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黒猫年代記  作者: @12
第一部 RAVEN ― 黒猫が戦場に立つまで ― Season 1 #01~Season 3 #037
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Season 1「誕生」 #01

お久しぶりです、アイニです。今回はChatGPTの力を借りて、初めてAI小説を描きます。


アイデア自体は作者のものなので、ご安心を。


一応、世界観としましては、ストレンジリアルを重視しております


そのため、若干のリアル世界と同じところが出るかもしれませんが、皆様の暖かい目で見守っててください

第1話「雪(ゆき)の日の産声(うぶごえ)」

 帝政歴三二七年十一月二十五日。

 帝国北部には、夜明け前から雪が降っていた。

 窓枠に触れた雪は室内の暖気に溶かされ、細い水滴となって硝子を伝っていく。遠くに見える街並みは白く霞み、石造りの屋根にも、まだ人通りの少ない道路にも、昨夜から降り積もった雪が厚く残っていた。帝国軍の駐屯地へ続く街道だけは早朝から除雪が始まっており、時折聞こえる車両の低い駆動音が、静かな冬の街へ響いていた。

 その音を、ヴァルター・クロウは病院の廊下で聞いていた。

 黒い髪の間から伸びた猫耳が、車両の音が遠ざかるのを追って僅かに動く。だが彼の視線は窓の外ではなく、廊下の先にある扉へ向けられたままだった。

 扉の向こうには妻がいる。

 セレナ・クロウ。

 白い髪と白い猫耳を持つ、ヴァルターとは対照的な女性だった。

 普段の彼なら、待つことは苦にならない。軍人として身につけた忍耐は、命令が下るまで数時間でも同じ場所に立ち続けることを可能にしていたし、教官として若い兵士たちを相手にしている時など、同じ動作を何度やり直させても声を荒らげないことさえあった。

 だが、この朝だけは違った。

 廊下を一往復して窓際へ戻り、しばらくするとまた扉の前へ向かう。軍靴ではない柔らかな靴底が床を踏むたび、黒い尾が落ち着かなさそうに揺れていた。

「クロウさん」

 看護師に呼ばれ、ヴァルターは反射的に背筋を伸ばした。

「はい」

「もう少しかかりそうです。奥様は頑張っておられますから、こちらでお待ちください」

「……分かりました」

 返事だけなら軍務中と変わらない。

 看護師が戻っていくと、ヴァルターは数秒その場に立ち尽くし、それから長椅子へ腰を下ろした。

 両手を組む。

 ほどく。

 もう一度組む。

 自分でも落ち着きがないことは分かっていた。

「待つしかない、か」

 誰に聞かせるでもなく呟く。

 戦場なら、何かできる。

 部下が危険なら命令を出せる。道が塞がれているなら別の経路を探せる。装備が壊れれば応急の対応を考え、敵が現れれば戦うこともできる。

 だが、今は何もできない。

 扉の向こうで苦しんでいる妻の代わりになることも、生まれてくる子供を急かすこともできなかった。

 それが、ひどくもどかしかった。

 時間が経つにつれ、病院の外は少しずつ明るくなった。

 雪は止まない。

 窓の向こうを白い粒が斜めに流れていく。

 ヴァルターは立ち上がり、また窓辺へ歩いた。

 もう何度目なのか数えていない。

 硝子越しの冷気へ手を触れようとした時だった。

 扉の向こうから声が聞こえた。

 セレナの声。

 続いて、医師たちの短いやり取り。

 ヴァルターの黒い猫耳が真っ直ぐ扉へ向いた。

 足が動く。

 しかし、扉の前まで来たところで止まった。

 入っていいとは言われていない。

 軍務なら、命令なしに境界を越えない程度の判断はできる。けれど、今の自分がその程度の理性を保つために意識しなければならないことが、ヴァルターには少し可笑しかった。

 そして。

 小さな声がした。

 最初は短かった。

 息を吸うような間があり、次の瞬間には、先ほどよりはっきりとした泣き声が扉の向こうから響いた。

 ヴァルターは動かなかった。

 いや、動けなかった。

 黒い猫耳だけが、その声を逃すまいと前を向いている。

「……生まれた?」

 誰も答えていないのに、口から言葉が漏れた。

 再び産声が聞こえる。

 力強い。

 小さな身体のどこにこれほどの声を出す力があるのかと思うほど、まっすぐな声だった。

 扉が開いた。

「クロウさん」

 先ほどの看護師だった。

「おめでとうございます。男の子です」

 ヴァルターは返事をしなかった。

 看護師が一瞬不思議そうな顔をする。

「あの……クロウさん?」

「……ああ」

 ようやく声が出た。

「はい」

 その返事がおかしかったのか、看護師が少し笑う。

「奥様も赤ちゃんも無事です。もう少ししたら入れますよ」

「セレナは?」

「お疲れですが、大丈夫です」

 その一言で、ヴァルターの肩から力が抜けた。

 自分がどれほど身体を強張らせていたのか、その時になって初めて気づいた。

「そうですか」

 息を吐く。

「……よかった」

 戦場から帰還した時でさえ、これほど深く息を吐いた記憶はなかった。

 やがて入室を許されると、ヴァルターはいつもの歩幅よりずっと小さな足取りで部屋へ入った。

 白い寝台にセレナが横たわっている。

 白い猫耳は疲労のため少し伏せられていたが、ヴァルターの姿を見つけると、彼女は弱々しくも穏やかに笑った。

「遅かったですね」

「俺が?」

「廊下を何往復していたんです?」

 ヴァルターの足が止まる。

「聞こえてたのか」

「猫の耳を何だと思っているんですか」

「……すまない」

「謝ることではありません」

 セレナの隣には、小さな寝台が置かれていた。

 ヴァルターはそちらを見る。

 それだけで、また足が止まった。

 毛布に包まれた赤ん坊がいる。

 黒い髪。

 まだ小さく柔らかな黒い猫耳。

 その耳が、室内の声に反応するように微かに動いている。

「抱いてみますか?」

 セレナが尋ねた。

 ヴァルターは即答できなかった。

「俺が?」

「あなた以外に誰がいるんです」

「いや……」

 自分の手を見る。

 長年の訓練で硬くなった手だった。

 銃を握り、装備を扱い、時には若い兵士の肩を掴んで姿勢を直してきた手である。その手で、目の前にいる小さな命へ触れていいのか、一瞬本気で迷った。

 セレナは夫の表情を見て笑った。

「そんなに緊張しなくても壊れませんよ」

「そういう問題じゃない」

「では、どういう問題です?」

「……小さすぎる」

「赤ちゃんですから」

 看護師に支えられながら、ヴァルターは赤ん坊を受け取った。

 腕の中へ重みが移る。

 驚くほど軽い。

 それなのに、受け取った瞬間から腕全体が重くなったように感じた。

 落としてはいけない。

 強く抱きすぎてもいけない。

 頭を支える。

 呼吸を確かめる。

 身体が冷えていないか。

 毛布が顔へかかっていないか。

 ヴァルターの視線が忙しく動く。

「あなた」

 セレナが呼んだ。

「何だ」

「呼吸してください」

 ヴァルターは止めていた息を吐いた。

「……してる」

「今しました」

「見てたのか」

「ずっと見ていますよ」

 赤ん坊が僅かに顔を動かした。

 瞼がゆっくり開く。

 ヴァルターは息を呑んだ。

 まだ生まれたばかりで、視線が何を捉えているのかは分からない。

 それでも、その二つの瞳は同じ色ではなかった。

 一方には金色を思わせる色があり、もう一方は深い黒に近い。

「セレナ」

「ええ」

 妻も気づいていた。

「綺麗でしょう?」

「……ああ」

 ヴァルターはそれ以上の言葉を見つけられなかった。

 赤ん坊の黒い耳が、父親の声へ向くように僅かに動いた。

 その仕草を見た瞬間、ヴァルターの表情から軍人として身につけてきた硬さが消えた。

「聞こえたのか?」

「きっと」

「俺の声が?」

「そうかもしれません」

 ヴァルターは子供を見つめる。

 赤ん坊はもう目を閉じようとしていた。

「……レイブン」

 その名を口にした。

 セレナが静かに夫を見る。

「やっぱり、その名前にしますか?」

「ああ」

 ヴァルターは頷いた。

「レイブン・S・クロウ」

 まだ、その名に何かを背負わせるつもりはなかった。

 軍人になってほしいとも、強い者になってほしいとも思っていない。

 帝国のために戦えとも、父の背中を追えとも願ってはいなかった。

 ただ、生まれてきた。

 それだけで十分だった。

「レイブン」

 セレナも名前を呼んだ。

 その声に反応したのか、赤ん坊の耳がまた小さく動く。

 ヴァルターは思わず笑った。

「聞いてるな」

「あなたに似て、耳だけはいいのかもしれません」

「そこはお前も同じだろ」

「では、二人分ですね」

 窓の外では雪が降り続いていた。

 帝国と連邦共和国の間には、すでに長い緊張が横たわっている。軍人たちは国境の向こうを警戒し、各地の基地では日々訓練が続き、ヴァルター自身も軍務から離れて生きているわけではない。

 だが、この部屋にはまだ、その緊張は届いていなかった。

 ここにいるのは帝国軍人ではなく、一人の父親だった。

 セレナもまた、軍人の妻としてではなく、一人の母親として我が子を見つめている。

 レイブンは何も知らない。

 国境も、軍も、戦争も知らない。

 異界も、門も知らない。

 これから何を見るのかも、誰と出会うのかも、何を選ぶのかも、まだ誰にも決めることはできなかった。

 ヴァルターは赤ん坊をセレナの腕へ戻した。

「どうでした?」

「怖かった」

 セレナが目を丸くする。

「あなたがそんなことを言うんですね」

「落としたらどうする」

「落とさないでしょう?」

「分からないだろ」

「戦場ではあれだけ落ち着いているのに」

「戦場とは違う」

 ヴァルターは即答した。

「こいつは敵じゃないし、部下でもない」

「では?」

 彼はしばらく考えた。

 答えなど分かりきっているはずなのに、その言葉を口にするには妙な照れがあった。

「……息子だ」

 セレナが笑った。

「はい」

 その笑顔を見て、ヴァルターもようやく肩の力を抜いた。

 病室の窓辺まで歩き、外を見る。

 雪はまだ降っている。

 街を白く覆い、軍用道路も、民家の屋根も、木々も、同じ色へ変えていく。

「積もりそうだな」

「そうですね」

「帰る頃には大変かもしれない」

「その時は、あなたが荷物を持ってください」

「もちろんだ」

「全部ですよ」

「分かってる」

「レイブンも」

 ヴァルターが振り返る。

「それは荷物じゃないだろ」

「分かっています」

 セレナは楽しそうに笑った。

 腕の中では、レイブンが静かに眠っている。

 父と母の会話も、窓を打つ雪の音も、廊下を歩く人々の足音も、その小さな耳にはまだ意味を持たない。ただ、生まれたばかりの世界から届く音として、彼の周囲を満たしていた。

 ヴァルターは寝台のそばへ戻り、妻と息子を見た。

「セレナ」

「はい?」

「ありがとう」

 彼女は少し驚いた後、目を細めた。

「あなたも、お父さんになったんですよ」

「ああ」

 ヴァルターはもう一度、眠る息子を見る。

「そうらしい」

 セレナが小さく笑う。

 その声に重なるように、窓の外から朝を告げる鐘が聞こえた。

 帝政歴三二七年十一月二十五日。

 雪の降る朝。

 黒い髪と黒い猫耳、そして金色と黒の異なる瞳を持つ一人の男児が、クロウ家に生まれた。

 レイブン・S・クロウ。

 この時、彼を囲んでいたのは銃声でも命令でもなく、母の腕の温かさと、父の不器用な声、そして降り続く雪の静かな音だけだった。

後々、ルビや言い換えなどが入ります


また、突然の内容大幅変更などが連絡無しで行うかもしれないので、そこだけは、ご理解頂けると作者としても嬉しいです

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