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(49)夜更けの侵入者(4)


会いたかったと言われて、

一日足りとも私の事を想わなかった日は無いと言われて、心が震えた。

信じられない、涙が出そうなくらい嬉しい。


けれど、

私のラファイエリ伯爵令嬢としての矜持と現実が、

今のアルフォンス様の言動をどうしても受け入れられなかった。



「わたくしは、決して、嘘つきではございません」

「クリス!」

「………アルフォンス様は、わたくしに何を求めておられるのですか?」

「!」

「……御自身の縁組が決まっているのに、何故、わたくしにそばにいろ等と気安く仰るのですか?」

「気安くなんて思っていない!」

「……では、わたくしを愛人にでもなさりたいのですか?」

「クリスっ!」

「14歳の小娘でもわかります。

貴方様はわたくしを嘘つき呼ばわりされますが………アルフォンス様は大変、不誠実です。

マキシム国の第二王女様に対しても……わたくしに対しても」

「っ!………」



泣きそうな表情で私を見つめるアルフォンス様。

そのお顔を見ても、私の言葉は止まらなかった。

言わずにはいられなかった。



「わたくしを………日陰者にでもなさるおつもりですか?」

「日陰者!?そんな気は全く無い!!」

「縁組が進んでいる貴方様と会っている事が他に知られたら、

今のこの状況は以ての外………わたくしは貴族の令嬢としてまともな縁組を望むことは出来なくなるでしょう。その瞬間にラファイエリ伯爵家も………終わりです」

「っ!………」

「そして何よりも、フレデリーグ公爵様の御名前に傷が付きます。

マキシム国とは予想だにしない火種になってしまうかもしれません。

……この二点は、絶対にあってはなりません」

「………クリス、頼む………聞いてくれ」

「いいえ。これ以上、お話することはございません。

今すぐここからお帰りくださいませ。

さもないと………大声で人を呼びます」

「クリスっ!」

「もう、そのように軽々しくお呼びにならないでください」

「っ!」

「………さようなら、フレデリーグ公爵様。

今まで本当に………本当にありがとうございました。

どうか………マキシム国王女様とお幸せに御過ごしくださいませ」



なんとかここまで涙を溢さずに耐えたけれど、

アルフォンス様に頭を下げた時に、一滴、落ちてしまった。

暗闇の中、涙の滴が月明かりに照らされながら床に落ちた。



「………クリス。私は必ず貴女をお迎えに参ります」

「!?」

「絶対に、貴女を誰にも渡さない」

「っ!?」



アルフォンス様の言葉に驚いて顔を上げると、

バルコニーから黒い人影が闇夜に消えていった。



暫くの間、

アルフォンス様の香りが薄く残るその場で、

私は呆然と立ち竦んでいた。




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