51/130
(51)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(2)
その日、予定していた伯父の国王陛下との謁見という名の単なる親族の食事会が急遽中止となり、時間が空いたため久し振りに王宮図書館に向かった。
殆どひと気の無い図書館の奥の片隅に、淡い金髪の少女がいた。
窓際の席に座り、優しい太陽の光が少女の髪をキラキラと照らしていた。
座った足がまだ床につかないのか、たまに揺れている。
その少女は本を読み、何やら必死に書いてはブツブツと呟きながら天井を仰ぎ、また何かを書き出すという行為を繰り返していた。
初めはその奇妙な光景を遠目から見ていたが、
つい好奇心が沸き、傍まで近付いた。
ふと、上から少女が書いている紙を覗き見て驚愕した。
手書きと思われる我がブラーム国の地図上に、
主要都市の産業や港から港への流通経路、
国内のとある領地の産業の売上高と損益額らしきものを算出したような記述が目に入った。
他国からのスパイだと疑った。
紙を取り上げ、驚いて顔を上げた少女を見て、
一瞬時間が止まった。
大きな碧色の目の、
大変美しい少女だった。




