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収納スキルで国家樹立 ~ただ不労所得で暮らしたいだけなのに~  作者: 大西洋


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プロローグ1 ありがたく筋肉痛を味わうがいい

前世で「若いうちに努力しないと、

のちの人生で死ぬほど後悔する」

という強烈なトラウマを刻み込まれた

主人公・カイ。


彼の目標はただ一つ、

「35歳で悠々自適な不労所得生活」…

はずだったのですが、なぜか手に入れた

「収納スキル」と「掛け合わせ魔法」で

うっかり国を建てるハメに…


鬱蒼と生い茂る巨木とツタの群れ。


太陽の光すら届かない、まさに魔境と

呼ぶにふさわしいジャングルの一角に

倒木音が響き渡る。


――シュバッ! ド――ン!


――シュバッ! ド――ン!


勢いよく放たれた魔法が、馬車ほどもある

太い巨木を薙ぎ払っていた。


一人の青年が額の汗をグッと拭う。


17歳 カイ。


無駄な肉をそぎ落とした筋肉質の体には、

溢れんばかりの力がみなぎっている。


「ふぅ―っ! よし、これで何本目だ?

まだまだいけるぞ!」


ギラギラした目で次の巨木を見据える。


彼の原動力は、ただ一つ

[35歳から不労所得生活]という目標だ。


「精が出るな―、カイ」


右手を振りながら、近づいてきたのは、

カイの親友の一人レイだった。


金色の髪をなびかせ、超々イケメンで

細マッチョ 、水魔法を得意としている。


カイはレイの顔を見るなり、

フンと鼻を鳴らした。


(相変わらず無駄に顔がいい野郎だ)


レイが呆れ顔で周囲を見渡す。


カイの周囲は見事に木々が薙ぎ倒されて

日差しが差し込む広場と化していた。


「それにしても相変わらずすごいな、

お前… こんだけの広さを… 」


「頭は使いよう!  絶対に35歳までに

遊んで暮らせる基盤を作ってやる!」


「よし、昼まであと少し!もうひと頑張りだ」


――シュバッ! ド――ン!


――シュバッ! ド――ン!


再びカイの手から放たれる魔法の連続

攻撃が、ジャングルを穿つ。


この開拓地には、カイの仲間の

若者たちが集まっていた。


13歳から17歳までの男子15人、

女子が12人ほど。


みんなで力を合わせ、木造の食堂が1件

男子用住居が1件、女子用住居が1件、

作業所兼倉庫が1件。


着々と生活の拠点が出来上がりつつある。


今日で開拓90日目だ。


「おーい! お弁当持ってきたよ―っ」


遠くから弾けるような明るい声が響いた。


籠を高く掲げ、笑顔で走ってくるのは、

親友の一人エマだ。


とにかく明るく元気で、開拓メンバーの

胃袋を一身に担う料理上手な女の子。


火魔法を得意としている。


「おーい! みんなー! 飯だってさー!」


カイが大声で呼びかけると、

斧を置いて仲間たちが集まってきた。


「助かったー! 腹へった―!」


「今日のおかずなにー!?」


平行に置かれた丸太に腰掛けていく。


そこが彼らの簡易的な休憩場所だ。


「はい。みんな順番ね!」


エマが甲斐甲斐しくお弁当を配っていく。


そして、当然のように、レイの横に座った。


「レイくん、はいどうぞ!

いっぱいお腹すいたでしょ?」


「ありがとうな、エマ。いつも助かるよ」


レイが爽やかな笑顔を返すと、

エマは頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。


(チッ なんで、いつもアイツの隣なんだよ

別にエマを特別好きってわけじゃないけど

なんか腹立つ…)


カイはレイを横目で睨みつけながら、

弁当をヤケ食いした。


「う~ん! エマちゃんの弁当、

今日も最高にうまい!」


そう言いながら丸太に腰掛けたのは、

親友の一人ダンだった。


四角い体格で見るからに力持ち、

ふざけることも多いが正義感の強い男だ。


魔法量も多く、土魔法を得意としている。


ダンは弁当を頬張りながら吹き出す。


「まさか褒美に開拓許可を出してくれる

なんてなー 俺たちの領地になるんやぞ」


「ふふ、本当よね できるもんならやって

みろって言ってたもんねー」


「こんな無茶苦茶な魔法の使い方できるの

は、カイだけだからな―」


「ふふっ 俺様を尊敬してもいいぞ」


ワイワイと楽しく雑談をしながらの昼休み。






♦

「やれやれ、この辺りか・・・ まったく」


「あーくさい、くさい!」


「貧乏人は、臭くてたまらん」


ハンカチで鼻を覆って現れたのは、

高級そうな絹の服を纏い、やたらと尊大な

態度をとる王国の役人ブデンガだった。


後ろには護衛の騎士が二人、

うんざりした顔で従っている。


ブデンガはあたりを見渡し、鼻を鳴らした


「監督官様が来てやったぞ」


「ふん やはり、この程度の広さか…

 期限は明日だからな」


「しょせん平民のガキ共ですよ 監督官」


(なんだこいつら…

いきなりけなしやがって…!)


カイはこめかみに青筋を立てつつも、

フッと冷たい笑みを浮かべた。


(ふふふ… ちょうどいい…

さっきから全身がバキバキに痛む

この『筋肉痛』、お前にくれてやる!)


カイはこっそり自身の「筋肉痛」を収納し

何食わぬ顔でブデンガの背後で手をかざす


(ほれっ)


「ぐっ…!?」


ブデンガの顔色が、

一瞬で青から紫へと変色していく。


「いたっ いたっ いた―――い!」


腰を折り曲げ、脂汗を流している。


慌てて護衛の騎士たちが支えた。


「急に一体どうされたのですか!?」


「わ、わからん…! 急に全身に痛みが…」


(くっくっく、ざまーみろ

少しは平民の苦しみを味わうがいい)


「げほっ、げほっ! あー、お役人様

大丈夫ですか? 運動不足ですか?」


「ぐぬぬ…! 貴様、生意気な口を…!」


痛みに顔を歪めながらもメンツを保とうと

するブデンガに、カイは笑顔を向ける。


「材木も必要な分は切り出しました

後は、最後の仕上げだけです」


まだ手を付けていない大森林に向けて

右手をまっすぐ突き出す。


(ふんっ! 腰でも抜かしやがれ!)


以前こっそり収納していた

【竜の咆哮】を一気に解放する。



――ゴォォォォォオオオオオンッ!!!!



あたり一帯が鳴動した。


凄まじい衝撃波と高熱が、轟音とともに

数千本の巨木を焼きつくした。


数秒後、煙が晴れていく。


「あ……あ…………」


ブデンガの顔が引きつっている。


町ほどの広さが一瞬で消えた。


圧倒的な広さの更地であった。


「「「……………………は?」」」


護衛の騎士二人も、

仲間である開拓メンバーたちも

口をポカンと開けたまま固まっている。


一言も発せられないまま絶句していた。


(ふふん…なかなか上出来だ!

不労所得生活への第一歩だな!)


悪い顔である…



読んでいただきありがとうございます。


いかがでしたでしょうか?


「35歳で不労所得生活」という目標

を掲げたカイですが、初手から王国の

役人に自身の「筋肉痛」をプレゼントする

など、なかなかにセコい活躍でした。


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