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公爵様は見る目がない!  作者: 猫森まりも
第一部 雇用契約?公爵夫人、始めます
13/44

そろそろハッキリさせましょう

そろそろエリーナが本領発揮します。

時が過ぎるのは早いもので、公爵邸へ嫁いで来てから1ヶ月が経過した。仕事にも慣れたし、使用人達との関係も概ね良好。公爵夫人としての生活も悪くないものだと思う。



着飾る必要も無いと個人的な予算が余るので、王都にあるスイーツ店から代わる代わるに1番人気とその他定番と言われるスイーツを日替りで取り寄せるなどして使用していたが、痺れを切らした侍女達から「是非とも化粧品類のご検討を!」と迫られ、彼女らに一任して揃えてもらった。


それでも予算は余っているが、お陰で鏡台の周りが随分と賑やかになった。


収まりきらない物、と言うより使う場が違う物に関しては適した場所なのだろう、浴室の棚等に飾るようにして置かれている。どう使っているのか、毎日お世話になっているのに未だに把握しきれていないが、侍女達は兎に角「お任せ下さい!」とにこやかに、実に楽しそうに答えるので任せきりである。



公爵邸に来てからと言うもの、装いそのものは大差ないにしても、毎日磨かれ整えられている為か、以前と比べれば明らかに垢抜けたと断言出来る。


これならば、美人と自称することは出来ないにしても、キレイでしょう?と言うくらいなら許されるだろう。侍女達の為にも言いたい。言いたいが、特段言う相手もいないのでまだ誰にも言えてはいない。


使用人達から言ってくれるばかりである。



そして、そういった言葉をかけるべき人物であるローゼンベルク公爵と言うと、特に何の変化もない。


2日目の朝に挨拶をして言葉を交わして以来、同じように挨拶や短い会話をを交わすことはあるが、食事も入れ違いになる事が多く、まだ一度も共にできていない。


お茶も飲んでいないし、当然、寝室も別なままなので、現状は同居人といったところだろうか。



たまに見かけた時に、あの美しさをこっそりしっかり堪能させてもらっているのは本人には秘密である。




「イレーヌ様、今日のお仕事はこれで終わりでございます。お疲れ様でございました」




処理し終わった書類を側に控えていたテリアに渡すと労いの言葉と共に微笑みが返ってきた。




「そうなの?今日はまだ日が高いのに…」




うーん、と伸びをして執務室の小さい窓から外を見ると、まだまだ明るい。傍らの時計を見ると、昼食をとってからまだ一時間程しか経っていないようだった。




「イレーヌ様はとても優秀でいらっしゃいますね、流石でございます。この後のご予定は如何なさいますか?」


「そうねぇ…」



普通の夫人ならば、社交も仕事なので茶会や夜会の開催や参加があるが、社交は免除?禁止?されているので予算の管理や領地運営に関する書類仕事くらいしかやる事がない。


最初に任された予算管理の仕事に対し、あの公爵様が意外なことに太鼓判をくれた事もあり、領地運営に関する嘆願書やら何やらの精査を任せてくれたことは素直に嬉しかったしありがたかった。


公爵様は本当なら役職が与えられる程のお人だそうだが、王宮内での力関係やら何やらの理由で役職無しながらも王太子殿下の右腕として政務全般に関わっているとか。


加えて、数年前の戦争での功労者ということもあり、騎士団の訓練に参加することもあるらしい。


つまり何が言いたいかと言うと、とにかく忙しいのだそうだ。勿論、本人から聞いたわけではなく、アジルから聞いた。補佐官を付けるべきなのに、なかなか激務に着いてこられる人物が見つからないらしい。


そんなこんなで、邸内での書類仕事が片付かない状況だったので私に廻ってきたという訳だ。



因みに、公爵様は領地へ帰る暇がないので、現地での管理は先代公爵、つまり義父君がしているそうだ。



「…うん、決めた。ずっと気になってることがあったのよね。確認したいことがあるから、アジルを呼んでもらえる?」



お茶もお願いね、と付け足して冊子に纏められた書類を一冊手に取り、執務室内のソファへ向かう。指示を受け退室していくテリアを見送って、人目がなくなったのを良いことにソファの背凭れへ寄りかかり溜め息を吐く。


公爵様におねだりをして見せてもらったローゼンベルク公爵家の家宝、『高貴なる庭園』。


目にした時の感動は忘れられない。今現在の庭園は当時とは様変わりしているので却って新鮮だった。



ローゼンベルク公爵邸内には『高貴なる庭園』を始めとした芸術品、美術品の真作が風景として当たり前のようにいくつも飾られている。


流石、第二の王家と言われる筆頭公爵家なだけはある。


だからこそ、由々しき問題は解決するべきである。



「イレーヌ様、執事長が参りました」


「どうぞ、入って」



ノックの後にテリアの声が聞こえ、入室を促すと失礼します、とアジルが現れ、テリアとお茶を用意したシュリーが続いて入室した。



「話が長くなるかもしれないから、どうぞ座って。時間が出来てちょうど良いから色々とハッキリさせようかと思って」



着席するように手で促しながら、先程持ち出した冊子を開き、ページを探す。


四人分のお茶が用意され、それぞれが着席するのを待つ。


公爵夫人としてどうなのかと言われそうだが、前世の記憶もある為か、私はどうにも気安く接してしまう。邸内全員とまではいかないが、接する機会の多い目の前の三人は次第に慣れてくれて、こちらから促せば恐縮せずに座ってくれるし、お茶も一緒に飲んでくれるようになった。



「あった、ここ。予算管理の帳簿なんだけど、一年くらい前から二ヶ月前までの間で調度品の買い替えがあったみたいなんだけど、把握している?」



開いた冊子をテーブルに置き、該当する箇所を指差しながら問いかけた。



「はい、勿論です。邸内のいくつかの調度品の入れ替えがありました」


「事実なのね。それで、その買い替えを提案したのと帳簿を管理していたのは、一体誰かしら?」


「以前お話しした通り、公爵様の手がまわりませんでしたので、帳簿の管理はコモンノ男爵に。先代様の時から委託していたセイブル子爵が引退なさる時にご紹介頂いた方です。コモンノ男爵は元々は平民の商人で、調度品を扱っていたこともあり買い替えてはどうかと提案くださいまして」


「コモンノ男爵……あぁ、リクボッタ商会ね。買い替えということは、以前あったものは売ってしまったのかしら?」


「いいえ、倉庫にしまわれています。男爵が言うには、売るためには一度鑑定士に見てもらわなければ適正な値段が付けられないのだとか」


「そう、それは良かった。因みに、買いつける時誰が品を選んだのかしら?」


「それも男爵です。公爵様は興味が無いらしく、任せる、とだけ」


「なるほどね…」



大きく溜め息を吐き、口内を潤すように紅茶を口にする。ほんのり柑橘系の香りがするフレーバーティーを選んでくれたのはシュリーだろうか、彼女はその辺りのセンスが良い。


周りの三人、特に侍女の二人は不思議そうにこちらを見ている。何故いきなりこんな話をしているのか見当がつかないらしい。



ティーカップをソーサーへ戻し、冊子の最後に挟んでおいた折り畳まれた紙を取り出し、冊子を閉じてよけた代わりに紙を拡げた。



「邸内の見取り図、ですか。この印は…?」


「このローゼンベルク公爵邸にあるはずの無いものが置いてある場所よ」


「…まさか…」



テリアとシュリーは首を傾げているが、アジルは顔色を悪くしている。



「気がついた?…この邸に来た当日から、おかしいなと思っていたの。私はてっきり、公爵様は見る目がないお人なのかと思っていたのだけど、そうではないみたいで良かったわ」



拡げた見取り図には十数箇所、赤いバツ印を付けてある。


それは、美術品の贋作や粗悪な調度品が置かれている場所だった。






ようやくタイトル回収できます(笑)


作品内で出てくる美術品に関するうんちくは、作中で語らせる予定でしたが蛇足の部分が多く、文字数と情報量が増えすぎてしまう恐れがあるので別途まとめて掲載予定です。

エリーナの暴走演出としてペラペラ語り出すことはあると思います(笑)

因みにうんちくの内容は幕間で語っていると思ってください。本編にはあまり影響しません。必要な部分は都度補っていきます。

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[一言] ボッタクリ商会でた
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