連帯責任
そしてリベリシュ城壁の検問を抜け、騎士団一行を乗せたカイブロスは、公営カイブロス乗り場の騎士団専用スペースに停められた。
いの一番に三馬鹿ブラットリーとカールが飛び出るように走り出して来た。『大砲の砲身にでも入れば良いのに、そうしたらもう一生顔見なくて済むのに』と後ろからついて来たサンディは思う。
リベリシュは二人の故郷である。ここにカールもいたら更にうるさくなり、出る前に切り飛ばされていたかもしれない。がカールがいない今、多少馬鹿騒ぎするのも許されるのかもしれない。いやそんな甘くはなかった。
「帰って来たぞ!‼︎」
「俺らの地元に!」
「チッ、うるさい黙れ!」
「「すみません……」」
「ちっと、こっちこいや」
二人の体が硬直する。いつまで経っても来ない馬鹿二人に痺れを切らし、自分から向かっていく。体格としては馬鹿二人の方がでかいのだが、心が負けてしまった。
バチッ!バヂッ!、ゴンッ!
「痛ッ!!痛い!、痛い!」
「イタっ!なんで俺だけ⁉︎」
ブラットリーは往復ビンタを喰らい地面に叩きつけたれクルクル転がっている。
一方のサムウェルは往復ビンタからの全力ゲンコツを喰らい頭頂部を押さえつけている。割れたのかもしれない。
「お前達少し黙れ迷惑だ。痛いのはお前らだけじゃない、私の心だって痛い。何故部下を殴らなければいけないのか、いつも考えてしまう。何故だと思う」
それは団長が短気だからですとは2人は言えなかった、仮に言っていたら2人の四つの目がもう2度と日の目を見ることはなかったと推測される。
「……わ、わかりません、」
「お前らがうるさいからだよ。」
ここまで団長が怒るのはつい先日ぶりである。砲撃部隊が任務を怠り、騎士団を危険に晒し投獄されていた。そういえばあの人たちどうなったんだろ……世の中知らない方がいいこともあるかもしれない。
「ワジルこいつらの手首にでも紐でも付けとけ、自由にしたらこいつら何を仕出かすが」
「縄の必要はないかと思いますよ、一応私とエリシアで見張っておきます前後……いや後ろからきっちり見ときます。」
「今の間はなんだ?」
「いえ、エリシア殿を前にしたらこいつら何を仕出かすかと思いまして、言葉にはしなくても気持ち悪い視線を感じるのは誰だって嫌かと思いまして、」
ワジルが危惧するのはセクハラである。この2人なら言葉にすることはないと思うがずっとある一部分を凝視してエリシアに不快感、いや殺意を抱かせるだろう。そうなっては後処理が迷惑だ、やるなら誰もいない深夜の路地裏でやるべきだとサンディはいつかのために用に心のノートに書き留める。その時は案外早く来るのかもしれない。
「そうだな、たとえ後ろを歩かせてもなにを仕出かすかだな」
「信用ないっすね〜」
団長は額を抑える。この態度が団長や団員その他大勢の信頼を失うのである。
「ワジルやっぱりこいつらの手繋いどけ、それとギアラいるか!」
「はい!団長今行きます」
リベリシュてスカウトされ陛下騎士団したギアラはこの短期間でちゃんと調教された。急いでカイブロスから出て来て慣れたように団長の前で『ただいま来ました!』と胡散臭い事をしている。
「何故うちの団員はこんな奴らばっかなんだ……それやめろ普通にしてろ」
「団長なんでしょうか」
打って変わってフランクになったギアラであった。
「ワジルと一緒に、この三馬鹿の手のひらに穴をあけ、ロープで括り付けておけ。」
「しかし団長、手のひらに穴を開ける道具は持って来ていません」
「剣があるだろう。片手ぐらいなくなったて問題ない。」
「わかりました」
ギアラは営業スマイルで団長の指示を受け付けるがその後ろで手のひらに穴が開く予定の2人は顔を青ざめている。自分の手のひらを見て最後の別れを惜しむ。
「はぁ、お前達いい加減大人になれ、お前達、裏じゃビックベイビーって呼ばれてるぞ」
そんなバカな2人を諭すようにワジルが優しい声音を発する。
直轄騎士団内上層部、では三馬鹿の矯正に本腰を入れようと検討がされている。
●
「さて、伝書魔法が届いて、ミーシャはすでに退院したそうよ、怪我も深くなくてすぐ治るみたい……心、以外わね」
一度傷つけられた心は2度と修復できない。よく、心の傷は時が治してくれるなどとと甘い言葉をかけられるが、それは全て、嘘である。たとえ表面は大丈夫そうに見えても深部は破壊されたまま、一生治ることはない。
「……そうですな、しかしミーシャが生きてると領主に知られたらまた命を狙われるかも知れません。」
「そう、だからこそ、私こう考えた、ミーシャを将希のところに避難させようと思うの、どう?」
「将希殿ところつまり王城ですか、比較的安全だと思いますけど・・ついこの間安全神話も破られましたからね」
「だけどここにいるより安全だと思う、人質にされたら困るし」
「久しぶりに親子の時間を過ごせますな〜、高級街にショッピングでも行きますかさてどこに行きましょうか」
いつもは内面に押し込み絶対に他人に見せない感情を露わにして想像の世界のミーシャと共にすでに買い物に出掛けている。
「ワジル、それ嫌われる奴だよ、やめた方がいいよ」
「ミーシャがそんなこと言うとは思いません!」
「そ、そう、怒るところが少し違うような気がするけれど……」
少しどころかかなり論点が違うと思うのだがサンディはそれ以上口を開くことはなかった。
「さて、行くよ!罪人も連れてきて。」
ギラアに視線を送り、サンディが歩き出そうとするとその傍を大柄な影が通り過ぎる。
「ワジル?」
「早く行きましょう!」
「なんか釈然としないわね」
早く行こうと言うのはサンディも賛成なのだが、何か詰まるような気がする。
ワジルがスタスタ走るように急いで歩いているおかげがサンディたちのスピードも上がり思っていたより早くミーシャの店に着いた。
「俺たちを置いて行かないでくださいよ。はあはあ。ただでさえ荷物が五月蝿いのに」
手に穴空いた2人を連れて歩いてきたギアラであった。
何かあったのだろうか?サンディは知らないふりをする。
「なんで遅れてるの?」
「三馬鹿ですよ!」
「あ〜ぁいたね。忘れてた」
「こいつらどうします?。あそこに杭があるので縛りつけますか?」
ギアラが指し示す先には馬用の杭が設置されている。
「うん、それでいいわ。縛り付けてきて。」
「はぁ、わかりました」
仕事が増えたがこの2人から解放されることを天秤にかけ、磔に行った。
その時も3人は逃げようとしていたが……君たちの勇姿は忘れないだろう。
いやすぐにでも忘れたい。




