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6−3 恋愛相談

 冬休み中でも学院の応接室は借りられる。だからクライブは冬休み中にも何日か皆を呼び出して世間話を聞く事にしている。やんごとなき人に個別に迷惑をかけられているなら相談に乗る、そういう姿勢である。

「そういう訳で恋愛相談以外には乗るから、何かあるなら教えて欲しい」

「兄さん、むしろ恋愛相談に乗って欲しい方よね?」

「恋愛なのかどうかすら分からないんだよ…」

クライブとしては、デートという事で進展があったかと思ったら、クリスティンと鍔迫り合いの上、ぷいっと帰ってしまったジェシカの扱いにはほとほと困っていた。クリスティンとクライブの関係は誤解しようが無い。ちょっと見ていればクリスティンはクロちゃん以外に興味が無いのは明らかだ。


「そういう事なら同級生として相談に乗るわ、言ってごらん?」

よりにもよって風塵の魔女カーラが相談に乗ると言い出した。この人の場合は人の話を聞く、というのはそれに続く突っ込みというより叩くネタを仕込むだけである。それでも溺れるクライブは藁どころか貧乏くじを引いてしまった。

「ああ…私とジェシカ・フィールディングは顔を合わせれば挨拶以上の会話をする様な仲なんだが、どうも最後は彼女の機嫌が悪くなって会話が終わる事が多いんだ。私には何か先天的に他人の機嫌を悪くする様な人格的な欠点があるのではないかと心配になってきているんだ」

風塵の魔女カーラは物知り顔で言った。

「まあ、人間なんて知らず知らずに他人に毒を吐いてしまうものだから、一々気にしていたら声を出せなくなるから合わないと思う人には存分に毒を吐くと良いと思うわ」

いや、一々気にして、毒はなるべく吐かない様に気を付けて欲しいとその場にいる全員が思ったが、くどくど反論される事が分かっていたから誰も何も言わなかった。

「すると私は、気付かずに他人を傷つける様な言葉が出てしまっているんだろうか…」

「そうね、人が気付かずに他人を傷つけるのは、まず自慢話をして他人が出来ないのを馬鹿にする場合ね」

「自慢はしていないつもりなんだけどなぁ…」

「それなら、他人の気に食わないところを一から十まで理由を付けて否定してしまうとか、よくあることよね」

いや、いくら気に食わない奴でも一から十まで理由を付けて貶さないよ!それあんたのいつもやってる事だろう!?と皆思ったが、指摘すると煩いから黙っていた。

「いや、さすがに女性相手に全否定はしていない筈だと思うんだ…」

「直接否定をしないなら、思わずあてこすってしまうとか、以外と嫌われる理由と思うわ」

普通は意図せずあてこすったりしないよ!と皆思ったが、風塵の魔女の里ではそれが普通なのかもしれない。何せ気の荒い連中揃いと噂される魔境だ。

「いや、考えずにあてこすれる話術は私にはないよ…」

「そのくらい普段から訓練しておかないと。貴族社会で生きていけないわ」

そんな訓練やめてくれと皆思ったが、以下略である。

「あとは、相手の気に食わないところを思わず見つめてしまうとか、それも立派な嫌がらせよね」

今、嫌がらせの話してないよ!と皆思ったが、男性が嫌われる、思わずそこを見てしまうという事はこの年齢ではよくある事だと思い至った。


「に、兄さん…まさか、相手の胸ばかり見ているんじゃないでしょうね!?」

思わずジャッキーが気になる事を口にしてしまった。

「最低だな」

「最低だね~」

魔女二入に否定されて思わずクライブが悲鳴を上げた。

「違う!そんな場所はめったに見ていない」

「…たまに見ているんだ?」

「最低だな」

「最低だね~」

「ち、違う…」

ここでクリスティンが気になる事を口にした。

「お兄さん、時々女性の足首ばかり見ている人がいるけど、そういう事はしていないのでしょうね?」

「あしくびっ!マニアだ!」

「…それは立派な変態では?」

「兄さん、そんな趣味が…」

「無いよ!誤解だったら!」


 とりあえず風塵の魔女カーラの恋愛相談はとてもじゃないが参考にならない事だけは皆理解した。仕方がないのでクリスティンが相談に乗る事にした。

「ではまず、ジェシカの気に入っているところを三つ上げて下さい」

「まず瞳が綺麗なんだ。真面目に魔法の練習をしている時の横顔が綺麗なんだ。魔法を行使する時のぴんと伸びた指先が綺麗なんだ」

全員がこの段階でごちそう様と口から砂糖を吐いた。心の中で。

「では、彼女の話した言葉で気に入っているものを三つ上げて下さい」

「五月の透き通る青空が好きと言っていたんだ。とても綺麗な顔で。小川のせせらぎが好きだと言ったんだ。故郷を思い出したのか、綺麗な微笑みを浮かべて。

小鳥の鳴き声が好きだと言ったんだ。とても綺麗な唇で」

べたぼれじゃん、と全員が思った。心の中で皆砂糖漬けだった。

「では、彼女に話した言葉で、これはまずかったかな、と思ったことを三つ上げて下さい」

「…分からない。会話の最後は何となく彼女が膨れているんだ…」

「ジャッキー、お兄さんの気になる口癖とかある?」

「…うーん、問題を先送りにする様な発言が気になる事はあるかな」

「お兄さん的にはそれはどういう気持ちで口にしていますか?」

「そうだね…一先ず雰囲気が悪い場合に閑話休題、みたいな言葉を言うことはあるかな」

「そこに気を悪くする要素があるかもしれませんね」

「そうだねぇ、真面目に話を聞いて欲しい時にそれはないかもしれないね」

ジャッキーは以外と真面目なところがある様だ。


 ここでカーラの指摘が入った。

「つまり、真面目に話を聞いて欲しい時に流された場合だな。これは女は気分を害するな」

「そんなつもりはないんだが…」

「彼女は少しデリケートな面がある様だから、真面目に話を聞いてあげた方が良いとは思いますね」

クリスティンが締めた。

「うん、そうかもしれない。今後は気を付けるよ」

とは言え、クリスティンからすればジェシカの方の問題もあるから、そうそう上手くはいかないだろうな、とは思っていた。

 学園モノは呑気でいいなぁ〜。蝙蝠も一応学園モノだった筈ですが。明日は蝙蝠の更新です。


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