告白の真相②
「私は、他国との交流を深めていこうと思っている。貴公にはこれまでの交易のツテを使い他国との外交の窓口となり、外交親善大使として我が国の外交を先導してもらいたい」
王太子殿下から告げられたのは、私の予想を大きく上回る命令だった。国内で私に目を付けるのだとしたら、商会の影響力や造船または船団、航海術等の話だろうとアタリをつけていた。
以前旦那様とも話したが、この国は閉鎖的である。国のトップに近い旦那様でさえそうだ。商会の情報網でもそれは把握している。なので、まさか王太子殿下がそこまで先進的な考えを持っていたとは考えが及ばなかった。
「だが、君は伯爵であると同時に公爵夫人でまだまだ新婚でもある身の上だからな。諸外国を訪問しろとは言わない。各国に君の名を借りて書状を送ることからになるだろう。まずはこの国に他国から客人を呼べるようにしたい」
「殿下の中ではもう、明確な道筋が立てられているのですね」
「それがなければこんな話はしないさ。・・・だから、君に求婚しようと思っていたのは本当だ。王太子妃として一緒に外交をしてもらいたかったのだ」
なるほど、やっと合点がいった。先程の話は無関係ではなかったのだ。こちらの動揺を誘うとか交渉の一端というだけではなく、ちゃんと話が繋がっていた。殿下は自分が負けたと言ったが、本当に負けていたのはこちらだった。
「・・・あの、殿下。ご希望に添えずに申し訳ございませんでした」
「いや、いいさ。他にも手はあったしな」
「それでも。恐らく私はお応えできなかったと思います。過去に王族から乞われたことがなかったので伝わってはいなかったのでしょうけれど、マクワイア家には、この青い瞳を受け継ぐ者は王家に入ってはいけないという決まりがあるのです」
「・・・それは初耳だ。それなら、二年前に君に求婚していたらフラれて恥をかくところだったわけだ」
「も、申し訳ございません。理由については伝えられていないので不明なのですが、初代当主の手記が残されていまして、そこに明記されているのです」
決してデマカセを言っているわけでは、と言い訳を連ねようとする私を手で制して、殿下は小さく苦笑を零す。
「本当に気にしなくて良いんだ、そんなに恐縮しないでくれ。先日君がレオと一緒に現れるより前から、別の手は考えてある。すぐとはいかないだろうが、他国の姫との縁談が水面下で進んでいるんだ」
ーーそれはそれで爆弾発言です、殿下。
そんなお立場であんな発言しないでくださいと言いたかったが、何とか言葉を飲み込んだ。本当にとんでもない方だ。ここでのことがお相手に伝わったらどうするつもりだったんだ。いや、どうせこの方のことだから、その辺も抜かりはないのだろうけど。
気を取り直すために、こほんと小さく咳払いをし、ずっと気になっていたことを聞いてみることにする。
「ところで、この話、私の夫は知っているのですか?」
「求婚の話は話はしてあったが、興味が無さそうだったから覚えてはいないだろうな。外交の話なら勿論知っている。レオは私の腹心だからな」
「・・・そうですか。では、殿下。先程仰ったように私は公爵夫人でもありますので、独断では決め兼ねることではございますが、マクワイア伯爵としては慎んでお引き受けしようと思います」
殿下からの答えに少し安堵しつつも席を立ち、二歩程殿下に近付きドレスで出来うる範囲で臣下の礼をとって告げた。
「そうか。では、話し合った結果についてはレオから聞くことにしよう。連絡もレオを通すか手紙で伝える。・・・というわけで、もう疲れているだろう、迎えが来たから帰るといい」
「え?」
顔を上げると笑みを浮かべた殿下が、庭園の入口に顔を向けたのでつられるようにしてそちらを見ると、微かに不機嫌そうな顔をした旦那様が立っていた。




