表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された“ログ係”は、世界の裏設定を読めるようになりました  作者: トワイライト
第4章:真実 ――世界の正体編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/84

第46話:フィアの秘密

 世界の書が静かに脈動を続ける空間で、淡い光が天へ昇るように揺らめいていた。遺跡の奥底に広がるこの場は、外界の音も風も届かない。空間そのものが世界から切り離されたような静寂を持ち、書物の光だけが生命を宿していた。


 レインは深呼吸をひとつし、その光の前に立ち直った。胸の奥には、先ほど知った“世界終了まで残り3年”という重すぎる真実が沈んでいる。だが、今はその絶望の中に埋もれている時間はなかった。世界を救うために必要な情報を、確実に手に入れなければならない。


 視線を横へ向けると、フィアが静かに立っていた。銀髪が光を受けて揺れ、淡く透き通るような輝きを放っている。彼女の表情にはいつもの怯えは少なく、代わりにこの場と向き合うための覚悟が宿っていた。


「……レインさん……次は、何を……?」


 少し不安を含んだ声。それでも逃げる意思はない。


 レインは小さく頷き、彼女へ一歩近づく。そして、手をそっと差し出した。


「……フィア。

 君のことを……少し、確認したい」


 その言葉にフィアは瞬きをし、わずかに頬を染めた。


「……わたし……ですか……?」


「ああ。

 この世界の書を見て……気づいたんだ。

 勇者、魔王、過去の英雄たち……。

 全ての存在に“役割”があった。

 なら……君にも、何かがあるかもしれない」


 フィアの表情に緊張が走る。

 レインは彼女を安心させるように静かに微笑み、手のひらを天へ向けた。


《深層ログ閲覧》


 光が静かに揺れ、レインの視界に文字列が浮かび始める。

 フィアは不安げにレインの横顔を見つめながら、胸元に手を当てた。


【モノローグ/レイン】

 「……フィアのログ……

  何か……普通じゃない……」


 次の瞬間、視界に広がった文字列は、これまでどの人物とも違う“特別な輝き”を帯びていた。


 淡い光が線を描き、項目が静かに並んでいく。


 


《深層ログ閲覧》

【覚醒条件:進行中】

【特別フラグ:未来救済者候補】

【未来分岐】世界救済成功率:上昇条件未達成


 


 その文字は、他のどんなログよりも繊細で、光が波紋のように広がるたびに輝きが深まった。まるで、フィアという存在そのものがどこか“核”に近い位置にいると言わんばかりの表示だった。


 レインは息を呑む。

 胸が熱くなると同時に、冷たい衝撃が背中を駆け抜けた。


【モノローグ/レイン】

 「……この子……ただの少女じゃない……

  世界を救う……可能性を秘めている……!」


 一瞬だけ視界が揺れ、レインは思わずフィアの顔を見る。


 彼女は不安そうに眉を寄せていたが、同時にレインが読み取る情報へ恐る恐る期待を抱いているような、複雑な表情を浮かべていた。


「……あの……何か……ありましたか……?」


 震える声。

 しかし、その瞳は逃げていなかった。


 レインは胸へ手を当て、深く息を吸った。

 そして、ひとつひとつ、言葉を選ぶように口を開く。


「フィア……君は……“未来を救う可能性がある”って……

 ログに……そう出ている」


「……え……?」


 フィアの顔が驚きに染まる。

 小さく息をのみ、その肩が揺れた。


 彼女には自覚がないのだろう。

 だが、レインが目にしている文字列は、確かにそう語っている。


【覚醒条件:進行中】

【未来分岐】成功率上昇:未達成


 これはただの伴侶や同行者に付く項目ではない。

 世界に選ばれた存在――そう呼ぶのがふさわしいほどの意味を持っていた。


 フィアは胸元を押さえ、小さくつぶやく。


「……わたしが……世界を……?

 そんな……わたしなんて……」


「違う。

 “だからこそ”だ」


 レインは一歩前に出て、フィアの手をそっと包んだ。

 その手は冷たく震えていたが、確かな命の温度を持っていた。


【モノローグ/レイン】

 「……誰も知らない……

  誰も気づかない……

  俺が守る……この可能性を……!」


 胸の奥に、強い決意が宿る。

 フィアを守るという意思は、これまで旅の中で何度も芽生えていた。

 しかし今は違う。


 これはただの仲間としてではない。

 “世界の未来そのものを救うため”に――彼女を守らなければならない。


 フィアはレインの表情を見つめ、その瞳に込められた真剣さを読み取ったのか、ゆっくりと頷いた。


「……レインさんが……そう思うなら……

 わたし……がんばります……。

 怖いけど……でも……守られたいだけじゃ……嫌だから……」


 その言葉に、レインの胸が熱くなる。

 フィアの声は震えていたが、その中には確かな意志が込められていた。


 光の書が脈動し、新たな波紋が二人を包む。

 その波紋は未来分岐の表示へ淡い揺らぎを与え、まるでフィアの決意に応えるように光を強めた。


【未来分岐】世界救済成功率:微上昇(ログ反映中)


 レインはそれを見て目を見開く。


 彼女の“決意”が――世界そのものに影響を与えた。


 光の書は静かに揺れ、フィアの存在がただの旅の仲間ではなく、世界の根幹に関わる“鍵”であることを示し続けているようだった。


 レインはフィアの肩へ手を軽く置き、視線をそっと前へ向ける。


「……フィア。

 この先……もっと危険なことが待っている。

 だけど……君がいるなら……きっと道はある」


 フィアは小さく微笑み、瞳の奥に灯った光を揺らした。


「……一緒に、行きます」


 二人の間に流れた静かな呼吸は、確かな絆として空気へ溶け込んでいった。

 世界の書は淡く輝き、次なる未来へとページを開こうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ