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公爵様は見る目がない!  作者: 猫森まりも
第二部 夫婦、初心者から始めます
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薔薇の庭園での告白

ロイヤルローズの咲き乱れる庭園の一角。華奢ながら豪奢な脚の白いテーブルを2脚の椅子で挟んで、色とりどりの菓子を前にして傍目には優雅なティータイム。上質なアールグレイの香りと味を堪能して、ティーカップを中程まで戻したところで、視線を目の前の相手に向ける。

陽の光できらきらと輝く絹糸のような銀髪の、夢のような美貌の王子がそこにいる。夢見る少女であるならば、夢心地になることこの上ない状況だが、今日これまでにあったことを思えば、とてもそうはなれない。


アデラに続きデボラとの面会。特にデボラとの対話には精神をすり減らされた。彼女の異常な雰囲気に気圧されないようにと常に気を張っていたためだ。アデラはともかく、デボラに対しては減刑を願い出るつもりもなかったし、無理なことだと分かっていたので、始めから何でも良いから情報を引き出そうとだけ思っていた。母に関すること以外は概ね予想通りだったが、まだまだ年若い小娘だからか、経験が足りないためか。これまで異常者と言われるような相手と対したことがなかったためか、理由としては全て当てはまるのだろう、虚勢で対抗していたようなものだ。

彼女が残した最後の一言に背筋が凍るようだった。虚勢は彼女が完全に退室するまで保てたが、糸が切れたように力が抜けてしまい、危うく椅子から落ちるところだったのを王太子殿下が支えてくれた。そして、労いの言葉と共に庭園でのティータイムに誘われたのだった。


正直、殿下と二人だけのティータイムというのはいろんな意味で遠慮したかったが、実際王族に誘われて断るわけにもいかないし、休息が欲しかったのも事実で。王宮のロイヤルローズを見たいという気持ちも無視できず、今に至る。

周りには数人の侍女と護衛の騎士もいるので二人きりではないし、公爵邸が原種だとすれば、王宮のものは品種改良がされていて色も花弁の形も様々で、その美しさに心が洗われるようだった。この場に並ぶ小花柄の純白の茶器も、百年以上の歴史があるミルゼリアの工房の一級品、しかも年代物だ。通常、茶器というものは使用する度に茶渋によって徐々にくすんだり、汚れが残ってしまうものだが、ミルゼリアの茶器は土や釉薬の工夫で長く美しさを保つことができる。そのため生産量も少なく、技術と美しさに対する価値の他に希少価値まで付くので、一揃えだけでも貴族の邸宅が買える程の値がつくことさえある代物だ。


私の美術品好きを殿下が知っていたかどうかは知らないが、これだけのもてなしを受けているのは、少しはお役に立てたということだろうか。実際、彼女達に対しては貴族か平民かが分かりさえすれば良いだけのはずだから、本当の目的としては私に対して個人的に借りを作るつもりだったのだろうと思っている。


と、あれこれと考え込んでもいたためか、思った以上に不躾に視線を向け過ぎたようで、殿下は口元に笑みを浮かべてこちらへ視線を向けた。黄金色の瞳は最上級のトパーズよりも煌くような美しさだった。



「…噂以上だな、貴女の瞳は。海よりも深く、簡単に溺れてしまいそうだ」



視線を逸らすことなく色気の溢れる微笑を浮かべて少し首を傾ける。日頃から旦那様の芸術品のような美貌を見慣れていなければ、年頃の娘らしく見惚れてコロッと堕ちていただろう。間違いない、この人は自分の容姿の使い方を熟知している人だ。



「血継貴族たる証拠です。私だけではなく、歴代のマクワイア直系の者は皆、この瞳を持って生まれてきていますわ」


「だが、直系全てがその瞳を持つわけじゃないだろう?当主足り得る者がその瞳を持つのか、その瞳を持つ者こそが当主なのか。マクワイア家は永らく、傾くことすらなく栄えてきた。その影響力と財力は、伯爵位でありながら王家ですらご機嫌とりをする程だ」



殿下は口元に笑みを浮かべたまま、目を細めた。どうやらここから先が本題、ということらしい。



「だからね。本当は君に未来の王妃となってもらうつもりだったんだよね」



ちょうどティーカップをソーサーに戻したところでよかった。口の中の紅茶やお菓子が残っていなくてよかった。思わず開いてしまった口を閉じることすら忘れる程の、爆弾発言である。


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