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3−3 魔法練習(10/19完全書き換え)

 魔法実技の授業の無い日は魔法練習場が借りられる。貴族は家庭教師に習うから、練習場を使うのは主に寮生か平民だ。下位貴族でも裕福な家ならタウンハウスから通うから、寮に入る下位貴族はよほど貧乏なのか養子だ。デボラもクリスティンも下位貴族の養子だから寮生である。


「じゃあ、まずアイスちゃんなりのやり方でまずウォーターボールを撃ってみて」

「ウォーターボールなんて簡単じゃない」

ボーンと大き目のウォーターボールが飛んでいく」

「アイスちゃん…ウォーターボールの呪文でウォーターボールを撃ってみて」

「えーと、水集いて…出でよ、ウォーターボール」

今一つ丸くならないウォーターボールが放たれた。

「…アイスちゃん、水を発生させる工程、水を丸く形作る工程、打ち出す工程を意識してる?」

「そんなの区別してないよ。ウォーターボールなんてちゃっちゃと撃てばいいじゃない」

「それぞれの工程を把握出来る様にゆっくり呪文を唱えてみて。それを感じられる様になったら早口で詠唱して、短時間で各工程を終えるのを覚えて欲しいの。

その辺りをしっかり意識しないと、こう、だらしない魔法に見えるの」

「だらしない魔法ってどういう感じよ?よく分かんないよ」

「とりあえず、一単語ずつしっかり発音して呪文の練習をしてみて。各工程が行われているのを感じながら」

「まあ、地味子が感じる事が分かんないのも癪だからやってみるわ」

「…それでやる気が出るならそれで良いよ。やってみて」

「はいよ」


 今日はクロちゃんもジャッキーも一緒に練習する事にしていた。つまりデボラが興奮した際に抑えるのに人数がいた方が良いという判断だ。

「じゃあ、クロちゃんも呪文詠唱してみて」

「ああ、えーと水集いて…」

クロちゃんの前に伸ばした手の前に水気が漂うが、固まらずに霧散する。

「済まんな、この調子なんだ」

「4組の期末評価としては魔法実技は重視しないの?」

それにはジャッキーが応えた。

「強化魔法系の人は強化魔法の成果を見せればとりあえず進級は出来るみたいよ。でも、3年時には5組とか6組になるらしい」

「つまり、体面上は出来た方が良いんだね」

「そうなるね。私も強化系だけど一応初級魔法は出来る様になったよ」

「ん~、クロちゃん、悪いけどもう一回やってみて」

「ああ」

クロちゃんの伸ばした両手の前に魔法子が力の波紋を作るが、それは普通の魔法師より弱いものだった。口にして良いのだろうか…魔法の流れが体外に放出されず、体内に循環しているんだ。つまり、普通の魔法師より高効率で強化魔法が出来る様に流れている。確認の為に手に触れて魔法を発動してもらうか…

「クロちゃん、魔法の流れの確認の為に、手を触れているからそれで発動してみて」

クロちゃんは真っ赤になった。遂に、遂にこの日がやって来た!今朝日が登り、小鳥は歌い、花々が咲き誇る中、二人の手が初めて触れるのだ!

…クロちゃんは興奮して訳の分からない情景を心に浮かべたが、今は秋の午後である。日は陰りつつあり、花が咲くどころか葉が落ちる季節である。そして、触れようとしていたクリスティンの手の前で、ジャッキーがクロちゃんの手をはたき落とした。

「クリスティン!魔法発動中の手に触れるなんてあなたの体にどんな悪影響があるか分からないでしょ!危険な事は止めて!冷静なあなたらしくもない!」

あ、そりゃそうだ、とクリスティンも思い直した。

「ごめん、ジャッキー、目の前の真理に触れる為に警戒心がなくなっていた…」

「分かれば良いの」

そこでデボラが声をかけた。

「地味子、わんこなんて放っておいて私の方を見てよ!」

「はいはい…」

渋々クリスティンはデボラの指導に戻った。この危険人物を更生させるのが本来の仕事だ。


 取り残されたクロちゃんは跪いた。今日が、世界で一番大切な記念日になる筈の今日が消えてなくなってしまった…

「おい、クロちゃんや、クリスティンに危険が迫ったら体を張るのがあんたの仕事やろ?何欲望に負けてんねん」

「そうなんだが、そうなんだが…」

クロちゃんの瞳が涙で潤んでいた。しゃあないな、この駄犬、世話やけるわ。ジャッキーはクロちゃんの両手首を掴んで立たせた。勿論、ジャッキーの手が触れてもクロちゃんは何とも思わない。差別だ。

「私も強化系だから苦労したからな、私の教わったやり方を教えてやる。クリスティンにあんまり世話焼かすな」

ジャッキーが両手を伸ばして呪文を詠唱すると、手に触れながら水玉が生成され、その場に留まった。

「やってる事が分かるか?」

「全然分からん」

「あのな…そろそろ頭動かせ。強化系の奴は魔力放出が苦手だ。体内に魔力を巡らすのが得意な訳だからな。だから、手にぴったりくっつけて水を纏めるんだよ。そうして膨らました水も手に触れているから魔力を流しやすい。そして水玉を作る練習をして、後は少しずつ前に押し出せる様にするんだよ。いきなり打ち出せとか無理だから」

「あーなるほど」

「だから、良いから手に水をくっつける事をやってみな。水が多めに出る様になったら丸作れば良い」

そうして水玉をクロちゃんの手に押し付ける。

「あー、たぷんたぷん言ってる」

「とりあえず体に触ってれば何とか魔力が流せるだろ。そうやって段々魔力を体外に流すのに慣れるんだよ」

クリスティンが飛んできて頷く。

「そうだね。体に接するところから始めるのが良いね」

にこにこしながら呪文を唱えたクリスティンは、その水球をクロちゃんの手に押し付けてくる。

「こうして二人で水玉の押し合いとか出来たら楽しいよね。頑張ってね、クロちゃん」

今は自分では水玉は作れないが、こうしてにこにこしている彼女と水玉の押し合いなんて楽しそうだ。クロちゃんとクリスティンは水玉を何度か押し合った。クロちゃんとしては沈んだ太陽がまた登って来たくらい幸せだった。

「こらーっ!わんこと遊んでないでこっちの指導をしろ!」

クリスティンの頭に閃くものがあった。

デボラの前で水玉を作り、デボラに押し付けた。

「アイスちゃん、ほら、水玉を作ってみなさい。押し合って壊れた方が負けよ」

「魔女に勝てると思うなよ!」

デボラも水玉を作り、クリスティンの水玉と押し合ったが、3回やって3回ともデボラの水玉が壊れた。

「何でー!?」

「だからさ、これは水玉を形作る工程を保持している訳で、その工程のコントロールが下手な方が負けるの。あなたはそういう工程のコントロールが甘いから」

デボラは眩暈がした。実際よろめいた。

「そんなーっ…地味子に負けてるなんて」

そんなだからあなたは人を見る目がないと言うのよ。

クリスティンは思ったが口には出さなかった。

「暫くはこの水を纏める工程を練習した方が良いみたいね」

「くそーっ、すぐ上手になってやる」

「せいぜい時間をかける事ね」

 すいません。原稿書き用のPCが死んだみたいで、メーカーロゴすら出ない状態です。無理やり思い出して書きましたが、これが今日の限度です。土曜に再開しますが…レノボの耐衝撃性能が良いはずの格安モバイルPCが簡単に死んで大ショックです…→10/19 全面改定しました。

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