71.ルメルの攻略法を探る(1)
セリスさんとシグナさんには、はっきりとした攻略法があった。そのおかげでパラメーターは爆発的に上昇し、距離も一気に縮んだ気がする。
コツコツ積み上げていくのも嫌いじゃない。けれど、一度あの爆上がりの快感を知ってしまうと、どうしても物足りなさを覚えてしまう。こうなったら、狙ってピンポイントに爆上がりを目指すべきだろう。
そうと決まれば、次の標的はルメルだ。ルメルにもきっと、関係性が大きく動くきっかけがあるはず。それを見つけられれば、もっと距離を縮められる。
ルメルといえば、真っ先に思い浮かぶのは料理。料理に関する話題や行動には、人一倍反応がいい。もう一つは、他人との仲の良さ。誰かと打ち解けるだけで、私のパラメーターが上がるということは、そこにも鍵があるはずだ。
料理か、人間関係か。このどちらか、あるいは両方から攻めていけば、ルメルの攻略法はきっと見えてくる。
今日は学校の日。戦略を練ってから、ルメルにアタックしよう。
◇
「おはよー!」
教室に入ると、いつも通りにクラス中に挨拶をする。すると、クラス中から挨拶が返ってきた。それに対応しながら、ちらりと自分の席を見る。そこではルメルが他の子と楽しくお話をしている最中だった。
だけど、こちらの存在には気づいている。だったら、すぐに行動するべきだ。第一の作戦、他の友人との交友を深める、だ。
私は教室を見渡し、まずは一番近くにいたクラスメイトに声をかけた。
「ねえ。今日の髪型、いつもよりきれいにまとまってるよね。朝、ちゃんと手入れしたでしょ?」
「えっ!? な、なんで急に……?」
クラスメイトは目を瞬かせ、明らかに戸惑った様子を見せる。周囲の子たちも、「どうしたの?」といった視線を向けてきた。
「だって、前から思ってたんだよ。身だしなみがちゃんとしてるし、細かいところまで気が付くよね」
「……そ、そんなこと……」
照れたように視線を逸らしながらも、口元は緩んでいる。やっぱり、褒められて嫌な気持ちになる人はいない。
次は、隣の席の子に向き直る。
「それに、君さ。誰とでも自然に話せるの、すごいと思う。クラスの空気が明るくなるし」
「ちょ、ちょっと待って。今日どうしたの? 急に優しすぎない?」
「裏があるんじゃない?」
くすくすと笑い声が広がる。疑われてはいるけれど、クラスメイトも頬を染めて、どこか嬉しそうだ。
「じゃあ、今度は私の番ね。さぁ、思う存分に褒めたたえよ!」
「もう! リオの事だから、何かあると思ったらそういうこと?」
「全く、リオったら」
ふんぞり返って本心をいうと、近くにいたクラスメイトたちが笑った。だけど、嫌な感じはしない。
「リオの良いところかー。毎朝ちゃんと挨拶してくれるところ?」
「困ってると、さりげなく手を貸してくれるよね」
「なんだかんだで、クラスの中心だと思う」
よしよし、良い流れが出来ている。それに、褒められるのって気持ちいい。沢山の通知音を聞きながら、私は再度口を開く
「じゃあ、今度はー」
「はいはい、また褒め返そうとしてる!」
「それじゃ終わらないじゃん!」
次の誉め言葉を探そうとしていると、教室中から一斉に突っ込みが入り、笑い声が弾けた。
「それが目的だからね!」
「やっぱり何かあると思ったよ」
「でも、まあ……悪くないね、こういうの」
そう言って、誰かが肩をすくめる。気が付けば、教室の空気はすっかり和らぎ、朝のざわめきもどこか柔らかいものに変わっていた。
いい感じだ。私は、そんな空気の中で、ふとルメルの方を盗み見る。すると、ルメルが友達とこちらを見ながら笑っているのが見えた。
よし、掴みはオッケー。じゃあ、後は――。
私はルメル達に近づいていく。
「やぁやぁ。おはよー」
「おはよ、リオ」
「おはよー」
「二人とも、今日も良い声しているね。今のですっごく癒されたよ。まじで神の声」
「ふふっ。私たちも褒められているの?」
「リオったら節操ないわね。でも、嬉しい。ありがと。リオの声も元気が貰えて好きだよ」
可笑しそうにルメルが笑うと、その友達は呆れながらも嬉しそうにしてくれた。そして、通知音が鳴ってウィンドウが開く。
一つは友達。そして、もう一つは――
『ルメル・エリアミル 好感度1アップ』
ふむ、ダメか。まぁ、これじゃああまりにもいつも通りだから、効果がなかったのだろう。
その友達が離れると、私は席に付いた。
「さっきは面白いことをしてたね。ずっと褒めたり、褒められたりして」
「だって、そうしたほうがどっちも嬉しくてハッピーじゃん。永久機関の完成だね」
「確かに。ずっと続けていられるね」
……あっ、このままだと普通の雑談に入ってしまう。そしたら、いつも通りに終わってしまう。どうにか、軌道修正をしないと。
「じゃ、じゃあ! ルメルもみんなと一緒にやろうよ!」
「えっ? でも、さっきやらなかった?」
「今のは人数少なかったでしょ? 大勢でやるともっと楽しいよ!」
私はルメルの手を引っ張って、席を立った。そして、暇そうなクラスメイトに声をかけて輪になった。そのクラスメイトたちは私がやっていたことを見ていたのか、もうやることは知っているようだ。
「もう、リオったらまだ褒められ足りないのー?」
「そうじゃないって。みんなでやると楽しいからだよ」
「まぁ、さっきのは楽しそうだったねー」
「でしょ、でしょ? みんなでやろうよ!」
そう言って、私は先導役になってみんなを褒めまくった。騒がしく鳴る通知音と出現するウィンドウをさばきながら、ルメルを合わせたクラスメイトたちで褒め合戦をした。
褒められると嬉しくなって、褒めても嬉しくなる。嬉しいの永久機関が出来たみたいで、みんな楽しそうに言葉をかわしていた。
うんうん、これは良い関係が築けているんじゃないか? みんなと楽しい時間を過ごす、これだったらルメルのパラメーターに変化が出てくると思う。
「はいー。みんな、席についてー」
その時、先生が教室に入ってきた。私たちは自分たちの席に戻る。すると、隣に座ったルメルがこっそりと話しかけてきた。
「さっきは楽しかったよ。ありがとね、リオ」
そう言って、満面の笑みを浮かべ、通知音が鳴った。
『ルメル・エリアミル 好感度1アップ、愛情度3アップ』
あっ、良い反応が返ってきた! このやり方は合っていたんだ!




