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第一話 戦国時代に転生しました。

処女作となります。


ライトに読めるお話を目指します。


頑張って更新していきますのでよろしくお願いいたします。

気付いたら、何もない空間にいた。


見渡す限り、ただただ白い。


そして目の前では、見知らぬ美人のお姉さんが見事な土下座をキメていた。


人生で美人に土下座された経験など一度もない。


というか、生で普通の土下座を見るのすら初めてだ。だが、不思議と驚きはしなかった。なぜならおれは、いわゆる「なろう系」の異世界転生もののヘビーファンだからだ。


(なるほど、たぶんこれ夢だな。なら楽しまないと損だ)


「大変申し訳ございません!」


きたきた、テンプレのセリフ。


「こちらの不手際により、あなたの魂を予定より早く昇天させてしまいました」


「ははは、なるほど」


思わず笑ってしまった。夢の中の出来事とはいえ、なかなか凝ったシチュエーションじゃないか。


「あの、お約束ですけど……生き返れないんですか?」


まずは基本の質問。こういう時は様式美を大事にしなければならない。


「生き返ることは可能です」


ふむふむ。


「ただし、人間としては無理です」


んっ?


「昆虫なら可能ですが、いかがいたしますか?」


「昆虫ってマ!?!?」


予想の斜め下だった。いや、下すぎる。あまりの衝撃に、セミの幼虫のごとく地面にめり込みそうな気分だ。


「あなたが生きている間の『徳』が、いささか足りませんでしたので……」


お姉さんは申し訳なさそうに言うが、思い当たる節が多すぎた。


電車での狸寝入り。

会社のトラブルをガン無視して定時退宅。

ボランティア活動の参加経験ゼロ。

ネットのコメント欄で正義の味方ごっこ。


「ちなみに、通勤中に女性の胸ばかり見ていたのも大幅な減点対象となっております」


え?


そんな細かいところまでチェックされてるの?怖いんだけど。夢から覚めたら真人間になろう、絶対。


「残念ながら、これは夢ではありませんよ」


はいはい、その設定ね。


「じゃあさ、別の世界へ転生とかは? よくあるやつ」


異世界、剣と魔法、チートスキルにハーレム。あるいは農業改革や内政無双。できればその辺の王道を希望したい。


「そういうファンタジーな世界はシステム上、無理ですね」


だめだった。システムエラーか。


「ただ、戦国時代への転生なら可能です」


戦国時代!?


おれの歴史知識なんて、有名な出来事やメジャーな登場人物くらいしか頭にないんだけど。


「ちなみに、その世界にしか転生できない理由は?」


「やはり、生きている間の徳が足りなくて……」


万能すぎるだろ、その理由。


どうやらおれの人生は、思った以上に徳という名のポイントが不足していたらしい。女神様はもう一度、深々と頭を下げた。


「私の不手際でご迷惑をおかけしたお詫びとして、転生先はかなり裕福な家にしておきます。それでは、今度こそ良い人生を」


裕福な家。なんといい響きだろう。


よし、勝ったな。戦国時代でも、金持ちの家なら何とかなる気がする。


どうせ夢だけど、現実のおれは冴えないシステムエンジニアの平社員だ。パッとしない、言い訳ばかりの人生を過ごしてきた。せめてこの夢のなかでは、言い訳なんかせずに、やりたい事を遠慮なくやってやろう。



ふっと目が覚めた。


あれ? おれの戦国時代の夢は?あれからどうなったんだ。まさか何も覚えてないとか、そんな悲惨なオチじゃないよな。


むっ?


……身体が自由に動かない。

手も動かない。足も動かない。


「あぅあ~」


声を出そうとしたのに、まともな言葉にならない。


「まあ、松丸が起きましたわ」


「おお! 松丸!」


視界に、妙に着物を着込んだ知らない男がひょっこり現れた。


「父上だぞー!」


「本当にかわいい子ですこと!」


知らない。誰だこの人たち。


「父上と母上だぞー!」

待て。ちち、はは……?


おれは必死に身体を動かそうとした。だが、やっぱり全然動かない。


「あ~う~」


……嘘だろ。

おれ、赤ん坊になってる。


異世界転生、いや戦国転生って本当にあったのか!?周りのレトロな景色を見る限り、確かに戦国時代っぽい。


しかも乳児からリスタートかよ。


「殿、そんなに顔を近づけるから松丸が泣いてしまいますわ」


「いやぁ、あまりにかわいくてな! わしの跡取りじゃ!」


知らないおっさん(父上)がデレデレと顔を寄せてくる。でもまあ、おれの分の徳を全部注ぎ込んだような幸せな家族に生まれたようで、まずは良かった。

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