プロローグ
深夜26時――草木も眠る丑三つ時。
民草の大多数が就寝をしているというのに、この時間に国内だけで同時接続数100万人を達成したとされる、超大型フルダイブMMORPG『ソムニウム・セフィア』。
俺達は新調したばかりの得物の握り心地を確かめ、以前土をつけられた憎きモンスターに再び相対した。
あいつは俺達を敵だとすら認識していないようで、やけに大きいクッションのような体をぽよぽよと弾ませながら徘徊している。
「今度こそ、絶対に倒す!」
いくぞ! と啖呵を切り、殴るという用途には一際秀でた形の棍棒を片手に、気迫とは裏腹にジリジリと慎重ににじり寄る。
このホームセンターの木材売り場のような匂いの棍棒も、いずれ汗や血の匂いが染み付くのだろうか。
リベンジに燃えているのは、さっき出逢ったばかりの仲間も同じようで――
「が、頑張ります……!」
外見とは不釣り合いな無骨な棍棒を握りしめ覚悟を決める女の子と――
「ま、さっきのとは違う個体だろうがね」
杖代わりにしていた棍棒をよいしょと振りかぶり、勢いあまってバランスを崩す少女――
つまるところ『ソムニウム・セフィア』では最弱のモンスターを3人で囲んで、お揃いの棍棒でどつき回すという冒険というにはあまりにもお粗末な光景。
はたから見れば泥臭く感じるのだろうが、俺達初心者3人にとっては夢のように煌めく青春の1ページなのだった。




