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襲撃者とその呪《のろ》い

 目的のものを手に入れてナナキ達は早々にその場を後にした。当然のように帰りもざる警備で、もう素直に感謝しておくことにした。そして、今度は街の外に来ていた。


 あの襲撃者の目的や素性を探る上で、手がかりとなると考えられるものとして挙げられるのが先ほど手に入れた封印術の媒体である。理由としては単純に聖霊や聖霊域を排除したいならことで手に入るもの、手に入れる価値のあるものがそれ以外思いつかないからである。


 聖霊を利用もしくは消滅させることを目的としているのなら話は違ってくるが、それをするのなら直接どうこうするより方陣を利用すればいい話なので選択肢から除いていいだろう。


 封印術の媒体を何に使うのかはその構造を調べないとわからないが、調べればいろいろと分かることも多いだろう。それについてはスキアーの同じように考えていることであろう。

 そしてもうひとつの手がかりがこの森の中にあるとナナキは考えている。


 2週間前の魔物の討伐。同じ時期に始まったスキアーの異変。そして今回の件。ナナキはそれらを繋ぐあるひとつの答えを確かめるために大空洞の周辺を探索していた。


『嫌な気配には変わりないが、昨日までよりはかなり薄い。残りカスのようじゃの』


「根源がどこにあるか分かるか?後それ1つじゃないよな?」


 ナナキがそう尋ねるとスキアーはふと動きを止める。そして視線を少し先に向けた。


『すぐそこに1つ・・・あと他に大空洞を囲うように3つあるの』

 

 それを聞いてナナキは地面をランプで照らす。そして何かを探すような仕草で地面を注意深く見ながら歩いた。しばらくそうしていると地面が何かを掘り起こしたような跡を見付けた。気配などはわからないナナキでも異変を感じる。何かが腐ったような匂いを放つそれをランプで照らす。


「ここか?」


『そうじゃ。昨日まではこの身が歪みほどの力を放っておった。それもルーナ村におったわらわの力を狂わせるほどに及ぶほどの力を。一体ここに何があったというのじゃ?』


 スキアーはまったく分からないと言った様子で訝しげにそう尋ねた。

 ナナキは顔をしかめた。大変気分が悪い。それは別にスキアーが悪いわけではなく自分が出した結論が、色々な意味で最悪だからだ。

 ナナキは重い気分で話始めた。


「方陣の中でも禁異とされているものがあったらしい。これはまじないでなく、のろいに分類されていた。こことあと3箇所に埋まっていたのがその寄り代だったら今回の件は色々と辻褄が合う」


『どういった効果のある方陣なのじゃ?』


「魔物に介する特殊なものだ。四方を水晶の杖で囲むのは他の方陣と同様だがこれはそれだけじゃない。水晶を打ち込む前に魔物の死体を埋めるそしてその水晶もその死体に突き刺さるように深く突き立てる。そして、その方陣の範囲内で誰かが血を流すとする。そうするとその人間は異形のものへと成り果てる。相当エグい代物だ。これについての記述にはこうあった。“魔人創造”と」


 これはナナキが兵士達を見たときからずっと頭の中にあった考えである。言わなかったのは憶測で口にするにはばかれるからだ内容であり、話す余裕もなかったからだ。聖水を使ったのもひとえにそれがあったからであり、聖水が効いた事はナナキのその考えを裏付ける要因の一つとなったのである。

 ナナキのその言葉にスキアーの表情がひどく硬質なものに変わった。その視線はひどく冷たい。


『そなたの言う通りそのような方陣が展開されていたのならば納得がいく。まさかあれが人の手で再び生み出されようとはな』


「やっぱりあれは〈破滅の魔人〉と同じものなのか?」


『力は劣るが纏う気配は同じものじゃ』


 聖霊たちが負の感情を表すところをナナキは見たことがない。本質的におおらかで表面上そう装うことはあってもそれを人にぶつけたりはしない。なので、これほどまではっきりとした悪意をあらわすのは表すのは珍しい。“魔人”とは聖霊にとってそれだけの存在のようだ。


「そういえば、スキアーはコウエンさん、いや最後に会った黒い鎧の兵士以外には攻撃しようとしなかったけどあれも魔人じゃなかったのか?」


『ふむ、どの個体も人と違う気配を宿しておったがあれらは違う。じゃが、どちらにしろ、あれらは世界にあるべきではない』


「兎に角ここにその方陣があって“魔人”を生んだことには違いないってことか。随分手の込んだことやらかしてくれるじゃないか」


 ナナキの声に怒りがはらむ。その様子を見つめるスキアーが不意に疑問を投げかけた。


『もしや、そなたはこれを展開した人間に心当たりがあるのか?』


「あるといえばある。だが誰かといわれると全く分からない」


『どういうことじゃ?』


 既に先ほどまでの冷たい表情は消え、首をかしげているスキアーに、ナナキは一息吐いてから言葉を紡いだ。


「“魔人創造”については禁異目録という本に書かれていたものなんだ。禁異目録はその名の通り禁異とされた術、呪い、場所などが記されている。これは普段は人の目に触れることがないようにある場所に厳重に保安されていたんだ。だが、1年前にそれは盗まれた」


『盗まれた?』


「そう。しかも誰にも危害を加えず、鍵すらも壊すことなくな。だから、無くなっていることに気がついたのは大分後だ。流石に内容が内容だけに、大勢に知らせて探させることはできないから、ここ半年ほど少人数でいろいろと探し回っていたんだ。盗んだからには何かしでかすと思っていたが、まさかよりにも寄ってこれを選ぶとは思わなかったよ」


 魔人の創造などそれだけで常軌を逸しているのに、それを目的でなく手段としている時点で今回の襲撃者もしくはそれを指示した者は、普通の人間ではないのは明らかだろう。


『なるほどの。そなたはそれを探していたということか』


「まぁ、そうだな。それも目的の一つだった。とりあえず相手の目的は分からないが、聖霊や聖霊域を標的にしていることはわかった。とにかく、そいつを捕獲しないとな」


『ふむ、捕獲か。それが人であればわらわ達も協力するかもしれんが、あれと同じものが来たら全力で排除するぞ』


 スキアーの目には物騒な光が宿る。


「まぁ、全力にならざるおえない済まないかもしれないのは確かだな」


 今回の出来事で考えれば、捕獲するために手加減などして最悪の事態になるよりは消滅させたほうがずっといいだろう。


『今回のことは、他の聖霊達も気づいておろう。各々対処するじゃろう』


「こっちも二の舞にならないようにするよ」


 現状について嘆くことなくあっさりとした様子のスキアーにナナキは苦笑した。


『これらはライラ達には話すのか?』


「まぁ、必要範囲内だけは説明しないとならないだろうな。ちょっとすぐには里に送るより先に行かなきゃならないところができたから」


 アシュレイたちには悪いが、封印術の寄り代を調べることのほうが急を要する。


『ふむ、そうか。まぁ仕方のないことじゃの。して、そなたの研究室とやらはどこにあるのじゃ?』


 スキアーの問いにナナキは少し間を置いてこう告げた。


「学術都市〈セロウ・スプリウス〉。俺の第二の故郷だ」


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