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子カフェ  作者: 絶対完結させるマン
彼女のこと

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性の芽生え

 それ以来、私と須美ちゃんは一緒に遊ぶようになった。

 須美ちゃんは二人きりになると、自身の秘密について色々打ち明けてくれた。


 事の始まりは、高校生の女子の個室に忍び込んだことだった。

 鍵もかかっておらず、部屋には誰もいなかったから、興味を抑えられなくなり、つい入ってしまったのだという。ちょっとした探検気分でワクワクしていたら、ふと気になるものを見つけた。


 少女漫画だった。須美ちゃんは、漫画だ! と思い、本棚からそれを抜き出した。

 漫画の内容に関しては、あまり面白いとは思わなかったようだけど、絵柄が可愛いのでパラパラめくっていた。


 すると、おかしな場面がやってきたのだという。

 ヒロインの女の子が、ライバルの女子の手引きで、追い詰められていた。


 ヒロインは、人気がまったくない小汚い場所で、大勢の男子に囲まれて、震える身体を両手で抱きしめている。

 やがて、一人の男子に押し倒されて、服を乱暴に脱がされた。口を塞がれ、力で押さえつけられ、抵抗もできずに体をまさぐられ——足を開かれようとした時、彼氏が助けに来た、というシーンだった。


 「そのシーンが夜になっても忘れられなくて……何度も何度も頭に浮かんでくるの」


 須美ちゃんはそう言った。


 「怖くて死んじゃいそうなヒロインと、そんなヒロインをニヤニヤ笑いながら眺める男子たち——服を脱がされて胸が全員に丸見えになって、急いで隠そうとするんだけど、両手を押さえつけられているから、どうにもできないの。たくさんの人に恥ずかしいところを見られてるのに、泣くことしかできないヒロインの姿を繰り返し思い出すうちに変な気分になってきて。体も熱くて全然動いてないのに汗が出てきた」


 須美ちゃんは、自分に起こった変化を夢中で語っていった。


 最高にドキドキしたの、と須美ちゃんは言った。漫画にあったシーンを見て、かつてないほど興奮したのだと。


 夜、布団の中で思い返すと、さらに興奮は増した。静かな暗がりで横になっていると、体が熱を逃したがっているような——とにかくじっとしていられない! みたいな衝動に襲われたらしい。


 須美ちゃんは、自分の体のあらゆる部分を触ってみた。

 一体どこを触ればこの切なさは消えるのか。どうすれば落ち着くのか。それを探すように——。


 そして、股に行き着いたのだという。


 目をつぶって、瞼の裏で漫画を読む。同じ場面を繰り返し繰り返し——そうしながらズボン越しに股を擦ると、すぐに気持ちよくなってきた。


 「気持ち良いのにビックリして……何だこれ!? と思った。何もわからないけど、途中でやめるとすごく苦しかったし、イライラしてきたから、とにかく続けたの。そしたらスッキリしてきて。ようやく落ち着いて眠れそうになったんだ。……終わった後ね、疲れたし汗はびっしょりだったけど、なんか嬉しかったんだ」


 嬉しかった? と私が首を傾げると、

 「美味しいもの食べて、お腹いっぱいになった時みたいだったんだ」

 と説明してくれた。


 終わった後に満足感があるのか。

 須美ちゃんの例えが、わかりやすく誰にでもイメージしやすいものだったので、私は須美ちゃんがちょっと羨ましくなった。


 私も同じように幸せを感じたいと思った。

 だから、ますます須美ちゃんの"秘密の遊び"が気になっていった。


 どれくらいのペースでやっているのか。やっている時に何を考えているのか。詳しいやり方などなどを、私は須美ちゃんに教えてもらった。


 須美ちゃんは、一週間に2、3回はやっているらしい。夜、みんなが寝たと確信してから、布団で体を隠してするのだと。

 最初は、漫画で見たあのシーンだけを思い出していたのだという。でも、次第にあのシーンを思い返しても興奮できなくなってきた。


 困った須美ちゃんは、漫画を見つけた高校生の部屋にまた入ることにした。何か良いものが見つかるんじゃないかと期待して。


 須美ちゃんは、例の漫画の続きを読んでみた。読み進めるうちに、ヒロインとその彼氏のキスシーンがやってきて——次のページをめくると、二人は裸になっていた。

 彼氏の方は上半身しか見えなかったが、ヒロインの体は上から下まで、ハッキリと描かれていた。


 乳首もちゃんと描かれてたんだよ、と須美ちゃんは興奮気味に話した。


 「それでヒロインと彼氏が、裸でくっついたり離れたりしてて……彼氏がヒロインの胸をその……舐めたり、とかしてて……」

 「ええっ!?」

 「ね、何でそんなことしてるの!? って思うよね。でも胸を舐められてる女の子、すごく気持ち良さそうに身体をよじってて。ダメッ、とか言いながらも、まったく嫌がってる感じじゃないの」


 知らないことだらけだった。そんなことが世界にあるなんて、何だか実感が湧かなかった。


 高校生になればわかるんだろうか。

 そんな漫画を持っているということは、部屋の主である高校生は、一つ一つのシーンの意味を知り尽くしているんだろう。

 どうして主人公と恋人が裸になって、そんな変なことをしているのかも、大人は全部知っている——。


 でも、大人たちにそういうことを素直に尋ねてはいけないのだということは、須美ちゃんが怒られた経験からわかっていたから、大人に訊いてみるわけにもいかない。

 いつか意味がわかる日が来るのを願うしかない。


 主人公と彼氏の絡み合いは、前に見たシーンよりもずっと刺激的だった。須美ちゃんは、今度はそのシーンを考えながら股を擦ることにした。


 「私、ひょっとしたら男の子なのかもしれない」

 須美ちゃんは、少し悩ましげにそう言った。


 「どうしてそう思うの?」

 「だって、女の人の胸を見て興奮してるんだよ。私は女子なのに……同じ女子の胸に興味があるなんておかしいでしょ」


 それに、と続ける。


 「女子なのに、そういうことで頭いっぱいになるのも変だし……」


 須美ちゃんは、エッチなことに関心があるのは、男だけだと思っているらしい。

 女子は、こういったことには興味ゼロだと。


 私だって、裸を見てドキドキしたりするのは男子だけだと思っていた。

 小学生になると、学校で不審者情報とかをよく聞かされる。こんな危ない人がいるから気をつけて帰りましょうね、と。


 先生に聞かされる不審者というのは、大体おじさんだった。

 知らないおじさんに連れて行かれそうになったり、体を触られたりしたら、すぐに逃げたり周りの大人に助けてって言うんだよ、と担任の先生が、帰りの会で呼びかけていた。


 特に女子は気をつけて、と先生は続けた。男子ももちろん気をつけなきゃだけど、女子の方が断然狙われやすいから、と。

 私は、なるほどそういうものなのか、と特に何も疑問に感じたりはしなかった。


 ニュースでよく耳にする、児童にわいせつな行為を、とか何とかいう言葉の後に、テレビに映される犯人も大体男だ。そして、"わいせつな行為"をされた側は、大体女児だった。


 普通は、男が女にいやらしいことをする。

 7歳の私の中で、そういう常識ができていた。


 須美ちゃんも同じだろう。だから須美ちゃんは、エッチなことを考えてしまう自分を実は男の子なのかもしれない、と疑っているのだった。


 「でも須美ちゃんは女の子だよ。確かに女子でそういうこと好きなのは、珍しいかもしれないけどさ。まったくゼロってわけでもないんだし」


 稀に女性の不審者情報とかも出るし。幼稚園の男子に"わいせつな行為"をした女の人のニュースも、前に見たことがある。

 だから、エッチなことを考えたりしたいと思うのは、絶対に男だけ、というわけでもないんだ。

 須美ちゃんは、女の子だ。


 それに須美ちゃんは、女の人の胸に興奮しているわけではないのでは——とふと思った。別の何かに興奮しているのではないか、と。

 それが何なのかは、わからないけど。

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