5−7 ダンスパーティ(1)
終業式に成績表が配られる。貴族家の場合は別途成績表が送られていくが。今日、手渡しされる成績表は親に見せて、確認のサインを入れて貰ってから新学期に学校に返す物だ。平民が地方から来て寮に入っている場合は、領主のタウンハウスでサインをしてもらう事になっている。
クリスティンも水籠りの魔女、というか氷結が趣味の魔女デボラも、風塵の魔女カーラも皆寮生だが、この日は養家のタウンハウスに向かう。翌日のダンスパーティはドレスを着る為、侍女とメイドの世話が必要な点もある。ダンスパーティで実際踊るかどうかはともかくとして、養女をダンスパーティに出席させない等と言う評判が立ったら貴族家の沽券にかかわる為、実子がどう思おうと養家はしっかり着飾らせて送り出す。
「うん、魔法の評価はさすがだね」
「恐縮です」
クリスティンの養父、カスバート・クロフォードはクリスティンの成績表を見て、最高評価の魔法を褒めた。
「ノーマンが惨憺たる結果だったのでね、二人にならない様に気を付けてくれ」
「心得ております」
「明日のダンスパーティでは近づかない様に釘を刺してあるから、もし近づいても相手をしないで良いから。あいつの方を叱るから安心してくれ」
「そういう事がありましたら穏便に対応します」
「まあなるべくそれでお願いしたいね」
「はい、分かりました」
そうして翌日、昼食代わりに軽食を早めに食べた後、学院生達はおめかしして学院に向かった。長男ノーマンと養女クリスティンが一緒に馬車に乗ると問題が起きるので、カスバートがクリスティンを送って行った。
「とても綺麗だから心配だけど、まあ君なら問題ないと思っているよ」
「友人以外とは縁が薄いので、ご心配は無用です。楽しんできます」
「ああ、楽しんでおいで」
クライブがまた応接室を予約していたので、皆は応接室で集まってから会場に向かう事になっていた。
「ふふふ、クロちゃん、本当に素敵よ。あなたとドレスを着て踊るのを本当に楽しみにしていたの」
髪を上げて薄いメイクをして、ドレスを着たクリスティンは、大輪の薔薇ではないが可憐な花だった。
「ああ、クリスティンも眩しいくらい素敵だよ」
…クラスでしかめっ面をしているクロードを見ているクラスメイトが見たら、驚くほど素直にクロちゃんはクリスティンを褒めた。
「うん、クリスティン、やっぱり思った通り、食べちゃいたいくらい可愛いよ」
ジャッキーは女の筈だし、ドレスを着ているのだが多少男らしいセリフで褒めた。
「味付けはしてないから食べても美味しくないからね」
とクリスティンは押し倒されるのを拒否した。
デボラは所在無げに椅子に座っていたが、おめかしした彼女も充分可愛かった。だからクリスティンは褒めてあげたのだが。
「アイスちゃんもそうやっているとご令嬢らしくて可愛らしいわ。今日は一言少なめに喋ると良いと思うわ」
「地味子の可愛いほど信用出来ないものは無いよ」
「とりあえずエグバードと気兼ねなく踊ってね」
そう、デボラは結局ファーストダンスはエグバートと踊る事になっていた。
「結局、最後まで合わなかったよ…」
二人共にダンスが上手とは言えなかったので、二人の歯車は最後まで合わなかった。
「エグバード…ちゃんと避けてあげなさいよ」
ジャッキーのエグバードへのアドバイスは『とりあえずぶつかるな』だった。
「頑張るよ…」
カーラの方は色々問題があるので、養家の方でダンスパートナーを用意していた。その男のエスコートで会場に入る為、ここにはカーラは来なかった。クライブもファーストダンスのパートナーのジェシカ・フィールディングのエスコートの為、やはりここには居なかった。
そうしてファーストダンスとなった。クリスティンはクロちゃんの体面を考えてよそ行きの表情と話し方に変えた。
「クロードくんに迷惑をかけたくないから、他人行儀で申し訳ないけど、しばらくクラスメイトみたいな話し方にしますね」
「…そんなクリスティンも素敵だよ」
クロちゃんがこんなではクリスティンの気遣いも無意味になりかねないが、おめかししたクリスティンを前に彼はノーブレーキだった。一応、表情だけは締めていたが。
力強くステップするクロちゃんと、滑らかにステップするクリスティン。二人のステップが共鳴するかの様に、二人の心は高揚した。それでもクロちゃんの為によそ行きの笑顔をするクリスティンと、一応締まった顔をするクロちゃん。幸せな内面を一応隠しながら楽しむ二人を見て、ジャッキーはまあ合格点を出した。
(まあ、二人が楽しむのが一番だからね)
ちなみにジャッキーはあぶれていた。クライブと三曲目に踊るまでは暇していた。
次回に続く!
すいません、時間切れ投稿なので変なところで切れてます。次回日曜の投稿はクライブとパートナーの微妙な関係が読める筈!
ちなみに木金土の蝙蝠はそろそろ厳しい展開になります。こっちと雰囲気が違い過ぎる…




