第10話
ヤルファさん達が出ていった後すぐに、背が高くスラリとした老人と小柄な老婆の2人が部屋に来てくれた。
「初めましてアルタス様、私はラミ・エルノットと申します。今回は妻と2人で着付けを担当させていただきます。」
「ソラです。よろしくお願いします。早速ですが宴に遅れると大変なのですぐに始めさせていただきます。」
「はい、お願いします!」
2人は早速ヤルファさんが持ってきた服と装飾品を、素早く丁寧に僕に身に付けてくれた。
長年2人でやってきたそうなので、その手際の良さは流石の一言に尽きる。
「終わりましたよ。どこか苦しいところはないですか?」
「はい、それどころか心地よいぐらいですよ。」
「それは良かったです。でしたらご自身の姿をご覧になってください。」
いつの間にか用意されていた姿見は色とりどりに輝く宝石の装飾を身につけ、きらりと輝く絹の生地をまとった僕が映っていた。
あんなに複雑な作りをしてた服もたくさんあった装飾品も的確に取り付けていき、僕の身支度はあっという間に仕上げてしまった。
「これが、すごい!ホントに王様みたいだ!」
「アルタス様にふさわしいと思いご用意させていただきましたが、ここまで着こなすとは流石です。」
ソラさんはそう優しく褒めてくれた。
「リシア様ももうすぐ支度が済むでしょう。玄関までご案内します。どうぞこちらに。」
ラミさんは親切に僕を療養所の入口まで案内してくれた。
療養所の入口は長椅子並べられた待合室になっており、ソラさんと一緒にリシアはそこに座っていた。
彼女もまた僕と同じような煌びやかな衣装を身にまとっていたが、装飾品の宝石はどれも白いものばかりでどこか華やかよりは繊細さを強く感じられた。
「別にワタシまでこんな扱いされなくても……」
リシアはどこか浮かない顔で小言を漏らした。
「あ、着付け終わったのね。似合ってるじゃない、その衣装。この村を救った英雄にふさわしいわね。」
こちらに気づくと彼女は先程の表情とは打って変わって小さく笑い、そう僕を褒めてくれた。
「リシアだって似合ってるよ。一緒に村を救った君にピッタリだ。」
「そう?ありがとう、でもワタシは別に何もしてないわよ。あの場ではただ倒れてただけだし。」
僕が彼女を褒めるとやはり浮かない顔になった。しかし、一息ついた後彼女の表情は変わった。
「……でもアナタの宴だものね。わかったわ、今回はワタシも彼と同じくこの衣装で参加するわ。」
「良かったですリシアさんに納得いただけて。ウルバルの民としてとても誇らしいです。」
ソラさんはとても嬉しそうにそういった。
「では行きましょう。そろそろヤルファが迎えに来てくれるはずですが。」
「失礼します。」
ラミさんの予告通りと言うかちょうどピッタリにヤルファさんがやってきた。
「お二人とも、準備が整ったようですね。とても素晴らしい姿です。こちらの準備も済みましたのでご案内します。どうぞ外へ。」
「2人は一緒には行かないの?」
「私たちは片付けを済ましてからすぐ向かいます。宴に遅れてしまっては行けませんからね。」
「ぜひ楽しんでいってください。」
2人はそう言い、笑顔で僕達を見送ってくれた。
「では行ってきます!」
僕は彼らに手を振り別れを告げた。そしてヤルファさんの後に続き、外に出る。そこには篝火によって薄暗く照らされた巨大な木々がそびえ立っていた。その木々の上には小屋が建てられ、木々の間を吊り橋が繋いでいた。
「これが森と共に生きるウルバルの民の村よ。あんな高い所に家なんてすごいわよね。」
僕の心を呼んだかのように彼女は説明してくれた。
「この森があるのも、この村が無事なのも全て、貴方方のおかげなのです。この宴は私達が用意出来る最上級の感謝の意です。」
段々と周囲が開けてきて、人の声も大きくなってきた。明るく照らされた場所から誰が音楽を奏でており、とても賑やかな雰囲気が伝わってくる。
「もうすぐ会場の広間の入口に着きますよ。ジグランド様おふたりをお連れいたしました。」
ヤルファさんがそう案内され入口の方に向かう。そこには大きな木の扉で閉じられた入口の前に鎧を着て武器を持った人が何人かいた。その内見覚えのある鎧を着た男がこちらへ近づいてきた。
「ヤルファ案内ご苦労。アルタス様、リシア様。改めましてこの度は祝杯の宴にご参加いただきありがとうごさいます。」
「ジグランドさん!こちらこそこんな楽しそうな宴に呼んでくれてありがとう!」
「宴なのに鎧なんて着て、ちょっと力入りすぎじゃない?」
「いやーお2人をお迎えする際の服装が思いつきませんでしてな。それで仕方なくこの鎧で。」
ジグランドさんは少し申し訳なさそうに笑った。
「ではここからは私が。ヤルファ後は頼んだ。」
「了解しました。」
「あれヤルファさんは宴には来ないの?」
「すみません、私には森の監視の任がありますので。しかし今日は特別なのですぐに戻ります。席を外す御無礼をお許しください。」
「多喰らいが居なくなったことで今まで追い出されてきた魔物達が戻りつつあるものね。だからこうやって警備兵を用意してるのね。。」
「そうか、それはとても大切な仕事だ。ヤルファさんありがとう。お仕事頑張ってください!」
「ありがたきお言葉。必ずや戻ります。それでは失礼します。」
ヤルファさんはそう言い残し木々の間の闇に消えていった。
「ではおふたりともこちらが宴の会場です!」
大きな扉を警備兵が開ける。その瞬間村人達からの大きな歓声が沸き起こった。そして空からは色とりどりの花びらが舞い降りてきた。
「す、すごい……!」
「これはウルバルソウジュの花だわ。色も綺麗で香りもよく燃えにくい。宴にはピッタリね。」
広場の中心には大きな篝火が燃え盛り、その周囲にテーブルが並べられていた。そこには村人達が丹精込めて作った料理と酒が大量に並べられいた。
そして小さな人影がこちらにゆっくりと歩いてきた。
「村長、こちらがアルタス様でございます。」
小さな影の招待は小さな老婆であった。彼女が止まると会場は静かになった。
「アルタス様初めまして。リシア様は昨日ぶりですね。私、この村の村長をしております、ノドンと申します。この度はウルバルの森を救っていただきありがとうございます。」
ノドンさんは僕の顔よく見ると頭を深々と下げた。
「いえいえそんな!頭をあげてください!」
「なんと心優しい英雄様なのでしょうか。あなたへの感謝の気持ちを全て伝えたいのですがそれだと日が明けてしまうでしょう。ので早速ですが宴を始めましょう。」
「ではこちらをどうぞ。」
ジグランドさんは僕達に飲み物を用意してくれた。果実の甘酸っぱいいい匂いがこの宴を一層華やかにしてくれる。
「皆の者、我々の森はかの英雄様達の勇気と偉大な力よって救われました。ウルバルの民として彼らに大いなる感謝を込めて!乾杯!」
「「「乾杯!」」」




