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二次元獣襲来

「遅い!」


ある昼下がりの都会。

ここはアニメの聖地とも言われる場所、

夏羽原(なつはばら)


行き交う人々は皆アニメキャラがデザインされた紙袋にさっき買ったばかりであろう

フィギュアや最新作のアニメのBlu-ray、今日発売のラノベ、そして推しの声優さんのCD等を詰めてご満悦な顔で連れの友達と休日の今日を満喫しているようだ。


しかし大きなモニターのあるアニメショップのビルの前で叫んだ少年はどうやら不機嫌な様子である。


「イヌコロのやつ、よりによって今日遅刻かよ!いつも時間通りに来るくせに!」


彼はイヌコロの友達、芝谷。

どうやら大事な待ち合わせに イヌコロが現れないようだ。

芝谷は鞄から何やらチケットを取り出し眺めている。その目には物凄い力が入っているが。


「雛野ココネ、マンツーマンお話会。

開演時間12時半」


芝谷がスマホの画面を見て時間を確認する。


「現在12時15分。うおおー!!時間がねぇー!!」


頭をかきむしる芝谷。

事情を知らない人が見たら何かに取りつかれたんじゃないかと疑われる場面である。


そう、本日はあの新人声優雛野ココネと二人っきりで話をする事が出来るイベントのある日で芝谷とイヌコロはそのイベントに参加する予定なのだ。

雛野ココネの人気は凄く、今彼の後ろの大画面のモニターにも彼女のニューシングルのCMが大音量で流れている。


「今日のお話会は抽選で15人だけしか当選しないから1人5分も話せる時間がある神イベントだってのに!しかも……」


そう言って芝谷はもう一枚チケットを取り出した。

イヌコロは自分で持っている為それではなさそうだ。

芝谷は嬉しそうにニヤリとチケットの表記を見て口元を歪めた。

もう一枚のチケットにも芝谷の名前が表記されているのである。


「なんと俺は二枚も当選してゲットしてるんだよなぁ。合計10分もココネさんを独占出来るのはファンクラブのメンバーでも俺だけだ!」


世界で唯一とでも言いたげなテンションになる芝谷。

彼の胸の中には今から自分しか経験出来ないココネさんとの10分間を楽しみに思う気持ちと緊張と感動が渦巻いているのである。


「なのにイヌコロは何してんだよ!

あいつにこの事を自慢してからイベントに行きたいのに!」


友達を置いていけないからではなく、どうやら汚れた理由のようである。

と、そんな時ようやく待っていた声が遠くから聞こえてきた。イヌコロである。


「ごめん、芝谷!遅れちゃってー!」

「たくっ!遅いんだよー!」

(ん?誰か連れてる?なんだ、別の友達も連れて来たのか。まさかあいつに彼女なわけないしな)


遠目には分からなかったが、イヌコロは誰かを連れて約束の場所までやって来た。


「遅れるなら遅れるって言えよ!」

「え?何回も電話したけど」

「はぁ?」


さっきから時間を確認していたスマホの画面を見ると確かに時計表示の下に不在着信が15件も届いていた。

どうやらお話会前に注意事項にしたがってスマホをサイレントモードにしていた芝谷。

焦る気持ちから不在着信を見ていなかった様だ。

そんな芝谷はしれっと言った。


「うん、それはどうでも良い」

「どうでも良いんだ。まぁイベント前にスマホの音鳴らない様にしてたんならしょうがないよね」

「おい、やめろ。怒れよちゃんと」

「えー?じゃあちゃんと時間見てよー」


言われた通り棒読みで怒るイヌコロ。


「よし、これで自慢話出来るわ」


どうしてもお話会に2回参加出来るのをイヌコロに自慢したい芝谷。

流石に自分のミスを許されて自慢出来るメンタルは持ち合わせていなかったのだろう。


「あー、それじゃ改めて今日俺達雛野ココネさんのお話会に行くわけなんだけど実は俺さ、今日ココネさんと10分間も……」


そこまで言って彼はフリーズした。

イヌコロの隣に女の子がいたからだ。

いやもしかして彼女を連れてきたのか、そもそも彼女がいたのかとかそういう次元の衝撃ではない。

黒髪のロングヘアーにクリッとした可愛い目。

どこかで見た顔、いやこれから見ようとしていた顔。

そう目の前にいるのは。


「あ、初めましてー。雛野ココネですー」

「な、あ、あががが……」


目の前に広がる状況。

自分の友達が雛野ココネを連れている。

いやそれだけではなく2人は手錠でつながれている。

今後ろのビルの大きいモニターで放送されてるCMに出演してる本人がそこにいる。

普通なら大騒ぎになるこの状況に何故か周りの人達は気にも止めていない。

異常だらけの異常事態に空いた口が塞がらない芝谷。


「あの……コレドウイウコト?」

「えーと、何から話せばいいのか……」


カタコトで喋る芝谷に申し訳なさそうに話そうとするイヌコロ。

その時だった。

さっきから街を行き交う人々の1人が自分の鞄に違和感を感じて鞄から何かを取り出した。


「あれ?なんかガサガサ言って……な、なんだこりゃ!?」


その人が取り出したのは最近発売したラノベ「デジタルアクションファンタジア」の5巻だった。

なんとその表紙に描かれてる主人公の後ろにいる敵のモンスターがイラストのはずなのに動画の如く動いているのだ。

そして次の瞬間。


ジュオオオオオオ!


「うわぁぁぁぁぁ!?」


ラノベの表紙からモンスターが飛び出して来た。

そしてどこからともなく聞こえる機械的な女性声のアナウンス。


「二次元獣襲来。二次元獣襲来。ガーディアンとエンジェルは直ちにアフレコ戦闘体制に入りなさい」


「え?わぁぁぁ!」

「きゃあぁぁぁ!?」


突然街に8本の足を持つ鋼鉄の蜘蛛が現れたのだ。

今度は雛野ココネの登場とは違いちゃんと大騒ぎになった夏羽原の街。


「いっ!?あれってデジタルアクションファンタジアのメタルスパイダー!?」


更なる非現実な衝撃になんとか顎を戻して喋れる様になったらしい芝谷。


「うわ!?このタイミングで出たか!」

「えーとイヌコロくんのお友達だよね?」

「あ、はい芝谷です」

「芝谷くん、詳しい話は後でするからちょっとイヌコロくんを借りてもいいかな?」

「あ、はいどうぞどうぞ!」

(やったー!雛野ココネさんと喋れたー!

いやじゃなくてなんだこの状況!?ていうか借りる?)


心の中でノリツッコミをする芝谷。

そんな彼の目の前で自分の友達と手錠に繋がれた雛野ココネがメタルスパイダーの前に立ち、イヌコロの持つスマホを2人で覗きこんだ。


「レベル3の二次元獣ですって。なんとか僕でも戦えますね」

「ごめんね、私まだ役少ないからイヌコロくんのレイヤー化の種類少なくて」

「いえいえ!どれも主役級のキャラですからレベル高いですし、十分戦えますよ!」


(あ、俺より喋る時間ながーい)


さっき一瞬ココネと喋れただけで感動していた芝谷の目の前で繰り広げられる自分には理解出来ない2人だけの会話。


「それじゃあ、お願いします!ココネさん!」

「任せて!イヌコロくん!」

そう言うと2人は息を整えて同時に叫んだ。


「「演劇転生!!」」


その瞬間2人の手錠が光に包まれて離れ、目の前に光のドアが現れた。

そしてそのドアに向かって再び叫びながらイヌコロは光のドアをくぐる。


「デジタルアクションファンタジア、オンエア!」


するとあっと言う間にイヌコロの姿が変わった。

その姿とは。


「お!?おおお!?あれってデジタルアクションファンタジアで雛野ココネさんが演じてる主人公のレオン!?」


という事らしい。

芝谷が言った通り、レオンという

全体的に青色でまとめられた冒険者風の服装に特徴的なΩのマークが入った帽子を被った男の子のキャラの姿に変わるイヌコロ。

まるでプロのコスプレイヤーが着るレベルにクオリティの高い衣装である。

そしてまたどこからともなくアナウンスが聞こえてきた。


「レイヤー化確認。

君待イヌコロ、ONAIR」


そのアナウンスが終わった途端イヌコロがくぐった光のドアが今度は白い台本とマイクスタンドに変わりココネの手元に台本が収まり、スタンド付きマイクが目の前に降り立った。


「あああ!あれはデジタルアクションファンタジア第15話の台本!」


という事らしい。


「さて、今回で3回目。いい加減になれないとなぁ」

「大丈夫今度こそ上手く出来るよ!」


目の前のマイク越しにイヌコロに伝えるココネさん。


そして2人は笑ってアイコンタクトをして言い放つ。


「「アフレコ開始!!」」

お久しぶりです。

前回から大分時間が経ってしまいましたが、少しずつ投稿していきたいと思います。

下手な文章ですがよろしくお願い致します。

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