骨は語る
うだるような熱い真夜中の事だった。
中級妃が下級妃の首に布を巻き付け、掌が真っ赤に充血するほどはちきれんばかりに引っ張り締め殺そうとしている。
彼女の呼吸は浅く、か細くなっていき下級妃は次第に痙攣する。そして、彼女の命の灯は消える。
「はあ、はあ」
中級妃は倒れて動かない下級妃を見下ろす。手は冷たく、足は震える。
「わ、私は悪くない………悪くない」
心臓はドクン、ドクンと元のリズムを取り戻していく。
「隠さないと………」
彼女は遺体を持って宮の近くの池に引っ張って行く。決して誰にも見つからないようにと。そして、下級妃をゆっくりと池に沈める。
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その日もうだるように暑かった。陽は皮膚をじりじりと焼き付け、微かな痛みを感じる。あまりの眩しさに目は半開きだ。そんな後宮内の干からびた池の前を役人が通る。
そんな池の底で、何かが陽に照らされていた。それに気づき役人は目を凝らす。
それは陽の光に照らされ白く反射する。
「だ、誰か!?」
役人は慌てて走り出して人を呼ぶ。
____光に照らされていたのは人の骨だった。
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(綺麗な骨だ…)
白い骨の前に一人の少女、蓮華が手を口元にもっていき考えこんでいる。彼女は黒い髪を結い、短く整えている。
彼女は骨を指で触り、状態を確認する。綺麗でかけている部分が少ない。それは冷たいはずなのに、熱を持っている気がした。
――何かを訴えているように。
(首に圧迫痕がある………首だな……)
「これは他殺だ……」
一人静かに呟く。
「どういうことだ?」
気づくと背後に男が立っていて私の呟きを聞かれていた。
「説明しろ」
いかにも武人然とした男だな。
しかし、不思議と骨が太い印象はなく、この人からは知性と気品が感じられる。
「言った通りですよ。彼女は首を誰かに絞められて死んだということです」
「骨だけで分かったのか?」
「仮定です。彼女の首の骨に強い圧迫された跡があったからが一つ。そして他に目立った損傷がないからです」
抵抗の跡はない。
もしかすると信用していた相手なのかもしれない。
「苦しかったはずです」
骨をそっと撫でる。表面は滑らかで、折れた箇所も少ない。背骨もまっすぐだ。まるで、嘘をつけない人間だったみたいに。
「お前、名前をなんと言う」
「蓮華です」
「そうか…ならば蓮華」
男は早速私のことを呼び告げる。
「お前この事件を解いてみろ」
「……拒否権は?」
男はなにも言わない。ただ私を見つめるだけだ。
ないか……
一介の清掃員の私には逆らうことはできない……彼が何者かはわからないが、彼の言葉を無視すれば私の首は簡単に飛ぶかもしれないしな……。
目に留まったのは骨。私もこうなるかもしれない。そう考えると私の出せる答えは一つ。
「………かしこまりました」
頭を深く下げ答える。
(ああ……私もあんな綺麗な骨になりたい……)
あの骨には程遠いな……
なにせ、返事をしながらその時の私はそんなことを考えていたのだから。
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