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3−6 魔女の噂

 週末にクリスティンはまたカスバート・クロフォード男爵と会う約束をしていた。

「やあ、元気そうで何よりだ」

クリスティンがこちらに来た時の死んだ目を覚えているんだろう。今、クロちゃんのおかげで幸せな日々を過ごしているクリスティンは完全に別人だ。

「友人が増えましたので。賑やかに過ごしております」

「それは良い事だね」

食事の後のデザートとお茶の時間に情報交換をする。

「水籠りの魔女の方は、多分一段落したのかな?」

「高貴な方のお世話になる事が無い様にハワード家のご子息が保護しております」

「彼も苦労が絶えないね」

「魔女についてはどちらかと言えば妹さんの方が気にかけてくれています」

「その方が良いね。ところで、水籠りの里としてはその娘の事は教育的観点から里から出したらしい」

「持て余していたと?」

「ありていに言えば劣等生の様だね」

「こちらから見ても、精神的にも能力的にも問題児ですね」

「何とかなりそうなのかな?」

「何事につけ謙虚に足元を見て貰えれば良いんですが」

「まあ、そういう事が出来ない年頃だよ。うちの長男も難しい年ごろだ」

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「何、妹の方は問題ないのだから、個人的な問題さ。君のせいじゃない」

女は仮面を被れるものだから、表面上大丈夫でも腸がぐつぐつ煮立っていなければ良いが、とクリスティンは思った。

「君自身は学業的にも精神的にも問題はないかい?」

「コントロール出来る範囲です。ハワード家の妹さんは明るい方ですので助かっております」

「妹さんの方が頼りになると言う噂もあるぐらいだからね」

「見方によります」

「ところで、学院祭には何かやらないのかい?」

「クラスでは生徒が作った小物を売って、売上を孤児院に寄付する事になっております」

「何か作ったのかい?」

「巾着袋をいくつか」

「そういう場合、父兄は予約を出来る様になっていると思うけど、予約させて欲しいね」

「平民向けの小物ですが」

「まあ、お守り代わりに持たせてくれ。比較的大人しめのものを予約しておいて欲しい」

「分かりました」

「高貴な方から何か依頼は無かったのかい」

「ついこの間に何か展示を、という指示があり、あり合わせの物で纏めて展示する予定です」

「それは是非見に行かせてくれ。どういう名前で展示するんだい?」

「確か『第三王子特別調査隊』の展示となる筈です」

「…通称がもう付いているんだね…」

「彼の方のみの呼称ですが…」

二人揃って苦笑するしか無かった。クライブ・ハワードの事を笑えなくなったのだから。

「傷口が広がらない様に気を付けます」

「そこは考えなくて良いよ。多少の事は我が家でも対処出来るつもりだ」

「誠に申し訳ありません」

「まあ、本人が楽しければ良いんだが…」

「予想が出来ない怖さがあります」

「まあ、多少はフォローするよ。ところで、今回は何を展示するんだい?」

「王都北の森の狩猟情報と、初級魔法の文法的比較です」

「それは是非見せて貰わないとね」

「恐縮です」

ここで男爵は気になる事を口にした。

「ところで、あくまで噂話だが、どうやら他にも二人ぐらい魔女の里から来ている生徒がいるらしい」

クリスティンは義父と視線を合わせた。

「噂の内容はどの様な?」

「一人は風塵らしい。教育目的で来ているらしいが、問題は起こしていないと聞いている。暴れん坊ではなさそうだ」

「よりにもよって風塵ですか…本当に大丈夫なのですか?」

「まあ、だから突出した女生徒がいたら手を出すなという噂だよ。単なる脅しかもしれない」

「もう一人に手を出させない為のフェイントと?」

「そこはどうだか。もう一人はその風塵の噂のついでに話題に登る様だ。そちらはまともという噂だ」

「やはり風塵の魔女は問題児だという噂ですか?」

「まあ、過去に侯爵家をねじ伏せた風塵の魔女の里の出身だったら、やはり注意はするだろうね」

「その二人は1年生なのですか?」

「新入生ではないみたいだよ。去年くらいから流れている噂だから」

そんな噂なら第三王子も既に知っているだろう。今後喧嘩を売る真似をさせられない様に注意しないといけない、とクリスティンは思った。

 ちょっと短かったですね。キリがいいのでこうなりました。

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