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公爵様は見る目がない!  作者: 猫森まりも
第一部 雇用契約?公爵夫人、始めます
17/44

問題解決と交渉のための手を打ちます

執事長のイメージが某少女漫画の敏腕マネージャーのようになっていく問題。

結論から言うと、期待は裏切られた。



夕食の時間になり食堂へ向かうと公爵様もちょうど来たところで、できる限りさり気なくアピールするつもりでドレスの裾を持ち上げて挨拶をしてみたが、目が合ったところで顔を逸らされてしまった。嫌悪してるようには見えなかったので良しとするか。


考えてみれば、ご令嬢相手をまともに相手をしてこなかった人だ、ご機嫌をとるための褒め言葉も社交の為のお世辞も、ましてや口説くための賞賛なんていうのも口にしたことがないのだろう。思っていたよりも落胆は大きかったけど、ちょっぴりホッとしてもいる。



因みに、顔を背けた公爵が居心地悪そうに小さく咳払いをしていたことも、それを見たアジルが思わずにやりとしてしまったことも、当然のようにエリーナは気付いていなかった。



大き過ぎることもないテーブルで向き合って食事をしながら、今日の出来事のあらましを話す。数か月に及んで購入された粗悪な調度品について、倉庫にしまわれていた美術品について。そしてそれによって浮かんできた問題。



「…成程。父の代から委託していたセイブル子爵の紹介だからときちんと調べなかったのは間違いだったな。私の落ち度だ、君には感謝しなければならないな」


「お役に立てて光栄ですわ。でも仕方のないことです。セイブル子爵自身は間違いなく善良な方のはずです。子爵もコモンノ男爵に騙されてしまったのでしょう」



セイブル子爵というと、王宮の財務大臣を務めた後は先代ローゼンベルク公爵と懇意にしていたこともあり、主に財産管理について助言などしてサポートしていたらしい。その後継としてコモンノ男爵が紹介されたのなら、信用してしまうのも無理はないだろう。



「コモンノ男爵が初めから悪意を持っていたかどうかは分かりません。ですが、彼が公爵邸に相応しくない粗悪品を購入したことは事実です。彼は商会を運営していますから、目が利かなかったわけではないでしょう。そういった品だと分かった上で、名品価格で購入している。恐らく、買い付け先はリクボッタ商会」


「私が関心を持っていないことに付け込んでの詐欺行為というわけか。ナメられたものだ」


「本当なら、倉庫にしまわれていた美術品を買い取ろうと思っていたのでしょうね。でもその価値が高過ぎた為に、手が出せなかった。名の知れた美術品というものは、貴族でも尻込みする程の値が付きますし、その分、売るにしても信用度が必要です。コモンノ男爵の名でもリクボッタ商会の名でも、あの美術品は売ることができません」



赤ワインの注がれたグラスをゆるりと回して、香りを楽しんでから口に含む。ソムリエではないので詳しくは分からないが、上等なものだと分かる。酸味が弱くて自分好みだ。



「ということは、男爵にしてみれば魔が差したといったところか。念のため背後関係も探るが、黒幕がいるわけでもないのだろうな」


「ええ、恐らく商会の在庫処分のようなものかと。高位貴族にはふさわしくないというだけで、十分貴族相手に売れる商品ですから。ただ、コモンノ男爵が貴族相手に扱う商品としては少し荷が勝ち過ぎたのでしょうね」



この国では貴族と平民の隔たりが大きい。例え男爵位を得たといっても元平民の一代目、差別意識の強い貴族にはなかなか受け入れられないだろうことは想像がつく。同じ商売を生業としているものとしては少しばかり同情しないこともないが、王族に次ぐ最高位の貴族を相手に詐欺を働いたのだから、情けをかけるわけにもいかないだろう。



「…女性を相手に話しているとは思えないな、流石マクワイアの名を持つだけはある」



不意の言葉に手元のワインへと注がれていた視線を正面へと向ける。関心を含んだアメジスト。彼のそんな目を見るのは初めてだった。



「…マクワイア家は生粋の商家ですから。見る目がなければ嫡子にはなれませんもの」



にっこりと微笑んで見せると、彼は少しだけ目を瞠り、やがて目元と口元を僅かに緩ませた。それを見てしまった途端、息が止まった。



ーーーレオニス・フォン・ローゼンベルク公爵が微笑んでいる。



メドゥーサに見つめられて石化したわけでもないのに、体が動かない。心臓まで止まってしまったのではないかと、ギシギシと軋む音が聞えそうなほど思うように動かない腕を何とか動かし、胸に手を当てる。大丈夫、動いてる。寧ろ元気すぎるほど動いてる。


結局、訝しんだ公爵から大丈夫かと声をかけられるまで硬直は解けなかった。やっぱり彼はメドゥーサの血が流れているのではないだろうか。



食事が済んだところで、見せたい物があるからと私の執務室へ来てもらうよう伝えると、その足で行くと言うので食堂からまっすぐに執務室へと向かう。コモンノ男爵の件は公爵様が話をつけるというので任せるとして、まだ大問題が残っているし、その問題を解決して恩を売らなければ。


いや、本音を言えば恩を売るなんてついでだ。



「…これは、先程の絵画だな」


「はい。『静謐の湖畔』です。ニール・テルミナが専属契約を結んだシュヴァルツの父、アルバスの為に描いたとされる名画です。『高貴なる庭園』に次ぐ公爵家の宝です」



執務室に着くなり、運び込んでもらった五枚の絵画をそれぞれがきちんと見えるように並べ、最前列真正面にある一枚のもとへ公爵を誘導する。思わず説明に力が入ってしまうのは無理からぬこと。名画なのだ。それこそ値を付けられない程の。



「………」



何でそんなに力が入ってるんだとか、何で嫁いできた立場でそこまで知ってるんだとか、問いかけたいことはいくつもあるが、藪蛇に違いないと聡く察したレオニスは口を噤んで頷きだけを返した。彼は知らなかったが、これは賢明な判断であった。



「これはローゼンベルク公爵家の為にも、決して失ってはいけない財産です。金銭的な価値のことを言っているのではありません、歴史的財産なのです。他の四枚もこの絵には及びませんが、いずれもとても価値ある名画です。それがですね、汚れているんです!ヒビが入っているんです!!」



かつては戦場で『獅子頭の悪魔(リオ・ヴェリアス)』とまで恐れられたローゼンベルク公爵が、今は目の前の女性、頭一つ分程も小さくおおよそ鍛えられたものではない女性らしい華奢な体躯をした妻に対して、殊勝にも黙りこくって相槌を打つように頷くだけでいるのである。


それぞれ主人に着いてきた執事長と侍女二人は廊下に控えていたため、室内には二人だけだったので辛うじて尊厳は守られていたが、第三者がいたとしたらその目には何とも奇妙に映っただろう。



「ですが、ご安心なさってください。これらは修復が可能です。私がこの至宝たちを甦らせてみせます」



絵画の重要度と価値が伝わったところで、問題の解決へ誘導する。ここまでは上手くいっている。後はお膳立ての為の目撃者は多い方が良い。


公爵に確認をとって、廊下に控える三人にも入室してもらい、絵画の前に立つ。



「見ていてください」



絵画に向かって手をかざし、ヒビが入った部分に意識を集中させ、どうしたいのかイメージを固める。すると、掌から溢れた淡い光がヒビの部分に注がれ、まるで時が巻き戻るようにして塞がっていく。それと同じくして、絵画に視線を注いでいた四人がそれぞれに息を飲んだ。


驚きを隠せないままにそろりと視線をこちらに向けたレオニスが零すように問いかけた。




「…君は…、いや、貴女は、聖女なのか…?」



エリーナさんは設定盛りすぎヒロインでもなければチートヒロインでもないので安心してください(笑)

ちょっと展開を急ぎ過ぎている感が否めない。。

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