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第16話

「はい……。ええ、異常なしでした。ご心配をお掛けして……いえいえ、とんでもない。こちらこそ。……はい。……はい。御免くださいませ」

 電話を切った麻美が、困ったように笑いながら真咲を振り返った。

「及川さんが心配してくださってるの。申し訳ないって。検査結果が異状なしだったって言ったら、やっと安心してくれたみたい」

 九月に入ってから。つまりは丞玖の田舎から戻って来てから、頻繁ひんぱんに起きるようになった眩暈を気にして、麻美は真咲に精密検査を受けさせた。聴力だけでなく、血液検査やMRI、心電図や脳波の検査まで。結果は異常なしではあったが、心因性のものかもしれないと言われて、麻美は肩を落としていた。

「とりあえず異常がなくて良かったわ。でも、お父さんは年末まで帰れないらしいの。ごめんね」

 麻美の顔色が悪いのが辛かった。相当心配をかけてしまったのだと思う。

「大丈夫だって言ったのに」

 迷惑を掛けたと思うと、申し訳なさから不機嫌になってしまう。それが余計に悔しくて、真咲は麻美と目を合わせられなかった。七月初めに倒れたことも結局バレてしまい、久しぶりに叱られてしまった。

「心配かけて、ごめんなさい」

 麻美に聞いてみたかった。亡くなった母のことを。どんな人だったのだろう。何故死んでしまったのだろう。けれど、言えなかった。麻美が悲しむような気がして、尋ねることは出来なかった。

 何故だか胸の奥に、また冷たい痛みを感じた。



──おいで

 か細い声が呼ぶ。

 四畳半の小さな和室。色()せて茶色くなったふすまには、白い花が染め抜かれていた。上の方にはまばらに、下の方には咲き乱れるように多くの白い花弁。舞い上がっているのか、降って来ているのか。懐かしさと怖さが混ざり合ったような不思議な感情が湧いた。

 障子しょうじの向こうから明かりが差していた。朝なのだろうか。

 だまされてはいけない。

 脳のどこかが警鐘けいしょうを鳴らした 朝だと思って障子を開けたら、そこは闇の底なのだ。そして、そこに居るのは……。

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