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クラフトジュエル物語

「…………」


 あれから日を跨いで、今日は3人+看板娘1人で神殿に参拝。最初に参拝したときから色んな経験してるしジョブもいくつかマスターしてるんで、新しいジョブも増えてるだろう。


 一応、一柱の神像に祈りを捧げればジョブは開放されるという話だが、最初に来た時のように8柱全部の神像を回ってお祈りしていく。

 途中、例のGMにょこの壁画も見つけたので挨拶した。


 今回の目的は細工師関連のジョブ開放。練習と言えど、やはり細工師に変更した方が上達が早いんじゃないかという目論見だ。

 なんで、神殿行ってくる、と告げたら芋づる式に3人がついてきたという話。


 看板娘は……なんだろうな。この前は道案内という名目だったが、今回は特に理由なくついてきた。別に理由がなきゃついてきちゃダメなんてことはないが。むしろ道中は賑やかなほうが良いから大歓迎だ。


 ――

 ――――

 ――――――


「目的のジョブは手に入ったか?」

「おかげさまで。これで研磨の練習ができるよ」

「ノクスさん、いいのができたらうちの店で売ってもいいですよ」

「コトネの店って寝具屋だろ、石なんて置いてどうすんだよ。気持ちだけ貰っとくわ」


 看板娘の頭をごしごしっと撫でて、元気を分けてもらった。

 よし、こんだけ期待されてるんだから、頑張りますかね!


 ――

 ――――

 ――――――


 貸し作業部屋の扉を開けると、土埃と金属の匂いが鼻をくすぐる。

 全財産の1/5を支払って、今日1日の利用券をレンタルした。割合でいうと結構でかい買い物だな。


 えーと、あれは織り機、炉、金床、丸ノコ、石臼……なんだろうあの回転する台。お、宝石研磨機(ファセットマシン)見っけ。たしかにゼンカン師の所有物より安そうだけど、俺には丁度いい。


 様々な作業道具が置いてあり、部屋の広さの割には手狭さを感じる。こんな部屋を何個も用意して予約待ち、みたいなのは無かったので、恐らく採掘ダンジョンと同じようにインスタンスになっているのだろう。


 ちなみに、部屋を借りるときに上級、中級作業部屋もあったから、そっちを借りればもっと性能のよい作業台が揃っているのだと思う。

 ま、今の状態じゃ逆立ちしても捻出できる金額じゃないから考えても無駄か。



 宝石研磨機の席に座り、昨日掻き集めたガラス玉を取り出す。

 あー、なんか緊張すんな。サポートは当然のごとくONなので、なんだったか、ドップ棒? にセットしろとせっつかれる。


 ドップ棒にエーテルを流し、ガラス玉を固着させる。

 日中軽く調べたら、この棒にセットするのは専用のワックスを使うらしく、固まるまで待つのに1日かかるらしい。

 ありがとう魔法文明……現実の宝石職人ってマジすごい。


 それじゃ、砥石代わりのラップをつけてっと……。


 ――

 ――――

 ――――――


 チャララン。

 なんて安いSEが鳴り、最初のガラス玉を磨き終えた。


 が、ゼンカン師のガラス玉宝石とは雲泥の差、月とすっぽん。

 削りすぎて随分と小さくなったし、中に何か入っていたっぽく汚い反射になっている。こういうのインクルージョンって言うんだっけ?


 形状や研磨に関しては、システムによるナビや細かいメモリでの調整によって初心者でもそれっぽくはなっているが、技術の差が顕著に出ている結果となった。



 正直見るに堪えない出来だが、最初に作った作品でもあることもたしか。

 いつか見返してやる為に、大事にしまっておこう。


 ――

 ――――

 ――――――


 これで6個目。


 最初は1個磨くのに20分かかっていたが、今回は10分で完了した。

 研磨も最低限で済んだし、成形し直しが無い分はやく終わったのだろう。

 10分集中するのでも随分と気を張るなぁ。


 つってもリアル宝飾だと一日仕事もざらだろうから、贅沢な悩みか。

 でもゲームで6時間がっつり集中して宝石1個、とか言われたら嫌になっちゃうよな。ゲーム的簡略化バンザイ。なんなら10分でも長いという人もいるだろう。ボタン一つ押せばガッチャーンキラキラーンの5秒で完成するゲームの方が多いからな。




「ん、よくできてるじゃないか」

「おわっ!? うゆ!?」


 いつのまにかうゆが入室しており、突然カットインしたかと思えば磨き終えたガラス玉を覗き込んでいた。


「え、入れるんここ?」

「入れたな。インスタンスならパーティメンバーは入れるんじゃないか?」


 うゆは近くの金床に近づいてみるが、見えない壁に阻まれて触れない。

 さすがに施設を利用できるのは金を払った人だけみたいだ。

 そしたら一緒に部屋レンタルしませんか~、みたいな野良で溢れかえってたのかもな。



「ノクスは集中すると周りが見えなくなるらしい」

「周りが見えなくなるぐらい集中してたんだよ」

「ん、実にいいことだな」



 それにしても見えなすぎだろとは思うが。うゆのやつ、一体いつからいたんだろう。


「ノクス。これ、貰っていいか?」

「え? それ練習用で数打ちのやつだし、価値はないけど」

「捨てるのか?」

「や、捨てはしないかな。そういや全然使い道考えてなかったわ。……うーん、欲しいなら持ってっていいよ」

「ん、ありがたく貰っていこう」



 こんなもん何に使うんだか。尖ってはいるから撒菱には使えるかもな。


「どんどん量産するつもりだから、必要ならそれも後で渡すわ」

「ん、助かる。ただ、価値がない訳ではなさそうだぞ。取引に出せば300Tぐらいで売れるんじゃないか?」


 えぇ……売値60Tのガラス玉が研磨するだけで300T? それはそれでなんだか怖いなぁ。現代の錬金術じゃないか。

 いや、10分で1個できるから、時給1440Tって考えると全然低いな。採掘ダンジョン行ったほうが稼げる。


「何に使うんだか知らないけど、投げ売りするよりうゆに有効活用してもらった方がいいわ」

「ん。助かる」


 ――

 ――――

 ――――――


 チャンチャラランっ♪


 何度目かのちょい良さげな音が響く。

 システム的には大成功という判定なのだろう。最初に磨いた石に比べてかなり出来が良い。


 ただ、ただそれでも満足はいっていない。なぜなら、これまでのゲーム経験からして、これより上に極大成功あたりの判定があってもおかしくはないからだ。



 と思って、何度も磨いてはいるのだが、大成功止まり。

 成功と大成功の二種類だけ、ということはないだろ、とは思うのだが自信がなくなってきたな。


 ガラス玉の研磨で極大成功が出せれば、心置きなくメインの石を削れるというものだ……あら?

 折角のいい所だと言うのに、あれだけあったガラス玉の在庫が尽きてしまった。


 や、正確には使っていないガラス玉があるのだが、中に気泡が入っていたり不純物が見えたりとで弾いたのだ。

 何回かそういうダメそうなので磨いてみたが、明らかに失敗だろこれっていうSEが鳴ったので、途中からは気にしているという訳だ。


 参ったな……急遽トレード機能でガラス玉買うか? それとも、もうメインの石に行っちゃうか……。



 ガチャッ


「あー、そこに置いてるから持ってって……あれ、シオン?」

「えへへ、来ちゃいました」


 うゆがまた練習用の磨いたガラス玉を掻っ攫いにきたのかと思ったら、予想に反してシオンだった。


「作業部屋狭いっしょ。どうしたん?」

「えっと、これ……要るかと思って……」


 そう言ってそっと机に置かれたのは、ガラス玉の数々。


「えっ、これ今めっちゃ欲しかった! 助かる!」

「本当ですか……? コトネちゃんも喜ぶと思います……!」

「え、コトネが?」

「用事があって採掘ダンジョンに行ったついでだそうです。なんて、ふふっ。なんの用事なんでしょうね」


 そこは言わぬが花、何も言わずありがとうと述べておこう。


 コトネが持ってきたガラス玉はなんというか、俺が取ってきた石より大きめで不純物もなく、透明度が高い。


 もしかして採掘で手に入るアイテムの質が良くなる、みたいなスキルとかあったりします?

 で、素材の質もある程度よくないと極大成功もしない、みたいな……。



「…………早速これ使わせて貰うわ」

「あ、あの、見てていい、ですか?」

「もちろん。見てるだけでも結構面白いよ」


 追加されたガラス玉の中で、まぁまぁ良さげなのを選んで、ドップ棒に装着。カットの方法は基本のブリリアントカットだ。


 ――

 ――――

 ――――――


「ふぅ……これでドップ棒から取り外して……」


 ドップ棒に充填されたエーテルを抜くように意識して、磨き終えたガラス玉を取り外す。

 今までで一番手応えがあった……!


 こい、こい、こい……!





 パーンパララパッパパパラパパーンっ♪



 と表現でもしそうなご機嫌なSEが鳴り響く。


「よっ……しゃあ!」

「わぁ…………キレイ……」


 そんなSEと褒めてくれる仲間がいれば、俺もご機嫌にならざるを得ない。ついつい満面の笑みを浮かべてしまう。

 自身の技術もそうだけど、素材も一定以上でないと極大成功にはならないんだなぁ。



「ほぅ…………」


 シオンはガラス玉の宝石に未だ見惚れている。わかる、ずっと見ていたい魔力があるよな。

 さて! ガラス玉を極大成功させたことで自信がついた。次からが本番だ!

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