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ゲームを50周したガチ勢オタク、断罪イベントを生で見られて感無量です

初めまして、こんにちは。

婚約破棄された悪役令嬢が、なぜか大喜びでランウェイを歩くように退場する第1話です。

まずはご一読いただけますと幸いです!


「――アシュリー・フォン・ブラウエル公爵令嬢! お前との婚約を破棄し、本日をもって国外追放処分とする!」


きらびやかなシャンデリアが輝く、王宮の夜会会場。

その中央で、私の婚約者である第一王子・カイルが勝ち誇ったような声を響かせた。

カイルの隣には、か弱い悲劇のヒロインを演じるように、うるうるとした瞳でこちらを見つめる聖女のエレンが寄り添っている。


「アシュリー、言い訳は見苦しいぞ。お前がエレンのドレスにワインをかけ、階段から突き落とそうとし、さらには暗殺者まで差し向けた証拠は、すべて揃っているのだ!」


王子の怒声に、周囲の貴族たちは「あぁ、あの高慢な令嬢がついに……」「自業自得ね」とヒソヒソと侮蔑の囁きを交わし合っている。

冤罪。完全なる、冤罪である。

身に覚えのない罪を突きつけられた私は、ショックのあまり……。


(……ちょっと待って。待って待って待って。画質、良すぎじゃない!?)


絶望するどころか、脳内でスタンディングオベーションを捧げていた。

その瞬間、私の頭の中には「前世の記憶」が濁流のように蘇っていたのだ。

私は日本のどこにでもいる、少し……いや、かなり熱狂的な乙女ゲームオタクだった。

そしてこの世界は、私が睡眠時間を削り、私生活を犠牲にして、文字通り【50周以上】やり込んだ大ヒット乙女ゲーム『ルミナス・ラブ』の世界。

そして目の前で、鼻の穴を膨らませてドヤ顔を決めているカイル王子は、ゲーム内における「クズ度ナンバーワン」の攻略対象。

その隣で可憐に震えている聖女エレンは、男をたらし込んで周囲を破滅させる「裏の悪女」ヒロイン。

つまり、今ここで起きているのは、ゲームの共通ルートのクライマックス。

悪役令嬢アシュリーが、冤罪によってすべてを奪われる『断罪・国外追放イベント』そのものだった。


(ひゃあああ! 生カイルの「国外追放とする!」が聞けたわ! ボイスついてないのにもう脳内で完全再生される! エレンのあの被害者面も、50周見た CGのままだわ! 神イベントを生で見られるなんて、前世で徳を積みすぎてたのかもしれない……!)


心の中で大興奮のダンスを踊る私を、カイル王子は「絶望して言葉を失っている」と勘違いしたらしい。さらに調子に乗って言葉を重ねてくる。


「どうした、アシュリー。あまりの罪の重さに、声も出ないか? 自身の愚かさを悔いるがいい!」


カイル王子、本当にありがとう。君のアホ面も、ゲームの解像度通りで最高だよ。

50周プレイしたガチ勢の私からすれば、エレンが自分でドレスにワインをかける姿も、自分で階段から転げ落ちて怪我をした自作自演のプロセスも、すべてゲームのイベントスチル(一枚絵)で確認済みだ。

さらに言えば、カイル王子が聖女に貢ぐために、王宮の国庫から大金を横領している裏設定や、その証拠が詰まった秘密の裏帳簿がどこの机の引き出しにあるかも、全ルートをコンプリートした私には手に取るようにわかる。

ここで証拠を出して論破することも、ぶっちゃけ簡単だ。簡単、なのだが。


(いや、論破するメリットが1ミリもないわ)


だって、この国は数年後、このアホ王子と腹黒聖女のせいで内政がガタガタになり、隣国からの経済制裁で破滅へと向かうことが確定している。泥舟どころか、すでに大穴の空いた潜水艦だ。今のうちに合法的に、しかも公爵家の莫大な慰謝料を持って出国できるなんて、最高以外の何物でもない。

何より。

この国外追放ルートの先、隣国の『ガルディニア帝国』には。

ゲーム内で私が50周中、45周はそいつの個別ルートを周回した、私の最推しキャラクター。

冷酷無比と恐れられながらも、孤独な過去を持ち、ルート後半では狂気的なまでのスパダリ溺愛を見せてくれる、隠しボスの『レナード公爵』がいるのだから!


(カイルみたいなクズ肉はエレンに熨斗(のし)をつけて差し上げます。私は今すぐ出国して、推しに会いに行きます!!)


「――アシュリー! 聞いているのか!」


しびれを切らしたカイル王子が机を叩く。

私は、前世の推し活で鍛え上げた、人生最高の淑女の微笑みを浮かべた。


「はい、カイル殿下。お話はすべて伺いましたわ」


「ふん、ようやく認める気になったか。見苦しく泣き叫び、許しを乞うなら――」


「いいえ? 殿下のおっしゃる通り、婚約破棄も、国外追放も、喜んでお受けいたします」


「……は?」 


カイル王子の言葉がピタリと止まる。

隣の聖女エレンも、「え? 泣き叫んで私を罵倒するんじゃないの?」と言いたげなマヌケな顔をしている。


「冤罪の証拠を並べ立てて、この腐りかけた王宮の泥仕合に付き合うほど、私は暇ではありませんの。お望み通り、今すぐこの国を出ていって差し上げますわ。どうぞ、そちらの素晴らしい『聖女(笑)』様と、末永くお幸せに」


「……っ!? アシュリー、お前どこまで傲慢な――」


「それでは皆様、お達者で! ごきげんよう!」


カイル王子が何かを叫び散らす前に、私はシャキーンと背筋を伸ばし、夜会の中で誰よりも美しく、誰よりも輝く笑顔でドレスの裾をひるがえした。

そして、唖然として声も出ない貴族たちの間を、ランウェイを歩くトップモデルのような堂々とした足取りで、颯爽と夜会会場を退場したのだった。

背後から「おい! 待て! アシュリー!」というカイルの情けない声が聞こえた気がしたが、知ったことか。

待っててね、レナード様。

50周分の愛とゲーム知識(チート)を引っ提げて、今すぐあなたの破滅フラグをへし折りに行きますから!

こうして、私の最高に楽しい「国外追放(ご褒美)ライフ」の幕が開けたのだった。

読んでいただきありがとうございました!

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