その1「いやはや、あの頃は病んでいた」
20代半ば。多分、当時は人生で一番病んでたと思う。おおよそ自我というものが崩壊して、他人の顔色ばかり窺って、それでも何か形にしたいと思ってチャンスとあれば飛びついてた気がする。
でも、やっぱりそんなんじゃ上手くはいかないんだなあ。甘くない。
一応、マイナーとは言え投稿小説が商業誌に掲載されて、それから二本ほど仕事として小説を書かせてもらったりはしたけれど、今から思えば酷い出来だったと思う。よく掲載してもらえたものだと。と言うよりよく恥ずかしげもなくあれで原稿料を貰おうと思ったなと、自分でも悪い意味で感心する。
ただ、あの頃はそれが精一杯だったのも事実かも知れない。だから次に続かなかったというのもある。あれが当時の自分の実力だったということだ。
その後、後に奥さんとなる女性と出会って自我を取り戻して普通に会社に勤めて、それでも趣味としては小説を書きながらも結婚することになってそれも辞めて、子供が出来て親になって、子育ての方がずっと楽しくなってそれが趣味のようになって、小説に対する情熱はすっかり冷めていたんだよなあ。
なのに、2011年秋。日本中が未曽有の災害に打ちひしがれていた頃にひっそりと奥さんが癌で亡くなって子供を二人抱えて父子家庭になって、失ったものは大き過ぎたけど得たものはもっと大きくて、それから5年。上の子が高校に通うようになって手がかからなくなって、最近、ちょっと小説に対する気持ちが戻りかけてきていたりするアラフィフのオッサンが、リハビリも兼ねてただ思うままに文章を綴ってみようと思う。
私小説なのかただの日記なのかはたまた備忘録か、それは自分でもよく分からない。ただ、人生を80年とするならその半分を大きく過ぎた今、失ったものと得たものを具体的に形にしてみたいと思った。それがどうなるかは分からんけど、とにかく形に残したいと思ったんだよな。




