表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
有罪愛  作者: 臣 桜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/91

それでも母親かよ

 やがて春佳の合コン事件があり、俺はますます妹への執着を深め、彼女を側に置きたい願望を持つようになる。


 大切な妹に下品な男が触ったと思うと、激しい怒りを抱くと同時に、守れない自分の不甲斐なさに酷く落ち込んだ。


 春佳に男の毒牙がかかるような事があってはいけない。


 何があっても、決して、だ。


 なのに『大学生だし、ストレスが溜まっているから息抜きは必要だ』と理解のある事を言った挙げ句――、こんな事になってしまった。


 父親に汚されたというのに、さらに会ったばかりの男に迫られ、怖くなかったはずがない。


 ――俺だって怖かった。


 春佳が深く傷付いたと思うと、自身のトラウマが蘇って自分の事のようにつらくなる。


 ――すまない。


 ――守れなくて悪かった。


 ――今度からはちゃんとするから。


 春佳が客室で寝た姿を見て、俺は一人で静かに嗚咽した。







 そんな目に遭っても春佳は実家を離れず、頑なに『母親の面倒を見る』と言いって聞かない。


 その矢先、岩淵の事件があった。


 目の前で犯されかけている妹を見た瞬間、合コンの時以上の激しい怒りが全身を包む。


 同時に、少年時代に父親に犯された自分を思いだした。


 ――助けて!


 あの時は誰に助けを求めても、誰も返事をしてくれなかったし、救われなかった。


 ――だが今は……!


 ――春佳だけは、俺が守る!


 俺は妹の華奢な体に覆い被さる全裸の中年男を掴み、引きずってなぎ倒し、思い切り蹴り、馬乗りになって殴りに殴った。


 ――このやろう!


 ――子供相手になにしてるんだ!


 ――この変質者め! 死ね! 死んで詫びろ!


 俺は拳にすべての怒りを込め、岩淵が動けなくなるまで殴り続けた。


 ――こいつは、社会的に殺す。


 ――今後二度と、俺たちに近づけなくしてやる。


 満足いくまで殴ったあと、俺はだらしなく床の上に横たわる岩淵の姿をカメラに収め、縮こまったモノも何もかも、赤裸々に写した。


 そして呼吸を整えたあと、冷酷に吐き捨てる。


『……あんたが警察に行くのは勝手だが、こっちもあんたの弱みを握っている事を忘れるなよ? 念のため名刺はもらっていくからな』


 言い捨てたあと、俺は裸に剥かれた春佳に服を着せ、傷付いた妹を自分のマンションに迎えた。







 大きなショックを受けて初めて、春佳は自分が今まで異常な環境にいた事に気づいたようだった。


 当分実家に戻さないつもりでいる俺は、後日一人で実家に向かうと、母親の罵詈雑言を無視して春佳の荷物をスーツケースに詰めた。


『お前、岩淵さんになんて事をしてくれたの! 傷害事件よ!』


 金切り声で叫ぶ中年女の声を、俺は無視し続ける。


 こいつは昔から何かあれば大声を出せばいいと思っていた。優しい春佳なら言う事を聞いてくれるから、娘に依存していたんだろう。


 だが俺は違う。


『お前こそ、夫が死んだ直後になに男を家に入れてるんだよ。実の娘があの男に色目を使われてるのを分かっていたんだろ? 分かっていながらお前は〝母〟である事よりも〝女〟でいる事を望み、その結果、春佳は襲われた。……お前、それでも母親かよ。俺が駆けつけなかったら、春佳はレイプされてたんだぞ。母親なのにそれを望んでいたっていうのか!?』


 怒りを叩きつけると、母親は表情を歪めて俺を睨み付ける。


『言いたい事があるなら言えよ。俺が納得する理由があるなら聞いてやる』


 勿論、そんなものなんてある訳ないに決まっている。


 母親は歯を食いしばって肩を震わせたあと、低い声で『あんたに何が分かるの』と吐き捨てた。


『自分の子供をレイプさせる親の気持ちなんて分かりたくもねーよ。……ああ、お前は〝分かっていても無視する〟のが得意なんだっけ』


 せせら笑うと、母親は涙を流し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ