避難
スッキリとしない気分を引きずったまま、1ヶ月が経過していった。
帰ってきた俺は、部屋の前にうずくまっている子どもを見て、短く悲鳴をあげた。
「お前なんでここに……なんで来たんだ!」
「あ……」
俺の顔を見た瞬間、いっぱいに見開かれた目から大粒の涙が溢れかえり、荒れた肌を通過して、ボタボタと地べたに落ちていった。
座った状態のまま、バッと腕を広げて抱きついてくる。急に襲ってきた衝撃によろめきそうになるのを踏ん張って、かろうじて耐えた。
彼方は、俺の足にしがみついて肩を震わせている。ズボンに生ぬるい水滴の温度を感じる。
俺は、お気に入りのズボンが涙と鼻水で汚れていっているというのに、彼方を動かせなかった。
抱きつかれる直前の、地獄の底で蜘蛛の糸にしがみつくような、死に物狂いとまで言える形相が、焼きついて離れなかったから。
今ここで彼方を拒絶して、少しでも離れようとしたら、一生後悔しそうな気がしたから。
結局、また家に上げてしまった……。
もう関わるべきではないのに。こいつのためにも、突き放さないといけないのに。
俺がちょっと気まぐれに優しくしてやったところで、結果的には意味のないことだ。
俺はこいつにとって赤の他人以外の何者でもない。何にもできない。こいつの望むものにはなれない。誰の代わりにもなれない。
何もできないなら、余計な期待なんてさせずに、突き放してやることが本当の優しさなのに。
でも、あの目を見て尚「帰れ」と門前払いすることなど、絶対にできない。
家にあげるしかなかった。俺にはそれしかできなかったのだから、後悔しても無駄だ。
彼方は、地蔵のように押し黙っている。
何か責めるようなことを言われるかと思っていただけに、沈黙が逆に恐怖だった。
しがみついて泣いている時も、静かなものだった。
火がついたような泣き方じゃなくて、ほとばしりそうな叫びを必死に抑え込んでいるかのような、何かに怯えているみたいな泣き方だった。
こいつは今、何を考えているのだろう。
そもそもどうして俺のところに来た? 前回「来るな」と言ってから3ヶ月近く、一度も来ていなかったのに。
何かあったのか。道子に何かされたのか。
色々聞きたいのに、俺の方から話しかけるのは気が引けた。
その時、彼方がなんの前触れもなくワッと顔を覆った。
「どうしよう……お母さん置いてきちゃった。お母さん、怪我してた。痛っ、って言ってたのに……お母さんを……ぼく……お母さんが……お母さんに……うううう……!」
意味のわからない言葉を呟き、心の苦しみにのたうち回る彼方。
「ちょっ、ちょっと落ち着けよ。大丈夫だから。多分大丈夫だから……何があったのかゆっくりでいいから話してくれないか?」
彼方の説明は飛び飛びで、その上ところどころで感極まったので、何を話しているのか時折わからなくなった。
だから、俺はしょっちゅう「え? 何だって?」と説明を中断させなければならなかった。
かなり時間をかけてようやく理解できた彼方の話に、俺の心は掻き乱された。
道子が店を出禁になってから、彼女は荒れ出した。
そうなることは予想していた。でも、それも1ヶ月やそこらのものだと思っていたのだ。
すぐにケロッと元気になって、俺のことなんて忘れるだろうと思っていた。
道子が夢中になっていたのは俺ではなく『誰かに夢中になれる自分』だったから。
私生活を犠牲にする形で俺に尽くしているのは、若さゆえの熱狂と気の迷いに過ぎないのだから、俺と会えなくなったところで、そこまでの影響はないだろうと信じていた。
道子の荒れっぷりは、聞いていると鳥肌が立ってくるものだった。
出禁を言い渡された直後は、台風のような激しさで家中をひっくり返した。
襖をビリビリに破り、開けっぱなしだったコーンフレークの袋を、中身ごと床にぶちまけた。棚やゴミ箱をひっくり返し、柱に爪を立てて痕を刻んだ。
ありとあらゆる物が散乱した床をめちゃくちゃに踏みつけて、家中が色んなものが混ざり合った匂いがしていたという。
彼方は、その間ずっとトイレに隠れていたそうだ。
静かになったので、恐る恐る出てみたところ、道子は充電切れを起こしたように、汚れた床に倒れ込んで寝ていた。
そんなところで寝たら、体が痛くなってしまう、と思った彼方は、母親を揺り起こした。
布団で寝なよ、と。
重そうに瞼を開いた道子は、起こしてきた相手をこの上ない極悪人のように睨みつけた。
激しい怒りを抑えられなくなっていた道子は、目についた息子を容赦なく殴り飛ばした。
あんなにしつこく強く殴られたことはなかった、と彼方は興奮気味に話した。
身を縮こませて耐えていると、そのうち暴力は止んだが、それは単にこの日はこれでおしまい、というだけだった。
次の日もその次の日も、道子は彼方に手を上げた。
道子の視界に入ったら、殴る蹴るの始まりだった。だから最近の彼方は、家にいる道子から逃げるように過ごしていた。
道子はずっと家にいた。座ったまま何もしないで一日を過ごす日々が続いた。
ボンヤリと虚空を見て、時折涙を流しているのだが、それに気づいていないような素振りだった。
何回か「リオ……」と呟くのを聞いたと彼方が言った。
その時の道子の様子を生々しく想像して、みぞおちが冷たくなった。
ボサボサの山姥みたいな髪と、ドス黒い肌色のベタついた女。何日も着通している服の下に隠れている肉体は全身垢まみれだ。
半開きのひび割れた唇の間から俺の名前を呼ぶ道子は、心霊よりもよほど恐ろしい。
視界の端で彼方が動くのを見ると、ぐるんっと首を回転させる。
蛇に睨まれた蛙のようになっている子どもを見る目に、ギラギラした色が宿っていく。
道子の顔がそのようになっていくのを見た彼方は「あ、終わった」と感じる。
冗談抜きで、死ぬかもしれない、と思うのだと彼方は言った。
やめて、許して、痛いよ、と繰り返し、どうにかして母親を止めようとするが、一向にやめてくれる気配はない。
だから、そのうち黙って殴られるようになった。
やがて道子は、視界に入らなくても、物音が聞こえただけで際限なく怒り出すようになった。
トイレの水を流す音さえも「うるさい!」と言い、彼方の頭をリモコンで叩いた。
ちょっと移動するのにも神経を使わなくてはいけない生活。忍び足で歩いている最中に床が軋むと、心臓が止まりそうになった。
今の音、お母さんに聞かれたかな。気づいていませんように。お願い、神様——。
暴力を振るう時以外は、心ここにあらずという状態で、どこか遠くに意識を飛ばしていた道子だが、次第に恐ろしい変化が現れた。
さっきまでじっと座って大人しくしていたのに、なんの前触れもなく「あああー!!」と叫んで頭を掻きむしったり、テーブルを拳で叩きまくったり——気が触れたみたいだった。
風呂に入ったり歯を磨いたり、といったルーティンは、しっかりこなすようになって、一見"普通の人"に見える瞬間が多くなったばかりに、不気味さと恐怖はむしろ増していった。
ある時から、道子はカッターナイフや鋏で、自分の手首を切るようになった。
ダラダラと血が流しながら、俺の名前を呼ぶ姿に彼方は悲鳴をあげた。
「やめなよ! お母さん!」
怪しい引き笑いを繰り返す母親の腕にしがみついて、彼方は道子の行動をやめさせようとした。
しかし、彼方のことなど目に入っていないかのように、道子は刃物を自身に突き立てる。その様子は、もはやこの世の者ではない。
「リオ、リオ、リオ……! なんで……なんで私を捨てたあぁぁぁ!」
立ち上がって、手が届く範囲のありとあらゆる物をなぎ倒す。
恨みと悲しみに取り憑かれた怨霊のような道子の目に、怯えた彼方の顔が入り込む。
すると彼女は、今初めて彼方の存在に気づいた、というような顔になる。
そして道子は、体中の熱さが全て顔に集まったように顔面を真っ赤にさせて、たぎる思いを彼方にぶつけ始める。
そこから、永遠かと思われる地獄の時間が続く——ここのところの彼方はそんな生活を送っていた。
「ぼくもうイヤで……やめてほしくて……でも無理だった。お願いしても聞いてくれなかった。今日もやられそうになった。……ぼく逃げようとしたんだ。そうしたらお母さんが追いかけてきて……」
ずっと苦しそうな顔をしていた彼方が、耐えきれなくなったように、顔をぐしゃぐしゃに歪める。
「イヤだ! って突き飛ばしちゃったんだ……思いっきり。そしたらお母さん、転んじゃって……。膝から血が出てた。すっごい目で睨まれた。ぼく死んじゃう、って思って、急いで逃げてきたんだ」
良い判断だ、と褒めてやりたい気分だった。
絶対に反撃されない、そんなの出来っこない、と舐め腐っていた相手に怒りの絶頂時にやり返される。
あのままその場にいたら、何をされていたかわからない。誇張抜きで殺されていたかもしれない。
「どうしよう……。お母さん、痛がってた。血が……お母さんに怪我させちゃった! 謝らなきゃ……早く謝らなきゃ! お母さんにぼく——」
「ダメだ!」
その声の大きさに、俺が一番驚く。
「今帰るのはダメだ。……絶対にダメだ」
「でもっ! 早く謝らなきゃ。それにぼくのこと探してるかもしれない。家を出る時に、待て! って言われたんだ。きっとぼくが帰ってくるの待ってる。だから早く帰らないと——」
そう言いながら、すでに立ち上がっている彼方。
「待てよ!」
「うっ……!」
俺が腕を掴むと、彼方が顔を歪めた。
彼方の服の袖を捲り上げたら、俺も同じ顔になった。
「お前……これ……」
新しいものから古いものまで、大量のあざができていた。腕全体をビッシリと埋め尽くすレベルの殴り痕のせいで、綺麗な肌色が見える部分が少ない。
ドス黒く変色した腕を見ていると、目の前が真っ暗になった。
「ちょっ……! リオさん!?」
彼方の手を引いて、ズンズンと脱衣所に向かっていく。
脱衣所につくなり、彼方の服を脱がして真っ裸にする。
彼方が洗面所の鏡に目をやり、まじまじとそこに映っているものを見つめている。その眼差しが恐怖に満ちていくのを、俺はかすかに嬉しく感じていた。
これを見てもなお、帰ろうとするか?
腕だけでなく、腹部、太もも、膝、足の甲に至るまで、傷だらけだった。
ここまでボコボコにされた人間を俺は見たことがない。
今の彼方を道子の元に行かせるわけにはいかない。
今帰ったら殺される。
彼方は鏡から目を離さない。自身のグロテスクな体を、エイリアンにでも出会ったかのように、怯えた眼差しで見つめている。
お前がされたことは大変なことなんだと、少しはわかってもらえただろうか。
道子を恐れてほしい。自分をこんなにした母親に怒ってほしい。道子を嫌いになって、彼女から離れてほしい。
突発的にそんな思いが湧き上がってきた。
「リオさん……」
彼方が藁にもすがるような目で見上げてくる。
「お母さんと結婚してくれない?」
「は……」
「お願い! お母さんはリオさんのことが大好きなんだ。リオさんと結婚すれば絶対元気になるはずなんだ。そしたら、ぼくを殴ることもなくなるし、また笑顔になってくれる——ね、お願い」
彼方の様子は真剣そのもので、俺がその頼みをかなりの確率で聞いてくれると信じているようだった。
「お母さんは、リオさんに捨てられた、って泣いてた。ねえなんで? なんでお母さんを捨てたの? なんで急に会えなくなったの? ぼくにもう来るな、って言ったのと何か関係あるの?」
腰の辺りを掴んで、ねえねえ、と揺さぶってくる彼方。
「リオさんさえいてくれれば、お母さんまた元気になるんだ。リオさんがお母さんと結婚してくれれば全部大丈夫になるんだよ。ねえ、だからお願い。お母さんと結婚して。お母さんのそばにいてあげてよ。一生のお願いだから……」
毎日毎日、俺の名前を呼んで狂乱する道子を見続けて、彼方はそう考えた。
俺が道子と結婚してくれれば、全て丸くおさまる。絵に描いたようなハッピーエンドがやって来ると。
「お母さんが一番好きなのはリオさんなんだ。リオさんがいてくれなきゃ、お母さんダメになっちゃう。お母さん、あんなにリオさんが大好きなんだよ? お願いだから、どうにかしてあげてよ」
母親をあそこまで追い詰めた俺を責めるような口調だった。
「ぼくもお父さんがほしいんだ。お母さんがぼくを見てくれない時も、お父さんがいてくれれば少しはマシになるから」
「お父さんが——前はそうだったのか。お父さんがいた頃は寂しくなかったのか。お前を寂しくさせない——いいお父さんだったのか」
彼方が微妙な顔つきになる。
「良いことばっかりじゃなかった……けど、遊びに連れて行ってもらったこともあったんだよ。お母さんが出かけてて、ぼくとお父さんで留守番してる時、ご飯作ってくれたこともあった。それで一緒に食べて——いっぱい優しくしてもらった。いないよりはいた方がよっぽど良いよ」
お母さんも笑ってくれるし、と続ける。おそらくそれが一番大きい理由なんじゃないか。
交際が上手くいっている男と暮らしていると、道子のメンタルも安定してくる。息子への態度もいくらか和らぐ。
あんな目に遭わされてもなお、彼方の心は道子に向いている。
——どうして?
ああ、こいつには道子しかいないのだ。
彼方の世界には母親しかいない。
外との繋がりが完全に断たれていて、その状態が良くないことだと気づきもしない。気づいたとしても、どうすればいいのかもわからない。
助けを求めるどころか、自身を助けが必要な存在だとも思っていないのだ。
彼方みたいなやつの人生を守るには、誰かがこいつの置かれている悲惨な状況に気づいた上で、何とかしよう、と行動を起こさなければならないのだ。
自分で自分を救う、みたいな方法は通用しない。他人が何とかするしかない。
他人が無理やり介入して、今の環境から引っ張り上げなければ、彼方みたいなやつは一生地獄の中だ。
じゃあ、誰にも見つからなかった人間——苦しんでいることを誰にも知ってもらえなかった人間はどうなるんだろう。
自分が地獄にいる、と認識できずに長い長い時間を過ごした人間は、どうなってしまうのだろう。
早い段階で誰かに見つけてもらって、何とかしてもらう。
それが無理なら、方法はただ一つ。
「彼方」
ギョッと目を見開く彼方。
ああ、そういえば名前で呼ぶのは初めてだっけ。
「彼方の母さんはさ、ろくでなしだよ。あいつ、人を騙して金をもらってるんだ。何百万って金をだぞ。寂しがりの人に思わせぶりなこと言って近づいて、有頂天にさせて——そんで最後は金だけ巻き上げておさらば、ってことをずっと繰り返してるんだ。本当に酷いやつだよ。人間のクズだ」
「お母さんがそんなことを?」
彼方は、信じられないような顔をして聞いている。
「だって……だってそれって悪いことじゃん。なんで逮捕されないの?」
その口調からは、お母さんはそんなことする人じゃない、という思いがこもっていた。
「悪いことをやった人間が必ず捕まるわけではないんだよ」
「そんな……でもっ! ぼく信じないよ。お母さんが捕まるようなことしてるなんて……お母さんはそんな人たちとは違うもん」
自分の家族だけは別。自分の家族だけは清廉潔白だという、謎の強い自信。
傍目から見ると、鼻で笑ってしまうような自信だ。
分別のある大の大人がそんなことを言っているとしたら、笑いが込み上げてしまう。
しかし今の場合、相手が相手なだけにとても笑う気になどなれない。
「でもな、そんな状態になるまで人を殴るのも犯罪なんだ。『捕まるようなこと』なんだぞ」
「いや……でも……それはぼくがうるさくしたから……お母さんの邪魔をしてイライラさせたから……」
あるのかないのかわからないたった一つの非を大罪のように捉え、そのくせ道子の横暴には目を瞑る。
全て自分が悪いのだと思い込む彼方を、もどかしく感じる。
「いいか。お前は何も悪くない。悪いのはお前の母さんの方なんだよ。殴る方よりも殴られる方が悪い、なんてありえないだろ?」
そう言っている最中に、違和感のようなものを感じる。
彼方を説得する自分の言葉を聞いて、心に不快な痛みが走ったのだ。
目を逸らしたくなる何か。ずっと考えないようにしてきた答えが、満を持して目の前にパッと現れてきたかのような——。
「ぼくは……ぼくは」
彼方の声で、ハッと現実に戻ってくる。
「お母さんが可哀想だと、思う」
「は——」
「だから許せる」
何を言っているんだ。
「お母さんにも理由があるんだと思う。きっとすごく大変で、追い詰められているんだ。だからぼくも我慢しなくちゃダメなんだ」
「そんなわけ——」
ないだろ、という言葉がなぜか声に出なかった。唇だけがそのセリフの形を描き、静寂がこの空間に舞い降りる。
「それに……」
ややあって、彼方が続ける。
「もう少し時間が経てば、何か変わるかもしれないでしょ? ううん、変わるって信じてる。それにいつも殴られる心配してるわけじゃないよ。お母さん、この頃は外に出るようになったんだ。少しずつだけど、調子を取り戻してきてるんだ。待ち続けていれば、また前みたいなお母さんが戻ってくるかもしれない。もうちょっと我慢すれば……ぼく待ってる」
彼方の言葉を聞いていると、心の底から不愉快になってくる。
本人にその気はまったくないのに、聞いている側の神経をズタズタに切り裂いていく、あまりにも痛ましくて哀れなセリフだった。
彼方はどのくらい真剣に、道子を信じているのだろう。
信じているというよりも、信じたいだけなのか。信じたい、の方が比重が大きい気がする。
俺は天を仰いで、これは厄介だ、とどうすればいいのかわからなくなってしまった。
こうなったら説得するのは至難の業だ。
こっちがどんなに正しいことを言っても、どれだけ言葉を尽くしても、納得してもらえる気がしない。
説得なんてしようとしちゃダメだ。こうなったら無理やりにでも——。
ハッと思考にストップをかける。
何を考えているんだ俺は。
もうあの親子には関わらないと決めたじゃないか。
赤の他人がどうなろうと知ったことじゃない。
彼方の問題は、道子のみに責任があるのだ。何かあったとしても道子にしか咎はない。小さい子どもに何かあったら、責められるのも悪いのも親だけだ。
そのはずだ。そのはずなんだ。そうに決まっている——。
「どうしたの……?」
「はっ?」
「一人でブツブツ……そうに決まっている、って何が?」
声に出ていたのか。まったく意識していなかった。
俺を見上げる彼方をじっと見返す。
母親と一緒にいることがこいつの望みなんだ。
それがこいつの幸せで、それを阻止することは残酷で——こいつの今後の人生に暗い影を落とすかもしれない。
俺は、自分の中に湧き上がってきた衝動を抑えつけることに成功した。
まだ胸にわだかまりみたいなものは残っていたが、時間が経てば消えていくだろう。
評価・いいね・ブックマーク・感想など頂けると、大変励みになります!まめに更新していくので、よろしくお願いします!




