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7−7 サバトを始めよう (2)

 東公園を出て東に進んだ氷結の魔女デボラは、貴族街から外れる前に人影を見つけた。

(不意打ちを食らわなくて良かった…)

そう思ったデボラはやはり怯え気味だった。

「何だ、あたしの相手はチビだと思ったら、デボラかよ」

「レ、レジーナ…」

レジーナは3才上の魔女だった。同い年や一つ上の魔女達をむしろ仲裁してくれた人だった。

「あんたは王家に付いたのかい?なら相手してやるよ」

自分に対して余裕を見せる先輩に、デボラは呑まれていた。

「あの、あの、王家に刃向かうと不味いんじゃない?」

「負けなきゃだれと対決しても問題ないだろ?」

「でも、でも…」

「とりあえずあんたがあたしを抑えられないと他のお味方が危ないだろ?じゃあ、ちょっと相手をしてくれよ」

「えぇぇえ~!」

デボラは仕方なく迎撃の為にウツボ魔法棒を構えた。レジーナはデボラが変な魔法棒を構えたのを見て、相変わらず子供だねぇ、と思ってしまった。里の後輩に毒気を抜かれてしまったんだ。

「ほら、ちゃんと抑えな」

無詠唱でアイスランスを打ち出すレジーナに、無理!と思ったデボラはいきなり逃げ出してしまった。レジーナとしては相変わらずのデボラの役立たずぶりに益々やる気が減退していたが、仕事は仕事だ。割り切って追撃をする事にした。

「ほら、逃げんなよ」

レジーナはデボラの走る方向にアイスボールを連発した。しかし最近は逃げ癖に磨きがかかっているデボラは、ひょいと方向転換してアイスボールを避けてしまった。

「以外とやるじゃん」

今度は進行方向にウォーターウォールを展開したが、デボラはジャッキー仕込みのウォーターボールのシールド化でウォーターウォールを撥ね退けて逃げ続けた。

「妙な芸を!」

レジーナは今度はウォーターボールを連打した。彼女は里でも手数の多さで有名だった。デボラは必死になってウツボ魔法棒をかざして三つのウォーターボールで迎撃して逃げ道を開けた。

(あれ、何か魔法の出が早い)

デボラはそう思った。そう、クリスティンはデボラの魔法波を水魔法の発動制御に素早く変換出来る様に魔法棒を調整していた。ちなみに、魔法棒に付ける宝石にラピスラズリを使ったのは石言葉に『幸運』が含まれているからである。クリスティンとしては、デボラの実力に賭けるより幸運に頼った方がまだマシと思っていたんだ。


 レジーナもあれ、と思うほど上手に水の弾幕に穴を開けられた。

「ちっ、ならこれでどうだい!?」

レジーナはウォーターフォールを放った。高さ15ft、幅20ftの滝が出現した。

「このっ」

デボラはまたジャッキー仕込みのウォーターシールドで滝を弾き飛ばして通り過ぎた。ずぶぬれにはなったけれど。

「力技かよっ!?」

自分の出したウォーターフォールを避けながら、レジーナはデボラにウォーターランスを連発して追撃した。

「えいっ」

デボラは振り返って一つのウォーターランスを凍らせて阻止した。それで精一杯だった。

「ひいいっ」

デボラは貴族街を外れて商店街に入った。

「待てっ!」

レジーナも商店街に入ったが、そろそろ日が暮れて薄暗くなった街でデボラを見失った。動いていれば気配で分かるが、その気配が無いのでどこかに隠れていると思われた。


 何かの食材店の横に桶が重ねてあり、その陰に水気を感じたレジーナは、ウォーターランスで桶を弾き飛ばした。が、その陰にあったのは人が屈んでいるくらいのサイズの氷だった。そう気付いた瞬間、向かいの家の間からアイスランスが二発飛んできた。

「ちいっ、味な真似をっ!」

レジーナもアイスランスを連発してデボラの魔法を迎撃したが、続いて山なりにアイスランスが二発飛んできた。

レジーナはアイスウォールでアイスランスを阻止したが、更に山なりのアイスランスが二発飛んできた。

「くそっ」

ここで迎撃だけするのも魔女として沽券にかかわる。レジーナはアイスウォールを迂回して向かいの家の間に向かおうとした。そして、足元が凍っていたため滑って転んだ。


 さすがにデボラに嵌められてプライドが傷つけられたレジーナは、ウォーターランスを連発して向かいの家の間に叩き込んだ。悲鳴も反発音も無かったから、全部空振りだと分かって、家の間に走りこんだ。すると上からアイスランスが降ってきた。

「上かっ」

見上げてウォーターランスを連発したレジーナは家の軒下につららが並んでいるのに気付いた。

「不味いっ!」

つららの雨に急いで通りに戻ったが、また凍った地面に滑って転んだ。

「この野郎っ!」

通りを見まわしたが、デボラの影は無かった。


(不味い、冷静に考えないと)

レジーナは相手がデボラだと言う事で舐めていたのが間違いであった事に気付いた。今やデボラは上、下、横と攻撃方向を散らしながら相手を翻弄出来る程には上達している。とはいえ、魔法の規模は大きくなっていない。それほど上達している訳ではないのだ。

(攻撃元を特定して適切に反撃する、それでケリは付く筈だ)

レジーナは冷静に次の攻撃を待った。そして、格上の相手に隠れ切る程の忍耐力はデボラには無かった。


 家の上からレジーナ目掛けて大きなアイスボールが転がり落ちて来た。

「上かっ!」

その家の屋根の上にレジーナはウォーターフォールを放った。

「ぎゃーっ!」

屋根から流され落ちてきたデボラをレジーナが受け止めた。レジーナはデボラを睨みつけた。

「どうしてくれようか?」

「いやーっ!ごめんなさーいっ!」

デボラは魔法棒を持ったままの右手と左手を顔に付けて泣き出した。

(こいつ、全然成長してねぇ…)

相変わらず子供なデボラにレジーナは何も出来なくなってしまった。

 レジーナは明らかにデボラより格上ですが、魔法干渉力、つまり遠距離では魔法による干渉力が減衰する関係で、レジーナが自分から遠くに作ったウォーターウォールと、デボラが自分の直近に作ったウォーターボール(ウォーターシールド)がぶつかった場合にデボラ側の魔法が勝っています。


 そんな真面目な回でもないですけれど。


 次回は日曜に更新予定です。


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