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彼等とは、混ざるな危険のレッテルが。  作者: 夕暮 瑞樹
第一章 まだ知る世界 side長船
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第二十話 始発、あるいは終電

「急に呼び出されたのは良いけど…何これどういう状況?」

と、明堂と澤中は困惑の表情を浮かべた。


 どんな状況か。それは見て貰えば直ぐ分かる事だけれど、一応説明するならば今からするゲリラライブの準備中である。

 丁度今やって来たトラック、通称『浦井号』からドラムセット,コード辺りを下ろしていくと、今度は僕のキーボードとアンプを下ろしていく。

「…今からやるの?」

「うん。」

「…ライブを?」

「うん。」

「…。」

そうやってうんうんと適当に返事をしていく浦井の顔をこっそり横目で見てやれば、彼の表情は何時に無く楽しそうだった。

「浦井、ちゃんと招待状は送ったのか?」

「おう、送ってやりました。」

「よし、じゃあそっちのセッティング宜しく。」

と浦井は了解と軽い足取りでステージまで向かって行き、僕はトラックの積み下ろし作業に戻っていく。招待状というのはカスタムイエロー宛のものであり、最期のライブくらい堂々としようという僕等の試みだった。


 急遽手配したライブ会場の奥にはチラホラ人が集まりつつも、何だか不穏な騒ぎが起こっている様子。まぁカスタムイエロー支持の人達が現れるのは想定内だし、君達が間違っていない事は僕等が一番理解している。浦井の病欠の報道前には一時期ニュースにもなった程だから、その真相を知りに足を止める人がいる事は多いに予想出来ていた。

(…にしても、結構人いるなぁ…、)

僕はステージの影からこっそり顔を出すと、今集まっている分の人数を大まかに数えてみる。それは初めの路上ライブの時と比べれば何倍にもなる数字で、良くも悪くも、一度の出世がどれだけ世を変えるかが目視できた。

「哲ちゃん、そろそろ。」

ふと、舞台袖から僕を呼ぶ浦井の声がする。

「ん、分かった。」

と駆け足で浦井の後を追い、舞台に上がろうとしたその時、形容のできない妙な表情をした、斎藤さんが見えた気がした。


 そしてやってきた本番五秒前。僕はこれまでで一番長い、深呼吸をした。




ーー ーー ーー ーー


…ぁ…ア、ああ…えー、それでは始めます…


どうも、カスタムイエローのパクリバンドことニュートラルです!!


今日はね、なんでこんな急になんて思う人もいるかもしれませんが、なんと、俺等解散ライブという事でですね、彼方奥の方、俺等の師匠となりますカスタムイエローさんをお招きしています!



(ザワザワザワ…)



えぇえぇ、その形相の悪い御三方様こそが、我等がカスタムイエローさんですよ?


…どうして解散するのか、うん、それは俺の病気でも何でもない、俺等の問題です


この場にいるべきなのは、本当はカスタムイエローさんだった…けれど、俺等は彼等の活躍に憧れ、彼等の曲を全て身体に落とし込み、彼等のエピソードをクソ程までに集め続けた


憧れに憧れて、俺等もバンドを初めて、でもやっぱり追いつけなくて…で、簡単に言えば、俺等は時間を戻せる手段を手に入れた


どうするかは言わないけど、兎に角手に入れた

だからそのチャンスを活かして、俺等はこれまでカスタムイエローさんの真似事をしていたんです


だから、俺等は彼等の頭に思い浮かんでいた曲も全て知っているし、売れる自身もあったし、変わらず尊敬していた事に間違いはなかった、けど、その真似事はもう今日で最後、折角だから我等がカスタムイエローさんの曲を一部披露した上で、本人にバトンを()()()()と思います


じゃあまず、一曲目…俺等の最後のライブの最初の曲は、『夜行』から…、、、







ーー ーー ーー ーー 


「、、、…では、いよいよラストの曲!!本当は来年?再来年?、の春から始まる火曜ドラマのテーマソング、俺等がどうしてもやりたかった曲です。えー…唯一、自信があった、俺等の曲でもあります、『オフサイト』。」


 そう浦井の最後の司会を終えた後に、僕は少しだけ舞台の影へと身を隠す。ごつい鉄の柱に隠れた上へと続くケーブルの内一番手前の二本を掴み、事前に側に置いていたカッターナイフで半分以上の切り込みを入れる。後は運と時間任せで、計算式など一切無い。こんな爆竹みたいな死に方こそロマン…そう言いたい所だけど、正直今の自分に置かれた現状に対して、然程もロマンなんて感じた瞬間はなかった。

 僕は何時もの澄まし顔で持ち場へ戻りアイコンタクトを送ろうと浦井を見たが、浦井は自身のドラムに集中したっきりで此方の様子には一切気付く気配が無い。

 僕もまた、曲に集中する。






 そして、四分弱の僕等のパフォーマンスが終わる頃に、その事態は起きた。




 ガンッドンッ、という重たい二つの音がかなりの広範囲に響き渡り、綺麗な夕焼けの空にに合う様な、ちょっと黒い液体が目の前で弾け飛んでった。色々な衝撃が五感に押しかけるが、流されるままに身体から力が抜けていく。


 赤い液体、紫の逆光、青い悲鳴、黄土の騒音…。


 走馬灯が走ることも無く、僕等は静かに地面に叩きつけられた。そうして呆気なく、虹色の背景が遠ざかっていく。


 それは懐かしい、()()()()だった。

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