8−8 視察 (2)
1日かけて馬車は王都からフォークストーンに着いた。近くのサンドゲート海岸にも一応寄ったが、レジーナの目撃が早朝だった事から海獣の上陸時間が未明から早朝である可能性があり、翌朝に出向く事になった。
フォークストーンでは村長の家に王子と護衛が、二番目に裕福な村民の家にクライブ達が、三番目に裕福な家に魔女達が泊まった。夕食は村長の家で皆で食べた。その後に王子から村長へ確認の為に質問がなされた。
「それで、その後に海獣の目撃証言はあったのか?」
「へぇ、二日に一回くらいにサンドゲートの海岸で見る様になりました」
「毎日監視には行っているんだな?」
「へぇ、交代で見に行っております」
「漁獲はその後どうなった?」
「少ないままでさぁ。このまま春まで少ないまんまだと困った事になりまさぁ」
「とりあえずサンドゲートを見させてもらう。その観察結果とそなた達の証言を纏めて王都の方で対策を検討するから、少し待ってくれ」
「分かりました」
そうして夜は学院生達は相部屋で眠る事になったが、ジャッキーはこの機会に確かめたい事があった。
「ねぇクリスティン、あなたは卒業後はクロちゃんの事、どうするつもり?こう言っては何だけど、父親代わりのアッシュに代わる心の支え、と思っているのよね?」
クリスティンは少し寂し気に微笑んだ。
「出来れば、何らかの形で付き合っていきたいと思うのだけど、あの子の気持ちも都合もあるし、養家がどう思うかもあるのでね」
あの子という呼称が、クリスティンから見たクロちゃんの存在感を示した。頼りになる男性とは思っていないんだ。ジャッキーはクロちゃんが俯く姿を思い浮かべた。キュイ~ン…
「養家の方で婚約の話等は出ていないのね?」
「どちらかと言えば魔法研究所の方にでも就職してその研究成果が領地に反映出来れば、と言う感じかと思ってる」
「まあ、そうでしょうね」
「そういう訳で、初級者に対する呪文指導などは考えておこうと思っている」
「それでデボラの世話とかも見ている?」
「まあ、あの娘は上を見る時と下を見る時の差が激しいから、上を見る時にもうちょっと元気に応対出来ると良いんじゃないかな、と思ってる」
「そうだね~。先輩のレジーナ以外の魔女相手だと縮こまってるからね」
「もうちょっと伸び伸びと過ごしたいだろうなと思って、少しだけでも能力ギャップを小さくしてあげたいのね」
「あいつに伸び伸びさせるとそれはそれで問題じゃない?」
「…それもそうだけど」
ジャッキーとしてもデボラより問題のある人物が散見されるので、そちらに話題を振る事にした。
「暗黒の魔女は王立魔法研究所に務めているらしいけど、闇魔法師をそんなところに行かせて大丈夫なのかね?」
「魔法工程の行使時間があまり速くないから、そこまで心配していないんだけどね」
「それは魔法の行使速度も行使力も桁が違うクリスティンから見ればそうだろうけどね」
「速度は意識して鍛えてるから多少は胸を張れるけど、行使力自体はそれほどでもないよ」
「メテオはどうなのよ」
「所詮は宇宙空間に遠心力と引力でバランスしているものだから、バランスを崩せば落ちてくるので、大した魔力は必要ないの」
「いや、普通は月まで届かないって!」
「光が届くんだから頑張れば届くって」
「頑張るのスケールが違うの!」
「大げさだわ」
「まあ、それは置いとくとして。炎熱の魔女については兄さんがジェシカに聞き取ろうとしたんだけど、感情的になって上手く聞き取れないみたい」
「彼氏にまでカミナリを落とすのは勘弁してあげて欲しいわね」
「まあ実際のカミナリは出してないみたいだけど」
「当たり前でしょう。キレる前にクライブお兄さんなら何とかするでしょうし」
「惚れた弱みよね~」
「さて、そうなると比較的に良心派のアイスちゃんの先輩さん以外は一般人にとっては危険人物である可能性は否定出来ない訳ね」
「まあ最初に何か炎上するのは魔法研究所だから、こちらに来る前に鎮火してもらえれば大した問題じゃないよね」
「鎮火出来ればね。ただもう要注意人物扱いだから、充分な警戒はしてると思うんだけど」
「兄さんがジェシカからちゃんと聞き取ってくれると良いんだけどね~」
「仕方がないでしょう。カミナリさんが感情的になり易いのは劣等感が原因の様だから、その原因である里の人間については冷静に話せないでしょうよ。幼少時の事が消化しきれていないとなると、トラウマ化していると言えるしね」
「可哀相と言えば可哀相だけど、そこは恋人が包んで癒してあげるところよね」
「クライブお兄さんの腕の見せ所なのね」
「そこまで経験が無いから、テクニックも無いけどね」
「こういう事はテクニックじゃなくてスピリッツだから良いのよ」
「スピリッツも怪しいけどね。所詮見た目に惹かれているんだから」
「見た目から入っても、日々の思い出が積み重なって互いを思う心になるから、きっと大丈夫よ」
「ふふん、クロちゃんとの思い出の積み重ねが思う心になっているのね?」
「もうちょっと散歩とかに連れて行ってあげたいんだけどね」
「…犬じゃないんだから、散歩に連れて行くって言い方は止めた方が良いと思うよ」
「ふふふ、犬じゃない姿も可愛く見えてきているから、大丈夫よ」
「可愛いも止めてあげて」
「だって、あんなに可愛いんだから、口から出ちゃうわ」
「俯いちゃうって、クロちゃん」
「俯く姿も増々可愛く見えるじゃない」
「追撃は止めてあげて」
「ふふふ」
水曜分も何とか書いたので、次回水曜更新はする予定です。キアラが進まなかったので木曜あたりがピンチ。




