして超有名ヒロインのイメージを引きずった私の「光代(みつよ)」は、その強すぎるイメージに引っ張られて私をかき乱し、元々曖昧だった私の小説の方向性を完全に見失わせてしまったのである。無論それは、編集の人や漫画家さんの所為ではない。その誤解に乗ってしまった私がすべて悪いのだ。


が、運が良いのか悪いのか、私の「しきたり」はその号のアンケートでかなり評判が良かったそうで、正式に編集部側からの依頼として次作を依頼されたりしたのだった。


しかし、光代が某ヒロインをイメージしてたから評判が良かったのだと判断した私は、増刊号用の別名義で書いた小説のヒロインを、同じくエヴァンゲリオンのもう一人のヒロインをイメージして書いてしまったのである。さらには当時私が好きだった長谷川裕二氏の漫画「MAPS」の要素も取り入れるという、創作者としてはあるまじき暴挙に及んだことで、私の運命は決まったのだと思う。


「…愚かですね……」


「あんたバカでしょ、大マジで」


はっ!? お前たちは…!?


光代…と、えと…誰だっけ?


「はあ!? あんた自分が作ったキャラの名前も忘れたの!? 信じらんない!!」


光代、知ってる?


「…私は、承知していません…」


だよなあ。全く無関係の話だったもんな。そもそも舞台の時間軸も違うし。


「マジで私の宇宙船(ふね)で踏み潰すわよ、このロクデナシのゴクツブシが!」


相変わらず粗暴だな、お前。名前忘れたけど。まあいいや。アリシア(仮)で。でも、お前の宇宙船、壊れたままだよな。彼氏相手に馬鹿やって思いっきりこけて水没させて。私は直してないからそのままの筈だぞ。それでどうやって踏み潰すって?


「な・ん・た・る、屈辱! 絶対許さないからね、覚えてらっしゃい!」


って、捨て台詞で帰るのかよ。ベタな奴だな。で、光代は帰らないのか?


「…私は、貴方に作られたただのかりそめの存在です。創造主たる貴方の意向に従うだけです……」


お前はお前で相変わらずだな。だが、それこそが呪いか…。でもまあいいや。ところで御主人とはうまくいってるのか?


「…貴方が何もしないから、何も起こりません。それをうまくいってると言うのならそうでしょう……」


まあそりゃそうか。基本的にはお前と旦那との間には無駄に波風立てない方向で考えてたもんな。でもまあいいや。とにかく私はお前の呪縛からいまだに逃れられないってことが改めて確認できただけでも良しとするさ。悪いけど当分付き合ってもらうぞ。


「よしなに…」


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