第二十一話 鈍感男と這い寄る蜘蛛
頑張れ!日幡 優美子!
鈍感な白神にも負けず、シスコンの実兄にも負けずに、作品内の華となって下さい!
私が意地悪な展開にしているだけだけどね。(笑)
ガラッ!ガラララッ!ガラガラッ!
「急患です!」
看護師が慌ただしく院内を移動する。
その手には移動用のベッド、それに急患を乗せて、大急ぎで診察室に運び込んだ。
「お……俺は……大丈夫なので……一緒に運び込まれた……日幡さんを……女性を……先に……」
「良いから!静かに寝てなさい!」
看護師の女性に押さえ付けられたのは、白神 英雄だ。
「うーん……聞いてたのと違って、骨折は無さそうな感じだね。でも、全身打撲かな?一応 全身のレントゲンを撮ってみて」
診察した医師が言う。
「はい。白神さん レントゲン室に移動しますよ」
先程の女性看護師が言う。
ちなみに、女性看護師の見た目は、二十代前半に見える。
胸を少しはだけている白神を見て、少し高揚している様に見える。
ここは岡山市内の病院だ。
白神達 マスカレイドに化身する四人が、急患として運び込まれた病院で、それぞれ診察や検査が行われている。
「白神君……」
白神は入院を嫌がったが、一日だけでもと入った病室に、日幡 優美子が様子を見に来た。
「日幡さん 日幡さんは動いて大丈夫なの?」
現れた優美子に問う白神。
「うん。私は全治一週間程度だから……」
と、優美子。
「そうなんだ?そんなに酷いケガじゃなくて良かったよ。お兄さんや警察官の片山さんはどうだったんだろう?」
そう他の二人も心配する白神。
「お兄ちゃんも全治一週間程度って話だったよ。片山さんはどうなんだろう?私も状況を聞けてないし会えてないや」
二人の知っている情報を伝える優美子。
「そうなんだ……お兄さんもケガが酷くなくて良かったね……」
そう伝える白神。
「白神さんは……ここよね?」
病室に神宝が現れた。
「あ、はい。ここです」
と、応える白神。
「良かった。はい。これね」
浄化の終わった【変化札】を白神に渡す神宝。
「ありがとうございます。後 退院は明日になりそうです」
そう残念そうに伝える白神。
「そうなんだ?残念ね…… そのダメージは、肉体的な部分より、魔の瘴気を大量に浴びたり、邪悪な攻撃を受けたからだから、神社に帰った方が、より回復しやすいのよね……」
と、淡々と伝える神宝。
「「えっ?」」
思わず同時に声を漏らす白神と優美子。
「マジですか!?それなら今日 退院したい!」
と、嘆く白神。
「我慢するしか無いよね……」
と、苦笑いの神宝。
「じゃあ……お兄ちゃんや片山さんも、回復するまで神社で過ごした方が良いですよね……」
そう冷静に話す優美子。
「それが良いと思うよ」
と、神宝。
「じゃあ……お兄ちゃんに伝えなきゃ…… ちょっと言ってきます」
そう言って白神の病室を出る優美子。
「あ、はい」
と、白神。
「それなら私は片山さんを探して神社に居た方が回復が早いのを伝えるね」
と、白神に伝えて病室を出る神宝。
「いってらっしゃい」
と、応じる白神。
その頃 白神達を軽く全滅させたサルヴァは、ニトリの岡山奥田店の辺りで、適性者を探していた。
「なかなか高い適性者がおらんな……」
鬼達に任せ切りだった頃よりは、遥かに成果が出ているが、それでも魔器程度の適性者ばかりの状況に、嫌気が差しているサルヴァ。
「魔神帯の適性者とまでは言わないが、魔人帯の適性者位までは、そろそろ見付かって欲しいものよ……」
ポツリとボヤくサルヴァ。
「離せや!誰か!?助けてくれぇーっ!」
ボヤいていたサルヴァの下に、鬼が一人の男を連れて来た。
「適性者か?ほう?魔獣の【変化札】にまで耐えられそうじゃな……」
そう言いながら、【化身帯】と一枚の【変化札】を取り出すサルヴァ。
「なっ!?何をする!?」
そう困惑する男に【化身帯】を巻くサルヴァ。
「それ、化身せよ」
そう言いながら男の【化身帯】に【変化札】を挿し込むサルヴァ。
「うがぁーーーーーーーーーーーーっ!」
そう叫び声を上げると、その姿を蜘蛛の様に変える男。
「儂は一度 戻るから、お前は鬼達と適性者狩りをするのじゃ」
そう蜘蛛怪人に命令するサルヴァ。
「ただいま。お兄ちゃんに伝えてきたよ」
と、白神の病室に優美子が帰ってきた。
「あ、お帰り。どうでした?」
そう問い掛ける白神。
「早く治したいから直ぐに神社に向かうそうです」
そう答える優美子。
「そうですか?俺は看護師さんに相談したんですが、退院の許可が出ませんでした……」
と、泣きそうな顔の白神。
「あらら…… あれ?神宝さんは?」
と、残念そうな顔をした後、さっきまで居た神宝が居ない事に気が付く優美子。
「あ、片山さんに神社の方が回復が早くなる事を伝えに行きました」
そう状況を説明する白神。
「そうなんですね…… あの……」
凄く悩んでいる顔の優美子。
「はい?」
その顔を見て不思議そうに応える白神。
「鬼や怪人と戦っている時に、私が言った言葉だけど……」
と、顔を真っ赤にしながら話す優美子。
「はい。日幡さん 本当に強かったです」
そう応じる白神。
「ありがとう!・・・ じゃなくて!ほら!あの女の魔族が居なくなってから、私が一人で戦ってた時に言った言葉よ!」
と、更に顔を真っ赤にして、少し怒り加減に言う優美子。
「ああ……あの……女の魔族が去った後の……」
と、白神。
「そうそう!その時に言った!」
優美子の顔は、もう茹で上がったタコかと言う程に、もう【茹でタコ怪人】と言われても違和感が無い程に、顔を真っ赤にしながら話している。
「えっと…… ごめん……あの頃 ダメージで意識が朦朧としていて……日幡さんの言葉が……よく聴こえてなくて……」
と、凄く申し訳無さそうな顔で謝罪する白神。
「えっ!?そうなの!?」
少し声が裏返り気味に応える優美子。
「うん。何て言ってたか、今 教えて欲しい。ごめんね……」
そう謝りながら聞く白神。
「えっ!?今!?えっ!?ここで?今?えーーーっ!?」
真っ赤な顔で大混乱の優美子。
「ただいま。片山さんに伝えてきたよ」
そこに神宝が戻ってきた。
「あ……お邪魔だったかな?」
と、神宝。
「あ、いえっ!?だっ!?大丈夫です!」
まだ混乱しながら答える優美子。
「はい。大丈夫ですよ。どうでした?片山さん」
そう答える白神。
「片山さんは全治一週間だそうよ。それで、神社で過ごすと回復が早くなる事を伝えたら、直ぐに向かって行ったわ」
そう伝える神宝。
「そうなんですね。俺は看護師さんに退院の相談をしたら却下されました」
と、白神。
「それじゃ明日だね」
と、ため息を吐きながら応える神宝。
「はい…… あ、日幡さんはどうしますか?」
と、神宝に応えて優美子に聞く白神。
「わっ!?私!? 私は……白神君を看病してようかな……」
そう顔をまた赤く染めて言う優美子。
「えっ?俺 もう大丈夫ですよ。退院したい位ですから」
さらりとそう答える白神。
「えっ?そっ?そうなの?………」
悲しそうな優美子。
ガンッ!
「ちっ!」
と、白神の寝ているベッドを軽く蹴って、舌を鳴らして呆れる神宝。
「えっ?どうしました!?俺 何か怒られる事をしましたか!?」
動揺して確認する白神。
「何でも無いわよ。この鈍感!」
明らかに怒っている神宝。
「は、はぁ……」
何で怒られているか解らない白神。
「神宝さん ありがとう…… それじゃ白神君は看病が要らないみたいだし、神宝さんと神社に戻ろうかな……」
と、残念そうに言う優美子。
「そうね。二人で戻りましょう」
優美子に同意する神宝。
「「ねぇ〜 仲良く二人で帰りましょう」」
白神を睨みながら言う二人。
そう言って白神の病室を去る二人。
そして、ポツンと一人残される白神。
女心の解らない男は、虚しく病院の天井を見ながら、独り淋しく寝て過ごすのだった。
初の魔獣の【変化札】での怪人登場です。
蜘蛛の怪人にしたのは、某漫画作品への敬意を込めてです。
あの先生の作品は、特撮ヒーローの原作物以外も好きだったなぁ……
作中で、マスカレイドに化身する四人の肉体的なダメージが少ないのは、怪人になっていた人が、破邪により人間に戻った時に、肉体的なダメージがほとんど無いのと似た(全く同じ理由では無い)話です。
肉体的なダメージは、化身による霊的加護(防御)で、ほとんど無い状態ですが、邪悪な力によるダメージが蓄積するって事です。
怪人の破邪による人間への回帰は、霊的攻撃による邪悪の排除なので、肉体的なダメージが少ないです。
その際に、邪悪な力の源となっている【変化帯】は破壊されます。




