当時のイラク北部の状態・・クルド人のための救援物資が送られる地・・ザッホー
バグダッドに泊まっている間は、もちろんバグダッド市内をはじめ、近郊といっていいと思われるカルバラ病院など日帰りコースの場所を訪問していた。
北部に行くことになった時の起点は、当時バグダッドに次ぐ第2の都市と呼ばれていたアルビル(エルビルと書かれていることもあると思う・・)で、ここからはキルクークやザッホーなどを訪れることになった。その時一緒に行った人の中に、まだ当時は大学生だったが、NGOに所属していて、浄水器を贈るのに、イラク全土までは無理なので、どこに持って行くのが効果的なのか下見をしてきてほしいという依頼を受けてきている人がいた。そこでまず、クルド人自治区に今はなっている地域だが、当時、日本の新聞でクルド人に対して迫害・・といった報道もあった北部を訪れた。
実際にあとで南部に行ったときのことを考え合わせると、南部に行くためには、橋がすべて落とされているため、かなりの迂回が必要となり、まずは動きやすい北からということだったのかもしれない。
北部のホテルに関しては、いろんな手帳から何から引っ張り出してみたが、何のメモも残っていなかった。その前に訪れていたバグダッドに比べたら、驚くようなことはほとんどなかったと言っていいだろう。北部にも戦禍は及んでいて、病院に薬がないことは同様だったが、抗生物質や米などを医師に手渡し、次回来る時に必要になると思われるものをリストにしてあげてもらい、比較的簡単に事がすんでいる。
そして「ここでは、浄水器の必要はない」と記していることからして、他のイラクの状況と比べて、かなりいい状態だったことがうかがわれる。
ザッホーはイラクでもかなり北に位置する部分で、冬は確かに寒かったのだろう・・私が見た新聞記事の記憶では、山岳をよじ登る人の姿と、イラクの迫害を受けてクルド人が逃げのびた場所のようなイメージで書かれていた。
私たちが訪れたのは6月の初旬で、赤いけしの花が、あちこちで咲き、かなり暑さを増してきているイラクの中で、さわやかな風が吹き抜けるこの高原地帯は非常に過ごしやすい。
トルコ側から、この場所に散乱している援助物資を求めて入り込んでくるクルド人が多いと聞いて、複雑な気持ちになった。だって、彼らは、ペットボトルの水を使って顔を洗っているんだもの・・
同じイラクの国内で、まともな水が得られないで、つぎつぎとコレラにかかっているイラク国民がいる中で、どうしてここばかりにこんなに物資が集中しているの?
****************************
この時のことは、91年に帰国した際に、知人の催したクリスマスコンサートで賛助出演の形で少し歌を歌った後で、朗読する機会をいただき、その際に現地の報告をした原稿が残っていました。
記憶をたどるよりもその原稿をそのまま書いたほうが確かだと思うので、原稿を転載します。
****************************
91年12月のコンサートで、童話の朗読の後に話した文面です・・
次に、この場を借りて、今のいろいろなボランティアの現状について少し話させていただきます。
ひところ話題になったクルド問題ですが、北部は水源地があるため水も美しく、また、国連からの援助物資が山積みになっていて、この国内では一番豊かといえる地になっています。
今では、トルコ方面から国内へ食糧を求めて流れてきたクルドのほうが多いくらいです。
むしろイラク国内での物価の急上昇による食糧不足が問題です。
経済封鎖によって、物が入りづらくなっているのは、皆様もご存じでしょう。
今も、トルコやヨルダンなど、近隣諸国から闇物資は入ってきていますから、お金を出せばバグダッドでは手に入ります。
ただし、べらぼうに高価で、とても庶民に手が届く価格ではない・・
そろそろ、収穫期を過ぎて野菜類は手に入るようになり始めたとはいえ、絶対量が足りない。
そして、南部の復興の遅れからも、道路・橋の破壊がひどく物資が届きにくいことからも、イラク南部は、取り残された形になっています。
日本人は、援助というと、何かニュースが流れた時は、可哀想と言っては物を送ったり、お金を送ったりとするのですが、すべて一過性の援助で、次々あちこちでニュースが流れる度、今度はこっち、今度はあっちと一貫してその国の経緯を眺めることが少なく、本当の意味での援助を放棄している節が見受けられます。
どんな些細なことでも、ずっと、長く続けていける、そんな大局的なものの見方のできる国民に変わっていけたら、日本の持つ巨大な経済力、これももっと生かされましょうし、これが、世界の流れを作っていける程の大きさを持つものであることをもう少し自覚して、一人一人がお金を生かしていって下さったならと感じてやみません。
情報が氾濫する昨今、余程気を付けていないと、その情報に振り回されてしまいます。
情報は今や武器の一つです。
一人一人が現場に行って確認するのは無理でしょうが、片方の話だけを鵜呑みにしてしまうことをやめ、少しずつ、正しい情報はどれなのかを考える習慣を身につけ、自分自身の目で見たものを信じる、そして、そこからプラスしてほかの情報を取り込んでいくという形で動いて行かないと、また、これからも同じような過ちを犯し、とんでもないことに日本の経済力だけを無駄に吸い取られ、悪事に加担しかねない所まで、日本は繁栄していることを一人ひとり自覚をもって生きていただけたらと感じています。




