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スポーン地点は大混乱

 ぬるま湯に浸かっているような気持ちよさで夢うつつで揺蕩っていると、徐々に視界が鮮明になってくる。

 気がつくと広場にぼーっと突っ立っていた。周りにもたくさんの人が突っ立っており、思い思いの行動をしているように見える。

 宵闇色だった空は青白くなっており、ところどころ見える雲が天気の良さを醸し出している。

 雲一つない快晴より、ちょっとは雲があったほうがいい天気っぽさあるよな。


 と、そんな感慨にふけっている場合じゃない。一緒に降り立ったであろう2人はどこだろうか。フェリシアはなんとかなるとは思うが、うゆは一人だと正直不安だ。

 喋り方はしっかりしてそうなんだけど、所々抜けてる印象が強い。


「おーい、うゆ~! 居るか~!?」


 周りの人からなんだこいつみたいに見られるがスルーだスルー。

 友人と合流しようとするプレイヤーもそれなりに居るようで、活気があると言えばいいのか。記念撮影する人も居て、まるでハチ公前広場だ。



「むお~~~~~!」



 あ、この声は。

 声の聞こえた方に近づくと、案の定プレイヤーの群れにもみくちゃにされ身動きの取れなくなっているうゆがいた。

 アバターの身長ちっちゃいから周りから気付きにくいんだよな。

 いつ着替えたのか知らないが、駆け出し冒険者みたいな服になっている。


「大丈夫かー」


「ん、ノクスか! ここだ、すまんが手伝ってくれ」


 洗濯物みたいに揉まれているうゆを両手で引っこ抜き、スポーン地点から離れるように動く。


「む、誰もだっこしろとは言ってないが」


「わりぃわりぃ、あと少しだから我慢しろって」


 全然悪いと思ってないだろう、と文句を言いながらも、腕の中でも大人しくしてくれた。

 魚みたいに腕のなかで暴れたら困るからな。どこのCMだよ。


 似たような装備のプレイヤーの波を泳ぎ、やっとの思いで人混みから脱出し、ほっと一息つけた。


「ふぅ、祭りかよってぐらいの盛り上がり具合だったな」


「ん、あながち間違いではないな。オンラインゲームのサービス開始日なんて祭りみたいなもんだろう」


 と冷静に分析するが、耳元で喋られるのはこそばゆい。


「おーい、うゆさんや。そろそろ降ろしていいか」


「ん? あぁ、そうだったな」


 セミみたいに張り付いているうゆをゆっくりと地面に降ろすと、両足を地面につけてそのままころんと地面に転がった。


「なにしてんの」


「まだ夢の中に慣れてないんだ、仕方ないだろう」


 別にぶりっ子のつもりじゃないぞ、と顔を赤くして断りを入れる。ゆっくり立ち上がって、何でもないように腕を組んでいる。

 さっき転んだせいか背中には草がちらほら付いているが、自分で落とすそぶりはないようで、手で草を払ってやる。


「草がついてんぞ。もう、アバターは可愛いんだから、身だしなみぐらい気をつかえよ」


「ん!? そ、そうか?

 見る目があるな、お前というやつは!」


 ふんふん鼻息を荒くしながら、なされるがままに草を払われている。見た目だけなら美少女だからな、アバターの出来に相当自信があるのだろう。


「ならさっさと初期装備を卒業しないとな。ノクスも村人Aみたいな姿では格好つかないだろう」


 お、おお? 俺も装備が変わっている!!

 聞けば、夢幻世界からソムニアには夢をまたいでアイテムを持ってこれないのだとか。そらぁRPGの冒頭から強そうな格好してる奴がいたら興醒めするよな。

 例外として、ソムニアから衣装やインテリアなどを持ち出すことはできるらしく、あっちを充実させたいから慣れないMMOで活動するプレイヤーもいるのだとか。


 メニューを開いてみれば、見た目通り「村人の服」と書かれており、お察しの通り防御力は1。

 良いねぇこの感じ。持論だがニューゲームを開始して、ひとまず全ての装備欄を埋めるまでが一番楽しい時期だと思っている。



「しかし、運良くノクスとは合流できたから良いものの、フェリシアとは完全にはぐれたな」


 そうなのだ。どうにかして合流したいが、フレンドからメッセージとか送れないだろうか。



「なぁ、そっちからは見えないか? 私は背が低いものでな」


「って言っても、俺も別に高い訳じゃないからなぁ……」


 たしかにアバターは実身長よりプラス3cm高くしたが、他のプレイヤーと比べたら普通ぐらいだし、うゆほどではないとは言えフェリシアの身長も低めだから人混みに埋もれるのだ。

 どうにかして高いところから見下ろせれば……。


「うゆ、ちょっといいか?」

「ん? なんだ……おわっ!」


 完全に人任せにする気満々のうゆの両脇に手を差し入れて、スッと上に持ち上げる。


「どうだー、見えるかー」


「獅子の王になった気分だな。だが、この程度で見える訳ないだろう」


 残念だな、元から期待はしていなかったが。次代の獅子の王は剥奪ということで、スッと降ろしてやる。


「しかし持ち上げるという案は悪くなかったぞ。……そうだ、妙案を思いついた」

「妙案?」


大体こういう時って微妙な案なんだよな。


「ノクス、私を肩車してくれ」

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