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(78)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(29)


『………承知いたしました。シン国王陛下。私が仮の婚約をお受け致します』

『そ、そうか!受けてくれるか!ははっ!それはありがたい!ロッシュ子爵殿……いや、アルフォンス殿と呼ばせて頂こう!』

『………恐れ入りますが、シン国王陛下。此度の仮の婚約をお受けするにあたり、受け入れて頂きたい旨がございます』

『んん?わかった……聞こう』

『有り難うございます。先ず此度の件、表向きは婚約ですが、実際は仮の婚約ということ。時期が来たら必ず解消する。この二点は相違ございませんね?シン国王陛下』

『うむ………間違いない。し、しかし、アルフォンス殿が娘を気に入ったなら正式に』

『仮婚約、のちに解消。決定事項でよろしいですね?』

『わ、わかった。しかし、もしお互い気に入ったならその時はその時で、な、なあ、エルネスト?』

『シン、アルの話はまだ終わっていない。最後まで聞くんだ』

『っ!……す、すまなかった。アルフォンス殿、続けてくれ』

『恐れ入ります。仮婚約の解消時期の"時期が来たら"の解釈は、貴国とグスタフ共和国との和平が整った時点の事。

シン国王陛下、この認識でよろしいでしょうか?』

『そ、それは………ま、まだわからん。グスタフ共和国との和平はそう簡単には行かぬ。相手の出方にもよる…』

『今この状況で、その様な弱気で浅い見通しでは、私は仮婚約を受けかねます』

『な、何っ!?』

『シン国王陛下。失礼ながら申し上げます。今、貴国は侵略の危機に直面しているのを本当にお分かりでいらっしゃいますか?

ざっと見積もってもズフタス共和国軍の兵力は60万。貴国は30万。我がブラーム国軍は100万近くですが』

『貴国の軍備は素晴らしいと聞いておる。大変心強い限りだ!』

『このままでは我が国軍の兵は出せません』

『な、何故っ!?』

『………ルベルテ宰相、貴公はどの様に考えておられますか』

『………和平を結ぶ方法は何も縁組だけではありません。我が国のカードを上手く使えば』

『何!?そうなのか、ルベルテ!何故もっと早くそれを言わないのだ!』

『私は何度も陛下にお話いたしましたが、陛下は縁組の話が出た途端に聞く耳を持たれず、慌てるばかりでございました』

『うっ!』

『私も同じ考えです。貴国には我が国も羨む程の農作物や魚介類が採れます。先ずはそれをカードとし、相手を交渉の席に着かせるのです』

『我がブラーム国のように……だな?』

『エルネスト!』

『シン、お前はまた目先の事で慌てる。落ち着いて周りを見ろ。優秀なルベルテ宰相殿や周りの信頼出来る者の意見を聞け!しっかりしろ!』

『!』

『エルネスト……』

『何かあれば、我がブラーム国軍が援軍を出す。しかしそれには、貴国もやるべき事をした上でないと出さん!我が軍の大切な兵の命が掛かっているのだ!』

『………』

『二年………期限は二年だ』

『二年………』

『二年で成果を出し、グスタフ共和国と正式に和平条約を結べ。但し、仮婚約は二年で必ず解消する。ダラダラと長引かせても意味が無い』

『そんなっ!二年では無理だ!短すぎる!』

『陛下!やり遂げましょう!いえ、我が国の為に必ずやり遂げなくてはなりませぬ。

ブラーム国王陛下、我が国を信じてくださり本当に有り難うございます。私の命を懸けましてでも、二年で必ずや和平条約を結びます』

『ルベルテ………』

『シン』

『!』

『お分かりだと思うが、此度の件で我がブラーム国はグスタフ共和国に敵と見なされる事になるやもしれん』

『っ!………』

『それでも、我が国は貴国を守る。五年前の恩を返すためにも』

『!』

『あの時、大陸全土の大干ばつで貴国も大変だった時に、食糧を送り続けてくれたあの恩は一生忘れない』

『エルネスト………』

『大丈夫だ。シンなら必ずやれる。必ずやり遂げるんだ』

『………わかった。すまない。エルネスト、これからも力を貸してくれ』

『もちろんだ』



病弱で気弱な三男坊だったシン国王は、二人の兄を病で相次いで亡くし、突如国王になった。

自分には無理だと何度も逃げ出したくなった。


その気持ちが似た立場の自分には痛い程わかる。

しかし、自分は全てを受け入れてきた。


理由はどうであれ、国王になったシン国王は国を、

国民を守らなければならない。


自分は公爵領民を、

何よりも先ず、クリスを必ず護らなければならない。




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