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4−4 不審者(2)

「何!?何やってんのあんたら!?」

デボラには何だか分からなかった様だ。だからクリスティンが説明した。

「前に見た侍従に似て見えたけど、あれは女よ」

「分かるかそんなの!!」

分かりにくいだろう。顔面に二重の空気の層を作って、光魔法の偽装に似た効果を作っていた。顔面がピンぼけに見えたんだ。多分、迎えに来る侍従を途中で襲って服を奪ったのだろうが、動作は性別で異なる骨格と筋肉の影響を受けていた。バレない様に偽装してはいたが。

「だけど、あれが不審者なら、何しに来たの!?」

ジャッキーがクリスティンを見て言った。

「何しに来たと思う?」

クリスティンはジャッキーの頭の回転の速さに脱帽した。もう結論に達しているのね。ハワード家の侍従はあの不審者の敵では無い。だからジャッキーが狙いなら侍従と二人になったところを狙う筈だ。そしてクロちゃんを襲うならそれこそ一人になった時を狙えば良い。消去法であいつの狙いはクリスティンと言う事になる。

「アイスちゃんが狙いでない事は確かよ」

「そりゃあ、私は恨まれる覚えがないからね」

全員が驚いた顔をした。これだけ憎まれ口を年中言っても恨まれないと思っているとは。

「何で皆でそんな顔するのよっ!」

「…ともかく、恨まれる覚えがなくても巻き添えで襲われる事があるから、人気のない場所を歩く時と他人と話す時は注意してね」

「何で他人と話す時に注意しないといけないんだよ!」

「口は災いの元だからよ。口から出す前に一度よく考えてから話しなさい」

「母親みたいな事言うなよ!」

言われてたんだ、母親に。言っても直さないこの娘を育てるのは大変だっただろう、と皆が彼女の母親に同情した。

「ともかく、ハワード家の侍従を探して皆で移動しましょう。一人になるのは危険だから」

皆異存は無かった。デボラだけはぶつぶつ言っていたが。


 校舎北の森どころか、校舎と馬車停車場の間で侍従は見つかった。

下着姿で猿轡をかまされ、縄でぐるぐる巻きになっていた。生まれた時からお上品に育てられた人間はここにはいなかったから、侍従の下着姿に恥ずかしがる者はいなかった。一応、ジャッキーは正真正銘の伯爵令嬢なのだが。侍従はいきなり後ろから襲われてなす術もなかったと口にした。


 ハワード家の馬車に侍従を連れて行き、再び校舎に戻り教師に不審者の犯行を報告した。

「不審者の噂はあったが、実害があったのは初めてだ。何か前兆はあったのか?」

「ハワード家としては現在大きなトラブルは抱えていません。侍従が生徒とトラブルを起こしたとも聞いていません」

「侍従とトラブルがあったなら、令嬢まで襲って問題を大きくしたがるとも思えないな。ジャッキー嬢に覚えはないか?」

「根に持たれる程のトラブルは無いと思いますよ」

「まあ君は引き際と落としどころは用意する人間だからな。深刻なトラブルにはならないか」

「マイナートラブルはあるみたいな言い方は止めて下さい。評判が落ちます」

「最初から評判は微妙だろう、君は。お兄さんもご両親も心配しているよ」

「本格的な問題は起こしていないつもりです!」

「結局マイナートラブルはあるんじゃないか…」

そうして、明日以降、生徒にも用心する様に展開すると教師は告げた。


 翌日、第三王子エドウィンが皆を呼び出した。

「三人とも良く気づいたね。何か特徴はあったのかな?」

「若い侍従の服が着れる女なので、スリムな筈ですが動作は速かったので、筋肉質だろうと思います」

ジャッキーの興味は筋肉だった。

「最初の一撃以外は避ける事に専念していた。三人の連続攻撃だから防戦一方だったのか、他の意図があるのかわからん」

クロちゃんは攻防の内容に興味を持った様だ。

「弱い風魔法を纏って顔を見づらくしていました。偽装が上手いと思われます」

クリスティンとしては残りの話題を話すしかなかった。

王子はだからクリスティンに質問した。

「手練れの魔法使いだと思うかい?偽装は魔法のみかそれ以外の物理的な物も上手いのかな?」

「顔面の偽装以外に魔法を使いませんでした。魔法使いとしての余裕なのか、傭兵などで変装が得意なのかは不明です。ただ、奪った侍従の服はきっちり着こなしていました」

「奥の手はあると考えるべきだろうね。わかった。クライブ、妹さん達の対策は必要だろう?」

「とりあえずエグバードを合流させてから集団で移動させる様にします」

「そんなところだろう。勉強会や魔法練習はともかく、森の巡回調査は中止してよい。気を付けてくれ」

「ありがとうございます」


 皆が去った後、王子は独り呟いた。

「目を付けてもらう分には良いが、少しタイミングが早いな。こちらから仕掛ける必要があるか…」

 そう言えば怪獣映画って見たことないな、と思って、今週の金曜の映画放送を録画する予定です。見ないで消す可能性もありますが。

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